2.相風呂②




今日は、諦める。

とりあえず今は、お風呂に入りたい。

一瞬のすきをつき、すっと腕の拘束から抜けた。

そして、ちょっとうつむきながら冬馬と向き合う。


「んも…着替えてるところは…恥ずかしいから…後ろ向いてて」


「今から、二人ともすっぽんぽんになるのに??

でも、そんな恥ずかしがるみっちゃんも可愛いよ」


冬馬は私の頭を優しく撫でる。

が、すぐさま冬馬の手から逃れる。


「…うう、とっ、とにかく、後ろ向いててね!!」


すると、冬馬はちょっと不貞腐れ顔になった。


「はーぃ」


私は、冬馬が後ろを向いたのをしっかり確認すると、部屋着、キャミとブラ、ショーツを素早く脱いだ。そして、身体の前側をタオルで隠そうとしたら、後ろから抱き締められた。


「もう着替えたから、いいよね?あと、僕の前では隠さなくても良いのに…でもそんなみっちゃんも可愛い」


「は、後ろ向いててって言ったよね?!」


「向いてた向いてた。ちょっとだけ」


親指と人差し指でつまんでみせる。

もう、それは全然……って、はぁ……

ふと見ると、冬馬も引き締まった身体を外気にさらしていた。いつも見ている身体なのに明るい所で真正面で見るとやはり恥ずかしい……

私は冬馬の身体をあまり見ないようにした。

すると突然、


「そんなに恥ずかしいんなら、僕が隠してあげる」


「っきゃー!」


抱いていた掌を胸のてっぺんに下ろし、そのまま膨らみと一緒にぷにゅっと潰したのだ。


「僕の手でみっちゃんのおっぱい、すっぽり隠れたよ?これで誰にも見えないね、はぁ~みっちゃんのおっぱい、可愛い、柔らかい」


「んも!いきなり触らないで!」


「だって、みっちゃんは隠したいんでしょ?それに、さっき僕の身体見て顔赤くなってたよね?みっちゃんなら、いくらでも見ていいんだよ?」


隠したいのは、冬馬からってこと!

あと、何で冬馬を見ないようにしていたことが即バレてるのよ……


「んっもう入る!だから、胸から手をどけて腕ほどいて」


「もう、みっちゃんってば、釣れないんだから。そういうツンツンしたとこも可愛いんだけどね」


また手が緩んだ隙にタオルを持って、浴室へと駆ける。湯船は溜まったばかりで湯気が漂う。シャワーで身体を簡単に流すと、勢いよく湯船に浸かった。


ザブン!!


「はあ~~生き返る~」


湯船の中で伸びをしていると、後ろから身体を持ち上げられた。そして、またザッバーンと音を立てて、お湯が大量にこぼれる。


「んも~!みっちゃん、すぐ逃げる!」


「冬馬!!いきなり、入ってこないでよ」


「みっちゃんがあまりにも気持ち良さそうだから、驚かしたいな~って。ん~僕にすっぽり収まるみっちゃん、ちっちゃくて可愛い」


「気持ち良さそうなのを邪魔するバカがどこにいるのよ?!あと私、そんなに小柄じゃない!冬馬が高すぎるの」


「んふふ。みっちゃんに褒められた~!大好き、みっちゃん!」


私の言葉を、褒めた、と受け取る冬馬……

冬馬は顔をほころばせながら、抱き締めを強める。

ふと首筋に柔らかいものが当たった。いや、これは吸われてる!


「…ん…ん、みっちゃんのいい香り…」


「…ん、見える所に跡つけないで!…他の人に見られたらどうすんのよ…って聞いてる?!」


「ん~僕のみっちゃんだよ?僕は見せつけたいなな~みっちゃんは僕のものだよ~って。はぁ~みっちゃんの身体、はぁ柔らかい、お肌スッベスベだ~」


「…はぁ~」


不意にクロスしていた手が、湯に浸かっていた胸を持ち上げ、やわやわと揉む。


「きゃあっ!!いきなり触らないで!」


「びっくりするとこもネコちゃんみたいで可愛い!みっちゃんのおっぱい、いつ触っても気持ちいいね~~」


私はネコじゃない!!ムッとして冬馬の方を見ると冬馬はニッコリする。


「んふふ。でも、みっちゃんも気持ちいいでしょ?」


「…んん…」


頷くことしかできない……

ふとお尻の下部分に硬いものが当たる。

太ももの上の方に乗せられているため、余計にそのものを感じやすい。

なんか意識すると身体が熱くなってきた…しかもむず痒い感じがする……これはまずいな…


さっと湯船から上がろうとした。

が、


「あっ、みっちゃん、身体もう洗うの?いいよ~、僕が洗ったげるー」


冬馬に二の腕を掴まれ、腰を抱き込まれる。

そんなに力強くないはずなのに、上手く抜け出せない。これじゃ、立ち上がれない……

一応、遠慮してみる。


「…いいよ、いつも…冬馬には洗ってもらってるし…」


「いいっていいって!みっちゃん、仕事で疲れてるでしょ?それに僕はやりたくてやってるから、大丈夫!」


遠慮作戦は実にあっけなかった……

あと何が、大丈夫!なのよ…

洗ってもらうのは、確かに疲れた身体にはありがたいのだけど…

正直、毎日羞恥心で死にそうなのよ…!

それに冬馬のは、洗いたい、じゃなくて、

触りたい、でしょ?!


でも、今日こそはゆっくり寝るって決めたの。

だからね、もう少し粘るのよ、私!


冬馬の方に身体を向けた。首をコテッと傾げて、上目遣いしてみせた。そして一方の手を冬馬の肩に置き、もう一方は人差し指を下唇に当てながら、自分渾身の甘い声を出す。


「冬馬…君、今日は…美琴一人で…洗いたいな…?ダメ…っかな…?」


………


あれ、冬馬、固まっちゃってる…

この作戦はやっぱダメだったか……

めっちゃ頑張ったのに……残念……


固まってる冬馬を凝視すると、顔が赤い気がする。

もう湯疲れ、かな??早くない?

次は頭を抱えだした。

具合でも悪くなったのだろうか?

心配になって声掛けようとしたら、冬馬がボソッと口を開いた。


「んも…みっちゃんには、負けた…」



んん?…負けた…?



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