side《邪神様》の信者 桃 ー 3
《最上照美》
SPさんが運転する車に乗り込み。
私たちはヨル君の元へと向かいました。
警察などから連絡があるかも知れないので、ハルミちゃんに留守を頼み。
ヨル君の私達たち四人で、キヨエさんが率いるレイカ様の近衛部隊と合流を果たした。
「あれが……」
私たちの前には海から少し離れた丘の上に建てられた廃墟と化したホテルが見えています。
車を降りたツキちゃんとタエさんは、どこか覚悟を決めた顔をしていました。
「今から突入をかけます」
「待ってもらえますか」
キヨエさんの声に待ったをかけたのは、タエさんだった。
ここまではずっと黙って何かを覚悟していたタエさんからの言葉に私たちも驚いた顔をして立ち止まる。
「ここにヨル様がいるのであれば、あの女もいるはずです」
「あの女?」
「ヨル様を誘拐した。ライダースーツの女です。あいつは私が倒します」
タエさんはずっと後悔していたのだろう。
ヨル君を守れなかったことを……
「そうですね。私も因縁の相手がいるようです」
タエさんに続いて、ツキちゃんも前にでる。
「お二人は突入隊に参加したいと言うことですね」
キヨエさんが確認すると二人とも頷き返す。
「危険が……あるかもしれません。ハァー、お二人なら我が部隊の者とも引けはとらないでしょうね」
キヨエさんも納得したようで認めていた。
私とランさんも突入したい気持ちはある。
だけど、足手まといになってしまうかもしれない。
悩んでいた私に代わって、ランさんが前にでる。
「私とテルミさんも行きます」
「あなたたたちは……前に出過ぎないでくださいね」
キヨエさんは断ることなく、深々と息を吐いて受け入れてくれた。
近衛部隊の方々が突入を開始して、廃ホテルへ入っていく。
ツキちゃん、タエさんもそれに続いて行く中で、私のランさん、キヨエさんは最後にホテルへと入った。
ホテルの中は扉が開かれ、至る所で部隊の人たちが交戦してホテルの中にいた人たちを取り押さえていく。
その中でも、タエさんは真っ先に目的の人物を見つけたようで、二階から叫び声が聞こえてくる。
「貴様が!ヨル様を私から奪おうとしたんだ!失う悲しみを与えたこと!許さない!」
「はっ!バカな女は奪われて終わるんだよ。
貴様のような戦うことしか能の無い者は、何者も守れないのよ」
二人の言い争いが聞こえてくる。
突然、天井が抜けてタエさんに投げ飛ばされた女が落ちてきた。
「それでも私はヨル様を守る盾として生き続ける。考えることは他の子に任せてでも最強で居続けます」
タエさんは自分の進む道をハッキリと決めたのだろう。
二階から女へと飛びかかるタエさんは凜々しかった。
階を進めていくと、江ノ島であったギャルとツキちゃんが対峙していました。
「なっなんでお前らが!」
「あなたの存在にも気づいていました。箱根にいましたね」
「ちっ」
「兄さんを私から奪ったこと悔い改めてもらいます」
「うるせぇよ。お前に何がわかるんだ!」
「分かる必要はありません。事実として私からあなたは兄を奪った。
それを許さない。私の戦う理由はそれだけで十分です」
私には見えない早さで近づいたツキちゃんは、ギャルを投げ飛ばして制圧していました。
「行きますよ」
キヨエさんに促されて、私たちは三階、四階と階層を上っていく。
最上階である五階に到着したところで、争う音もほとんど聞こえなくなり最奥の部屋へと進んでいく。
近衛部隊の人が扉を開くと、幼い女子の声が聞こえてくる。
キヨエさんが先に進むと、私とランさんに制止するように指示を出す。
ですが、ヨル君がそこにいると思うと、私の足は止まることができなかった。
「なっ!」
私が見たのは5人の美少女達が裸になって、ベッドに寝かされたヨル君に群がる姿でした。
そのときの私は……何かが切れた。
