3.相風呂③




「んも…みっちゃんには、負けた…」


んん?負けた…ってどういう…

それはつまり、私渾身の甘え作戦は上手くいったってこと…よね?

私は嬉々として上がろうとした。

と、その時突然、無理やり身体を引き寄せられた。

そして、


「んんん……んんん…」


唇を突然奪われた。温かくうねった舌が唇をこじ開けて、歯と歯茎をなぞらえる。歯を開き侵入してきた舌が私の舌を捕らえて絡みつく。


「ん…ふぁ…はぁ…んん…はぁ……んん」


頭の中で自分の声が反響する。

何もできない…

されるがまま、ただ溶かされてくだけ…


唇がゆっくり離れると、脇を持ち上げられ、身体をくるっと反転させられる。そして、いきなり…


ずちゅん!!

湯面がだぶだぶと揺れ、身体の奥が突き上げられる。


「きゃあんっ!!」


あまりの衝撃で、冬馬の胸にもたれ掛かった。

冬馬の温かく湿った手が私の丸まった背中を支える。


私は今、自分の身に何が起きたのか、はっきりと理解した。


私は、涙目になって訴えようとした。しかし、衝撃で言葉が思うように出てこない。


「ん…!とう…ま…!!」


冬馬はいつになく必死な形相ぎょうそうだった。


「…みっちゃんが…いけないんだよ?せっかくずっと我慢してたのに…みっちゃんが煽っちゃうから……でもね大丈夫、今から僕が楽にしてあげる」


冬馬、急にどうしたの?

あと楽って…何よ…!


