第101話 写真集発売と新曲発表

小金井綺羅のことはカオル先生が世話をすることになった。



「僕に任せて。キラ君は男性として女性への嫌悪感をもってしまったかもしれない。だけど、ずっと女性への不信感をもって育った子達に比べれば……彼の心が純粋が故に立ち直れると思うんだ」



カオル先生に生活の手助けを任せることにして、何かあればサポートできるようにバックアップは固めている。

男子応援団の時期エースとしてキラには立ち直ってもらいたい。




「【邪神様】……出番ですので、準備お願いします」



写真集発売をすることになって、意外にも世間が騒がしくなったので緊急会見をすることになった。

さすがにテレビや記者を集めてというのは緊張するので、ネット配信の公式ファン登録をしてくれている人に向けてライブ配信することが決まった。



「はい」



光りが多く発せられることもあり、身バレを防ぐ意味で仮面を付けることになった。

ネット上では身バレしたのでは?的なことがあったが、どこかの誰かが黙殺してくれたようだ。



出番と言っても、会場でカメラに向かって話をするのでそれほど緊張することもない。

ただ、ライブ配信時間は決めているので、その時間が迫っているのだ。



【邪神様】専用となりつつある椅子に座ってカメラの起動を待つ。



「本番3、2、」


1は言葉で言わずに指が立てられる。



俺は【邪神様】ポーズなる座り方でカメラが起動する瞬間に目を開く。



「親愛なる下僕共よ。待たせたな」



何故かファンサイトで、【邪神様】のファンのことは下僕と言うそうだ。



「此度は我の姿を皆に見せるため写真集を発売されることになった。

すでに手に取った者。まだ未入手の者。それぞれではあるだろうが、我を知ってもらうために下僕たちへの褒美である」



セリフはエミさんが考えてくれた物を読んでいるのだが、本当にこれでいいのか不安でしかない。



「さて、挨拶はこのぐらいにして、次は新曲の発表だ」



新曲のPVに切り替わる準備の音が聞こえてくる。



「今回の新曲は前回とは変わって、貴様らに我の美声をゆっくりと聞かせてやろうと思う。そのため曲を聞く際はイヤホンかヘッドフォンをつけて陶酔するが良い」



PVが流れる準備が出来た合図を待って話を切る。



「それでは存分に酔いしれるがいい。ササヤキ」



曲はだいたい5分ぐらいあるので、その間に化粧直しや水分補給をしておく。


曲が終わった後は10分ほど質問タイムを取って、画面に映し出されるコメントに応えていく。



「PV、終わります」



準備を終えて30秒前に開始のために顔を作る。



「よう。どうだ新曲は?」



俺が呼びかけるが、視聴者からの反応がない。



「うん?どうした下僕ども、俺の美声に聞きほれたか?」



出されるカンペに従って言葉を発するが、しばらく待っても返事がない。



「この後は質問タイムにしようと思っていたが、どうやら俺の美声でやられちまったみたいだな。今日はここまでだ」



カンペを読みながら終わってもいいのか不思議に思うが、どうやらいいそうだ。



「じゃあ、今からもう一度PVを流すからダウンロードしてくれよな」



俺は別れの言葉を言って映像をPVに切り替える。



「ふぅ~お疲れ様です」



カンペを出してくれていた監督のエミさんに声をかける。



「お疲れ様。いや~まさかの反響だったね」


「反響?」


無反応だったことしかわからない俺としてはむしろ、なんの反響も感じない。



「あ~まぁヨル君はいいかな。帰ってからSNSでも見てよ」


「そうします。今日はもういいんですよね?」


「ええ。しばらくは仕事もないと思うから、またヨウヘー君から急な呼び出しがあるまではお休みだと思うよ」


「よかったです。夏休みは部活の合宿とかで、後輩の指導とか自分のレベルアップをしようと思っていたので」


「それならヨウヘー君も創作活動に入るから、私も休暇しようかしら?」


「いいですね。レイカに合宿所を借りようと思うので、よかったら来てください。プライベートビーチもありますよ」


「ふふ。いいわね。ちょっとバカンスをしようかしら」



エミさんと他愛ない話を終えて、仕事を終わらせるとタエの運転で家へと帰る。



「タエも配信を見てたの?」


「はい。別室で見てましたよ」


「なんで誰も反応しなくなったのかな?」


「……あ~あれは……ワタスも……」



何故か股を擦り合わせてモジモジするタエを俺は不思議な顔で見てしまう。



「女性にはご褒美だったことは間違いないです」


「うん?まぁエミさんも反響があったと言っていたから悪くはないのかな?」


「それはもちろん!!!」



メチャクチャ力強く肯定されて、俺は笑いながらスマホの電源を入れる。

そこには彼女たちからのメッセージで溢れていて、みんな配信を見てよかったと言ってくれていた。



「ふぅ~これで本当に一段落だな。今年の夏も熱くなりそうだ」



この日、様々な世界トレンドが凄まじい記録を叩き出した。


そして、【邪神様】というパワーワードが全世界を駆け巡った。



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どうも、作者のイコです。


これにて第五章終了です。


今回のテーマは男性側のダークな貞操概念逆転世界でした。

ラブコメ?とはちょっと違ったのかな?と思います。


次の章では、ドタバタとしたラブコメに戻していきますので、どうぞ最後までお付き合いください。

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