「あなたたち!!!何をしているのですか!!!」
私史上一番声を張り上げました。
近くにあったクッションを彼女たちへ向かって投げつけました。
手当たり次第にある物を投げて全て投げ終えて息を切らしたところで……
「テルミさん。落ち着いたかしら?」
キヨエさんに声をかけてもらい意識を取り戻しました。
状況を見渡せば、五人の女子は近衛部隊の人に取り押さえられて。
ヨル君はランさんに膝枕をされて眠っていました。
「あれ?」
「あなたが物を投げて追い詰めたから、ヨル君を盾に取られることなく彼女たちを捕まえられたわ」
自分の行動が恥ずかしく思いながら、ヨル君に近づいていく。
服はビリビリに破かれて、全身にキスマークがつけられている。
ただ、パンツだけは脱がされることなく履いたままだった。
どうやら間に合ったようだ
「よくやりましたね」
キヨエさんが、取り押さえられた一人に近づいて声をかけた。
「ヒドイっすよ!横暴っす」
「それも任務です」
「頑張ったんすよ!ヨル君の貞操を守ったす!」
「その割には楽しんだようですが?」
「そっそれはまぁ、あたしもずっと見続けていたヨル君にエッチなことが出来るって思ったらちょっとハメを外したって言うか」
状況がついていけない私は二人に近づいていく。
「どういうことですか?って、あなたは江ノ島で会った方ですよね?」
私が元気なギャルを指差すと、キヨエさんが拘束していた近衛隊の方に手を離すように伝える。
彼女は拘束を解かれて立ち上がる。
「最上照美先輩、始めましてっす。
私はレイカ様の近衛部隊所属であり、青葉高校1年B組の
今回はレイカ様の任務で潜入調査をしてたっす」
ヨル君が誘拐されたのは、レイカさんの関係であり。
カゲシタさんが潜入に成功していたため、場所の特定が出来たそうだ。
また、他の子たちがヨルくんの貞操を奪おうとしているのも、彼女が守ってくれたおかげで最後の一線を越えていないという。
「そんなことが」
「まさか、相手がここまで愚かなことをするとは思っていなかったけどね」
キヨエさんも誘拐にまで発展するとは考えていなかったそうだ。
「ん、んうん。ここは?」
意識を失っていたヨル君が目覚めたようだ。
「ヨル?」
ランさんが呼びかけて、ヨル君の意識が覚醒していく。
「ラン? ラン! どうしてここに?」
「バカね。助けに来たからに決まっているじゃない」
ランさんの瞳に涙が溜まり、私も安堵から涙が溢れる。
「これを」
キヨエさんが冷静にヨル君の体にシーツをかける。
ほとんどの肌が晒されてる配慮をしてくれたのだ。
「そうか、助けにきてくれたのかありがとう」
素直に礼を口にするヨル君に私とランさんは抱きついて、無事を喜んだ。
あとからやってきたツキちゃん、タエさんもヨルの無事を喜び合った。
「黒瀬君、疲れていると思うが今回の件はまだ終わっていない」
そんな私たちに水を差すように、キヨエさんが声をかけてきた。
「黒幕の存在ですね」
この誘拐事件を考えた犯人。
その相手についてキヨエさんから語られ、ヨル君は立ち上がりました。
「キヨエさん。俺をレイカの下へ連れて行ってください」
レイカ様は犯人だけでなく、ヨル君と付き合うことを反対しているお母様と対峙してるのだという。
ヨル君はレイカ様のために動こうとしている。
本当は止めたい。
誘拐され、命の危険まであったのに、もう危ない事はしてほしくない。
だけど、誰もヨル君のしたいことに反対する人はいなかった。
だから私は…
「必ず無事に帰ってきてください」
そう言って彼の胸に飛び込んで彼を抱きしめた。
「テルミ、ありがとう。必ず無事に帰ってくるよ」
ヨル君の太く頼り甲斐のある腕に抱かれた私は彼の無事を祈った。
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