第78話 湯涼み
涙を流したテルミを優しく撫でながら、俺は今後のことを考えてしまう。
法律で一夫多妻が決まっていると言っても、彼女たち一人一人が持つ嫉妬心を抑えることはできない。
ただ、一人だけを愛して生きる道をもう想像出来なくなってしまった。
全員を好きだと思う気持ち。
それが最低だと言われても、もう止めることが俺にはできない。
「テルミ、お願いがあるんだけどいいかな?」
「お願いですか?」
泣き止んで落ち着いたテルミに頼み事をすることにした。
これからのことを考えるなら、俺も覚悟を決める。
最初の相手は誰がいいのかわからなかった。
だけど、テルミならいいかな?
「ああ、これから俺は君たちと心だけじゃなく身体の繋がりも持ちたいと思ってるんだ」
「……身体の繋がり?」
「うん。だから一緒に温泉に入らない?」
「一緒に温泉? ふぇえええええええええ!!!!」
赤面して大声を上げるテルミ。
ツキとのお風呂は躊躇してしまう気持ちがあった。
だけど、テルミならキスをすることにも抵抗はなかった。
「テルミとなら、入れそうな気がするんだ」
「わっわかりました!ヨル君の初めてを務めさせて頂きます!」
「まぁ、そう固くならないで気楽に行こ」
男性が泊まる部屋には室内温泉が設置されている。
綺麗な景色を見ながら、タオルを腰に巻いて温泉に浸かっていると。
バスタオルを巻きつけたテルミが現れる。
普段はツインテールにしてる髪を下ろすと、真面目なテルミからお淑やかで不安そうな気弱な美少女へ変わってしまう。
どこか儚げで、守らなくてはいけない気持ちにさせられる。
「おっ、お邪魔します」
恥ずかしそうにこちらを見ないようにして、テルミが湯の淵に腰を下ろす。
「こうして裸を見られるのは二度目だな」
「裸!!!!」
テルミは俺の発言にいちいち反応してくれる。
そういうところが可愛くて、つい何かイタズラをしたくなる。
思い立った俺は湯船から立ち上がる。
腰に巻いたタオルだけは落ちないように気をつけながら。
「キャッ!」
テルミは悲鳴をあげながらもしっかりと指の間から俺の身体を見ている。
視線を感じながら、テルミへ近づいていく。
俺からはテルミの体は大きなバスタオルに隠されてみることは出来ない。
それでも、普段よりも露出が少なく。
もしも、このバスタオルを取ってしまえばテルミは一糸纏わぬ姿を晒してしまう。
「テルミ…何もしないから、俺を見て」
「はっふぁい!」
動揺するテルミは、それでも顔を隠していた手を退けて俺をみる。
「男性の裸を見るのはこれが二度目なので、一度見てしまうと」
手を退けたテルミはもう自分の目を隠すことなく俺の裸を見る。
それは集中して一点を見つめるぐらいガン見していた。
「あ〜俺は今まで勘違いしたいたんだね」
「勘違い?」
「テルミは裸を見られることや、見ることに恥ずかしいと思っていると」
「恥ずかしいのは、恥ずかしいですよ」
「うん。でも、テルミは自分の体を隠そうとはしないよね?」
俺が元いた世界なら女性は男性に見られないように肌を隠す動作をとる。
だけど、テルミは立ち上がる俺を見て目を隠した。
それも恥ずかしくではなく、俺の肌を見てはいけないという倫理的な観点からの行動だ。
「どうして隠すんですか?私の身体なんて見ても仕方ないのに」
そうだ。元の世界で男性は思春期でもない限り、異性に肌を見られて恥ずかしがる男は少ない。
いないとは言わないが、気にしていない男の方が多い。
「テルミは俺の裸を見てどう思う?」
「そっそれは…私は他の方を知りませんが、鍛えられていて筋肉が太く。女性の柔らかさとは違う堅さがとても、その……」
「エロい?」
俺の言葉にテルミの顔が赤くなる。
「そっそそそそそそんな直接的な!!!!」
「じゃエロくない?」
俺は筋肉を強調するポーズを取る。
「はわわわわ!!!」
元の世界で言うなら、グラビアアイドルの悩殺ポーズと言ったところか?
ボディビルダーほどのボリュームはないが、この貞操概念逆転世界ならかなり上位に入る自信がある。
「そっそんなポーズとっちゃダメ!我慢が!我慢が出来なくなります」
テルミはモジモジと太腿を擦り合わせて、淵に座っているだけのはずなのにタオルの下半身がぐっしょりと濡れていた。
「ごめん。楽しくなってた」
「もう、そんなに私を誘惑して、襲ってしまったらどうするですか?」
プリプリと怒っているテルミに近づいていく。
「ふぇ!近い!」
「テルミとならそれでもいいと思っての行動だよ」
真剣にテルミの正面で伝える。
テルミは最大級に顔を真っ赤にして気を飛ばして倒れていく!
とっさに抱き止めることが出来たが危なかった。
「のぼせたかな?」
お風呂で蒸し暑いなかで何度も頭に血が昇ってしまったせいでテルミは意識と飛ばしてしまった。
「裸を見るけどごめんな」
テルミを抱き起こしてタオルで全身を拭いていく。
母とユウナ以外では初めて見る全裸の女性に興奮を覚えないわけではないが、のぼせてしまった病人を襲うわけにはいかない。
全身を拭き終えて、テルミが着ていた下着を着せて布団をかけた。
身体は冷やさず、頭だけは濡れたタオルで冷やして口移しで水を飲ませる。
「んん」
口から口へ注がれる水をテルミは求めるように、舌を差し出してくる。
ゆっくりと喉に詰まらせないように流し込み。
「美味しそうに飲むな」
水を取らせたのであとは目が覚めるまでゆっくりするしかない。見守りながら自分も身体を拭いて横で湯涼みをテルミと過ごした。
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