第72話 年越しの過ごし方
青葉祭も終わってしまえば、あとは冬休みに向けて加速していく。
男子応援団も冬の競技の応援はあるものの、正月は各々で過ごすことを決めた。
「最近寒くなってきたよね」
セイヤと教室で話をしていると、気温の話になる。
女子たちの制服も夏服から冬服へと代わって、肌の露出が少なくなってしまった。
「そうだな。夜も長くなってきた気がするよ」
「うん。そのせいで姉さんが心配して、剣さんによく連絡してくるんだ。迎えが必要じゃないのかって」
「はは、ヒカルさんも心配してるんだろ。セイヤのこと。最近は痴女の発生率も上がってるらしいしな」
「だね。コートの下に何も来てない女性が男子を見つけては見せてくるらしいね」
不審人物が近づいてくるとタエさんが庇ってくれるから全然大丈夫なんだけど。
まぁ好きでもない人の裸でもグラマラスであれば見て見たいかもしれない。
「ヨルはまた変なこと考えてそうだけどね。それで?年末年始はどうするの?」
「今年の一年は結構忙しかったから、ゆっくりしたいところだな」
「はは、ヨルがゆっくりってあんまり似合わない気がするけどね。いつも渦中の人って感じだから」
「そういうセイヤも彼女が出来たのか?」
「う~ん。彼女?なのかな。とりあえず青葉祭で告白してくれた子の数名と友達から始めることにはしたよ。僕もヨルを見ていると女性との付き合い方を考えないといけないと思ったからね」
倉峰飛鳥はセイヤに告白して、友達に成れたことを喜ぶ姿を見た。
俺がこの高校に入学したい際に主人公とヒロインだと思った二人は、紆余曲折ありながらも距離を近づいたようだ。
そこにはセイヤの考えを改める精神的な変化と、倉峰飛鳥の努力があったと言える。
倉峰飛鳥は、夏休み以降は色々と配慮を覚えたようでセイヤを気づかい何がセイヤのためになるのかをガンバって考えた素振りが見える。
それも、レイカさんとテルミさんに聞いた話ではあるが、生徒会メンバーで男子に好かれる方法なんて会議もしていたそうだ。
「もう大丈夫なのか?」
「う~ん、どうだろ?難しいと思ったらヨルに相談するよ」
「ああ。いつでもこい」
「それよりも年末年始。どうするの?」
「ああ。クリスマスは皆と過ごして、年末はゆっくりして、年始は箱根かな?」
「箱根?」
「ああ、ランさんが駅伝に出るからな」
そうだ。ランさんが一年生ながら大学駅伝の選手として選ばれている。
それの応援に向かおうと思っている。
彼女たちにも、一緒に行くか聞いたところ……
レイカさんツユちゃんには予定があって同行できないと連絡を受けている。
それ以外のメンバーは一緒に行くということなので、どれだけの人数で行くのかは決まっていないが、ユイさんとハルミさんが同行することが決まっている。
「ヨルは凄いよね。まとめて彼女にしちゃうなんて」
「そうか?優柔不断なだけじゃないか?カオル先生みたいに生涯一人って決める方が俺は凄いと思うぞ」
「まぁそうなんだけど」
「セイヤも三人の女子と彼女未満友達以上になったんだろ?それも美人ばっかり」
セイヤの好みはどうやら美人系の女子が好きなようだ。
「そうなのかな?みんな姉さんに比べるとそうでもないと思うけど」
セイヤの基準がメチャクチャおかしくなっていた。
確かにヒカリさんは見惚れるほど綺麗ではあるが、それを基準にして女子を見ると対抗できる人間はなかなか難しい。
顔だけならレイカさんや倉峰も負けていないが、ヒカリさんは透明感というか雰囲気まで美女なのだ。
セイヤはシスコンなのかもしれない。
まぁ、ツキと付き合いだした俺が言えることはではないが……
「まぁいいんじゃないか。それにハヤトはカホ先輩と付き合いだしたのか?」
「みたいだね。毎日お弁当を作ってきてもらって一緒に食べてるよ」
「あのデレデレした顔を見ればわかるよな。キリっとした顔立ちのハヤトが、カホ先輩が来るとだらしなくなるからな」
青葉祭では各々の時間を過ごしながらも、女子との交流を持つ時間を持つことができた。
ヨウヘーも告白は受けたようだが、全て断ったと言っていた。
理由として……
「めんどう。姉さんたちが全てしてくれる」
だった。
男子応援団に所属しているメンバーは、女子に興味がある分。
貞操逆転世界としては、相変わらず思っていたのとは違うが、まぁ逆に普通に過ごすことが出来るのでありがたい。
「それよりもヨルの方こそ大丈夫なの?色々あったんでしょ?」
セイヤには家族からキモイと言われていた過去について話したことがある。
互いに悩みを話したことがあるからこそ、今回の結果を心配してくれたのだろう。
「ああ、大丈夫だ。気持ちの整理は全てのあの日に済ませたから」
「そっか……ヨルは前に進み続けているんだね。僕も頑張らないと……」
セイヤと恋愛話をする日が来るなんて思っていなかっったけど。
これはこれで楽しいよな。
ただ……何故かイチカが物凄く近くに居て、離れようとしないのは何故なんだろう?
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