side友 ー 1
《白金聖也》
僕は中学時代のトラウマがあり女性が苦手だ。
それは高校に入って、友人と過ごすうちに解決したものだと思っていた。
友人と共に男子応援団として女子の前に立っても嫌な気持ちになることもなくなり、女子と話していても冷や汗をかくこともなくなった。
だから、あの青葉祭の日。
「セイヤ君。入学したときからずっと好きでした。私と付き合ってください」
倉峰飛鳥さん。
姉さんに負けないくらい顔が綺麗な女の子。
自分の欲望に忠実な人で、入学した当初は苦手だと思っていたけど。
夏休みの合宿やクラスメイトとして過ごすうちに苦手意識は緩和されて、良い友人関係を築けるようになっていたと思う。
それでも告白されるような関係ではないと思っていたけど……青葉祭の賑やかさの中で告白をされた。
他にも二人の女子から告白されて、三人からの告白をどうしたらいいか考えなければならない。
一人では決められなくて、男子応援団のマネージャーになってくれた姉さんに相談してみた。
「そう、セイヤはどうしたいの?」
「僕は……よくわからないんだ。好きとか、付き合うってよくわからない。
女の子が何を考えて、何をしたいのかもわからない」
彼女たちを好きかと聞かれても、倉峰飛鳥さん以外の二人とは話したこともない。
「そうね……なら、ヨル君ならどうかしら?」
「ヨルなら?」
「ええ。あなたの大好きなヨル君なら、こういう時どうすると思う?」
「べっ別に大好きとかじゃないし。ただの友人だし」
姉さんに促されて、僕はヨルだったらと考えてみる。
僕から見たヨルは、心も体も大きくて、鈍感で、無頓着で、女子にも男子にも優しくて、つい頼りたくなって、凄い決断力を発揮したりする。
まとめると、よくわからない奴。
だけど、こういうとき絶対に自分の意見を曲げない奴。
「僕はヨルみたいに出来るかな?」
「答えは出たの?」
「答えと言っていいのかわからないけど。
ヨルなら彼女たちの気持ちを無下にはしないと思う。
例えば、仮の彼女として付き合ってみて、ダメだったら終わりとか言ってそう」
どんな風に言っているのか想像すると笑えてくる。
「本当にセイヤはヨル君が好きよね」
「えっ?そっそんなことないよ!」
「でも、今ヨル君のこと考えてたでしょ」
「なんで分かるの?」
「顔がニヤニヤしてたから、無駄に顔がいいから変には見えないけど」
「無駄にって姉弟なんだから、顔は姉さんも似てるだろ」
姉さんとこんな話をする日が来るとは思わなかった。
恋愛相談や、友人の話をするのは楽しい。
「それで?セイヤはどうするつもり?」
「うん。彼女たちとは仮の彼女でもいいってくれるなら付き合ってみるつもり。
お互いのことを知らないから、まずは知り合うことからかなって」
「そう。それも一歩前進ってことでしょうね」
姉さんに相談してよかった。
僕は後夜祭で三人を呼びだして、告白の返事をした。
倉峰飛鳥さんは僕を独占できないことを不満そうにしていたけど。
この条件が飲めない人とは付き合えないと告げると承諾してくれた。
残りの二人、
もう一人の
「まずは、三人のことを名前で呼ばせてもらうけどいいかな?」
「もちろん」
代表してアスカさんが応えてくれて、二人も頷いてくれる。
シイナさんとリンさんは、Bクラスなので昼にならないと会えない。
それでもクリスマスまでは上手くやっていたと思う。
ヨルが彼女のことで忙しくないり、青葉祭までの忙しさのせいもあってやる気が少し落ちたのか、しばらく男子応援団を休むことになった。
僕の仕事が減って時間に余裕が出来た。
寒さが強くなって冬休みになりヨルと会う時間が減っていく。
彼女たちと過ごす時間が増えていく。
シイナさんは本が好きだというので、よく本の話をした。
僕も本を読むのは好きなので、話が合ってよく語り合える関係になった。
リンさんは博識で器用なので、運動に料理、アクティブな活動をしていてボランティア活動などにも力を入れているので、清掃活動などに参加したときは楽しかった。
アスカさん、ちょっと苦手である。
前よりも気を使ってくれているのは分かるのだが、距離感が掴めない。
頭が良くて、運動も出来る。
ただ、趣味として楽しんでいることは何もなくて、興味があるのはエッチなことばかり。
三人のことを知って、よりよい距離感を保てていたと思っていた。
だけど、クリスマスの日。
僕の家で開かれたクリスマスパーティー。
三人の彼女と姉さんと母さん。
六人開いたパーティーは楽しく終わると思っていた。
休憩のために廊下に出た僕をアスカさんが追いかけてきて、二人きりになる。
「アスカさん。どうしたの?」
「セイヤ君。今日のパーティーは無礼講だよね?」
「えっ。まぁそうかな?」
「なら」
そう言って強い力で僕の腕を掴んで壁に押し付けられてキスをされる。
目が血走っていて少し怖い。
気持ちよさよりも、恐怖を感じるキス。
「こっこれで私が一番に!」
アスカさんは高揚した顔で去っていった。
でも、僕の心は一気に冷めて……むしろ……やっぱり女子は怖いと思う気持ちが蘇ってきた。
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