第64話 青葉祭は派手に ー 1
巨大なディスプレイが設置された校舎には、生徒会長藤堂麗華が映し出される。
「皆さん!いよいよこの日がやってまいりました。
青葉高校名物青葉祭!!!
今日のために多くの準備をしてきたことでしょう。
今日のためにたくさん練習してきたことでしょう。
その全てを今日という日に捧げてください。
悔いのない二日間を迎えてください!
ここに青葉祭開催を宣言します!!!!」
体育祭は三日によって行われるのに対して、青葉祭は二日間。
今日と明日で全てをお披露目しなければならない。
「セイヤ、行けるか?」
「バッチリ」
「ヨウヘー。ハヤト。頼む」
「おう!」
「ああ」
二人がスイッチと音響を上げていく。
巨大なスクリーンは東堂会長の映像から、男子応援団の映像へ切り替わる。
「皆さん、男子応援団団長黒瀬夜です。
僕等の出し物は、皆さんを応援することだと思っています。
今日まで頑張ってこられた皆さんへエールを送ります!!!
聞いてください!【栄光】」
青葉祭のためにヨウヘーが作詞作曲した曲が流れ始めて、ハヤトの声が校内に響き始める。
今日は盛り上げる曲を中心に選曲なされているので明るい曲やノリのいい曲が多い。
「エミさんが作ってくれた映像カッコイイな」
「厳しかったけどけね」
「そうだな」
二週間ほどの準備期間の間、ほとんどが撮影に費やされた。
ヨウヘーがオトネさんと共にレコーディングに入っている間に、俺たちはPV撮影のためにスタジオに行ったり、歌詞のイメージに合わせた場所で撮影を行ったりと移動や演技指導まで受けることになった。
演技指導をしてくれたのは、エミさんの会社が雇ったプロだったので、かなり熱心に指導されてもう高校の域を出ているのではないかと思えた。
それらのハードなスケジュールを乗り越えられたのも、セイヤの姉であるヒカリさんの手厚いサポートがあったからの他ならない。
セイヤだけでなく、俺やハヤトにも優しく甲斐甲斐しく世話を焼いてもらって凄く助かった。
「まぁ、俺らの仕事はほとんどこれで終わりだけどな」
ヨウヘーはスイッチを押した後は、ベッドへダイブしていた。
「そうだな。あとはクラスの手伝いと、青葉祭を楽しませてもらおう」
「俺は興味なし。何かのトラブルがあったときように個々で待機しとく」
ヨウヘーが興味がないということで、他の二人を見る。
「俺は約束があるから」
ハヤトは早々に部室を退出していった。
「なんだあれ?」
「最近、二年の南夏帆先輩と話しているところをよく見るね」
「そうなのか?」
「多分。だから今日も一緒に過ごすんじゃないかな?」
イチカとは上手く話せなかったようだけど。
ハヤトのお姉さんを見ても、気の強くて引っ張ってくれる人の方がハヤトに合ってるのかもな。
「セイヤはどうするんだ?」
「僕は姉さんが見学に来るから一緒に回ろうと思うんだ」
「そうか、ヒカリさんも青葉の卒業生だったもんな」
「うん。だからヨル。ごめんね一緒には回れなくて」
「別にいいさ。クラスの方を見に言って、それから考えるよ」
「うん。じゃあまたね」
最近はほとんどの時間を三人で過ごしていたので少し寂しくは感じる。
久しぶりに一人で校内を歩くと文化祭の雰囲気に、女子たちからも熱気を感じられる。
お化け屋敷やコスプレ喫茶、占いの館や展示室。
文系はここぞとばかりに自分たちの成果を発表して、スポーツ科はグラウンドで屋台を開き各クラスでは演技やバンド……様々な模擬店から演目があって目移りしてしまう。
「あっあの!ヨル君」
呼び止められて振り返れば、テルミ先輩が立っていた。
「先輩、お久しぶりです。なかなか会う機会がないので、夏休みの合宿以来ですね」
「そうですね」
「今日も生徒会の見回りですか?」
「いえ、今は休憩時間なんです。午後からは生徒会に戻りますが」
「う~ん、じゃあ良ければ一緒に回りませんか?今日は一人で退屈していたんです」
先輩にも友人がいるのに不躾だったかな?
「ええ、構いませんよ。ヨル君と二人で過ごすのは初めてかもしれませんね」
「まぁ周りは随分にぎわっていますが」
苦笑いを浮かべてテルミ先輩と歩き出す。
テルミ先輩とはハプニング的なことが多くて、あまりゆっくりと話をしたことがない。
「そうですね。もう今年も凄い賑わいで、会長が気合を入れていたのがよくわかります」
「会長が?」
「はい。最後の青葉祭を盛大にするんだって、張り切っていました」
「そうなんですね」
レイカさんが卒業する。ふと寂しさを感じてしまう。
「寂しいですよね」
「顔に出ていましたか?」
「ふふ、いえ。私もそう感じただけです。絶対に成功させたいって」
テルミ先輩は本当にレイカさんのことを好きなんだろう。
「会長のこと好きなんですね」
「はい!大好きです」
大好きといった顔はとても可愛くて、テルミ先輩が素直で素敵な人だとわかってしまう。
いつもからかってばかりいたけど。
この人も年上のお姉さんなんだと改めて思ってしまう。
「じゃっ行きましょう」
だから、少しイタズラをしたくなる。
テルミ先輩の手を握って歩き出す。
「ふぇっ!」
「これぐらいは良いでしょ?デートですから」
「ふぇ!!!デート!!!」
顔を赤くして照れてしまうテルミ先輩を連れて、僕は青葉祭に突撃した。
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