冬馬は私の腰を掴み、ゆるゆると腰を動かし始めた。


「あ…ん!ひゃん、あん…あっん!」


自分のものとは思えない甲高い喘ぎが浴室内に響く。全身が激しく揺らされながら、ゆっくりと快楽の波に引きずり込まれる。頭では分かっていても、これを止めるすべがない。


「みっちゃん、みっちゃん、みっちゃん!!」


ズコンズコンと膣内を蹂躙じゅうりんする。激しくひだが乱され、その整列はもはや無秩序と化している。

冬馬の動きに共振し、湯面が高潮のように波打つ。湯はビチャビチャと床面に打ち付けられる。


突然、冬馬の動きが止まる。

呑まれる前に言葉を発しようとしたら、こめかみを挟まれ、そのまま唇を塞がれた。


「ん~ん……はぁ…ん…ふぁ…ん」


息が荒くなる。


「…何も言わないで、みっちゃ………美琴。今夜は寝かせてあげられない」


急に声のトーンが低くなり、口調が変わる。

それはいつもの冬馬ではなかった。

不覚にもドキッとする。


「…とう…ま?」


「まずはさ、美琴の身体、俺に洗わせて?」


その目つきは、獲物を捕らえた獰猛な狼そのものだった。

捕らえた獲物は決して逃さない、といった……

何で、今こうなってるのかは分からない。

が、こうなるともう私に拒否権はない。

でも……

それが嬉しくて舞い上がる自分も確かにいる……


私は、か細い声で答えてしまった。


「…うん、お願い…」


冬馬の胸元に顔を擦り付けると、湯でぬくもった手が私の頭を撫でる。


「よしよし、みっちゃんはえらいねー。このまま一旦上がろうね!」


冬馬はいつもの明るい声色と口調に戻った。

それだけだが……

冬馬は繋がったまま軽々と私を持ち上げ、パッと立ち上がる。

すると、


「っあっっん!!!」


重力で身体が沈み、冬馬の先端がさらに奥を刺激する。思わず涙がこぼれた。冬馬はその雫を優しく拭う。


「みっちゃん、大丈夫大丈夫」


抱っこした小さな子どもをあやすように、風呂椅子に座る。そして、シャワーで私の髪を濡らした。


ポトンポトンポトンポトン

シャンプーを手に取ると、両掌で液を広げ、髪に馴染ませる。頭皮の組織がゆっくりとほぐされていく。

冬馬の洗い方は、気持ち良い。下半身の激痛も少しは和らぐ。


「んふふ、みっちゃん、気持ち良さそう~良かった~髪流すね~目ぇつむっててね~」


「うん~」


シャーーー

ワシャワシャワシャワシャ

シャワーの湯の打ちつける音、指腹で洗われる髪の摩擦音が心地良い。


泡を全て流し終えると、


「みっちゃん、次リンスね~」


リンスで髪を滑らかにされた。それから髪は絞られ、ヘアクリップで留められた。

また、向きが変わり、後ろ抱きにされる。その振動で、さっきまで意識が逸れていた腟内への刺激が再び私を襲う。


「っん……冬馬、もう…」


「次は身体ね!みっちゃん、楽にしてて」


私のことはお構いなしに鼻歌を歌いながら、私の身体の前で、ボディーソープを掌全体に広げる。そして、濡れた首筋から背中、背中から脇腹にかけて長い指一本一本がボディーソープを塗り込んでいく。

手が下腹へ伸びた。へそ下から上向きに塗り込む手が伸びていく。そして、それはやがて両胸を持ち上げ、膨らみやその頂きをボディーソープに埋もれさせていく。


「あん…はぁ…ん……あん……とう…ま……」


「みっちゃん、可愛い……僕の前だけだからね?こんなにとろけた姿は」


「…ん」


返事をするだけで精一杯だ。


冬馬は私の顔を覗きながら、私の胸をもてあそぶ。

首筋は何度も何度も噛まれた。

まるで、お前は俺の所有物だと言わんばかりに……

そして、すぐさま顔を横に向けられ、唇を強引に奪われる。口の中が蹂躙されてく……息遣いが荒くなる。それは一回では終わらず、何度も何度も角度を変えて…


「ん…ふぁ…んん…んん」


「…美琴、とっても綺麗だよ」


低音ボイスで囁かれ、私の子宮はキュンとする。

私には、もう抵抗する気力はない。必要がない。

今はただ冬馬に呑まれたい……


また、くるっと反転させられ、抱き締められるようにして背中を洗われる。


私はふと冬馬の背中に手を回した。

冬馬の匂いがする……冬馬の体温が伝わる……

冬馬が傍にいてくれるなら、もうどうなっても構わない……


冬馬は洗う手を止め、私の顔を覗き見る。


「…みっちゃん?どうしたの?」


「…とう…ま……好き……」


それは自然に口から出た言葉だった。

すると、ぎゅっと抱き締め返される。


「……俺も好きだよ……美琴……」


「…ん」


そして、唇を重ねる。

それは濃厚な蜂蜜の味がした…

ずっと、私を抱き締めて、冬馬……


泡だらけになった身体をシャワーで流された。そのまま冬馬に抱き抱えられ、浴室から上がる。簡単に髪と身体についた水分を拭き、バスタオルを掛けながら、冬馬はいつもの顔でニッコリ笑う。


「今夜は寝かさないからね?みっちゃん」


それは、命令だった。

だが、それは私も望んでいること……

私は冬馬の胸にキュッと縋りつく。


「…うん。抱いて……冬馬……」



それから寝室に連れて行かれた。

そのまま押し倒され、一晩中、薄明かりのベッドで激しく抱かれた。

最中に自分の顔が一瞬、暗がりの窓に映る。

それはもう、幸せに蕩け切った女の顔だった…


私の身も心も、きっとその奥までもが、とっくに冬馬に満たされている……

冬馬は媚薬……そんな気さえする。

こんなどろどろに溶かされる私……

冬馬の独占欲を喜ぶ私……

私は冬馬に溺れてる……



今日と明日は休み。

きっと一日中、冬馬に抱かれる。

そう思うと、また子宮がキュンとする。

さっきまでの獰猛さが消え、気持ち良さげに寝息を立てる冬馬は少年のようにあどけない。


この愛しい腕と胸板に抱かれながら、今日もまた、私は夜明けの眠りに就くのだった。



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