第62話 男子応援団は何をする?

体育祭が終わった部活はだらけることなく、次の動きに移行していく。



「じゃあ、青葉祭で何をやるのか?意見を出し合おうと思います」



セイヤが進行役として、部活にホワイトボードが設置される。



「セイヤ、俺たちはクラスの出し物は手伝わなくていいのか?」



女子たちとキャキャ言いながら準備がしたい。



「う~ん。手伝ってほしいことがあったら手伝うけど。当日だけかな?

それよりも男子応援団して、何かして青葉祭に参加した方が、クラスだけでなく学校全体が喜ぶと思うんだ」



セイヤの意見に、ヨウヘーもハヤトも賛同しているようで頷いている。



俺の一人の思いは無残に打ち砕かれた。



「そうか、まぁクラス側から言われれば手伝えばいいか。それで?俺たちは何をすればいいんだ?」



俺は気持ちを切り替えて、実際に男子が文化祭である青葉祭にどういう形で参加しているのか問いかけた。



「青葉祭に男子が出る行事はあまりないんだ。

運動部のマネージャーとかしている男子は、その部活の【王子様】役で演技に出たりすることがあるらしいんだけど。あまり他の役回りはないみたい」



「絶対嫌だな」


「めんどう」



セイヤの説明に、ハヤトが反対を口にするとヨウヘーも賛同する。

貞操概念逆転世界の価値観としては彼らの意見が普通なのかな?

俺としては問題ないように思えるけど。



「そうだよね。聞く話によると、無理やりキスシーンがあって、20人ぐらいの部員とキスばかりする演目とかもあったらしいよ」


「すっ好きでもない女子とキスなどけしからん」



ハヤトは怒っているように言っているが、顔は満更でもなさそうだ。

こいつは案外ムッツリだからな。



「めんどう」



ヨウヘーの返答は変わらない。



「まぁ、男子の方も同意してやってるみたいだからいいんじゃないかな。

男子応援団としては、別に活動はしなくてもいいけど。

やった方が今後の宣伝にはなるかな。

正直な話、newtubeとかでも結構話題になってて僕としてはやりたい」



最近のセイヤはなんだか芸能プロダクションのマネージャー的な業務を行っている。



「YO!HEY!でも、ヨルの新作曲はバズってたな」


「えっ?新作がnewtubeに乗ってるのか?」



セイヤの編集で、ヨウヘーも何曲か乗せているのは知っていたが、自分が体育祭で歌った映像が流れているのは恥ずかしい。



「もう自分のことなんだから見てよ!

もう少しで1000万回再生されそうな勢いなんだからね。

前に上げた【フリーダム】は1億回再生されてニュースにもなってたよ」



全然知らんかった。


最近考えることが多くてnewtubeも見てなかったな。



「僕も取材受けたりしてるのに……ヨルってそういうとこ本当に興味ないよね」


「ある意味天然記念物だよな。俺でも自分の作曲した音楽が受けるのかドキドキなのに」


「なぁ、一つ思ったんだが、プロモとか作るのはどうだ?」



二人がnewtubeに力を入れていることで、ハヤトがそんな提案をする。



「プロモ?」


「ああ。実は姉が映像関係の仕事をしていて、最近男子応援団が出ている映像を見たらしくて、プロモを取らせてくれないかと相談されてたんだ。

一応、セイヤには言っていたんだが」



団長である俺はもちろん知らない。



「うん。聞いてはいたけど。僕等は高校生でアイドルじゃないからね。

プロとしての活動をするわけにはいかないって断ってたんだ」



意外な繋がりに思うが、それぞれの姉妹がいる。


俺以外の三人は姉がいて、年が離れていると言っていた。


ヨウヘーには三人の姉がいて、妹もいるそうだ。



「それなら音楽関係で働いている姉さんがいるから、スタジオで録音とか出来ると思うぞ」



ヨウヘーからもそんな提案がなされる。



「でも、今でもキャパオーバーなのに、そんなことしだしたら」



セイヤはこれからのスケジュールを考えて青い顔をしている。



「逆じゃないか?」



俺はセイヤの考えを否定するように声をかける。



「えっどういうこと?」


「いや、前にセイヤは外注すればいいって言ってただろ。

あれをヨウヘーのお姉さんと、ハヤトのお姉さんに頼めばいんじゃないか?

二人のお姉さんなら信用できるだろ?

家族である二人を悪いようにしないと思うから」



俺から提案してみるとセイヤは真剣な顔で悩み始めた。



「……そうかもしれないね。今までは全部自分でやらないとって思ってたけど。

僕も姉さんに手伝ってもらったことがあるんだ。

姉さんが女性から見た編集をしてくれたからこそ、ここまでバズッたってところもあると思う。


確かにみんなの姉さんなら心配ないかも」



セイヤの頭の中で整理がついたようだ。



「だろ。しかも俺たちがやるよりもプロにやってもらえるしな。

セイヤの負担も得るし、newtubeで結構稼いでるんだろ?」



俺は全貌を聞いていないので、セイヤは凄いことになっていると聞いている。



「そっちは問題ないかな……確かに信頼できて、プロにやってもらえてチェックだけなら僕も楽だね。

校内の撮影は今まで協力してもらってる子達で大丈夫だし……うん。

その線で考えてみようか。

青葉祭では、そのプロモの映像を流すってことで、準備はそれぞれのお姉さんに連絡して打ち合わせと撮影にあてようか」



「そうだな。とりあえずそれでいいんじゃないか?」



ハヤトの提案から、また別の切り口で男子応援団の名が広まっていく。

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