第34話 プライベートビーチは凄かった

千葉のどのあたりまで来たのかは正直わからないが、海岸から有名テーマパークが見えているから、まぁその辺りなんだろう。


だが、見える景色は千葉の海の素晴らしさをこれでもかと言わんばかりに美しく見せてくれていた。


別荘も凄かった。


いや、別荘というかお屋敷?ホテル?よくわからないけど。


防音設備のされた部屋は、ステージや個別録音室だけでなくオーケストラが演奏できそうな広さまで完備していてある。



「歌とダンスの練習はここを使ってくださいね」



案内をしてくれる会長は慣れた感じで、ガラス張りのダンスルームや、ダンス後のシャワールームを紹介してくれる。



「常識ってなんだろね」


「まぁ、俺らは男性ってだけで生きては行けるけど。お金持ちって言うのはまた別の次元なんだろうな」



母さんも社長として成功をして、タワーマンションに住まわせてもらっている。

十分に凄いと思っていたけど。



東堂先輩の家は次元が違っていた。



「ヨルが東堂先輩のお婿さんになれば使いたい放題だよ」


「バカなこと言うなよ。東堂先輩ほどの大金持ちなら、許嫁とかが居るだろ。たぶん」



案内される俺たちはヒソヒソ話でなんとか気を紛らわせていた。



「部屋で荷物も置いてきてもらったので、そろそろ顔合わせと行きましょうか」



食堂には生徒会メンバーと男子応援団が集合した。



「改めまして、私が現生徒会長をしております。青葉高校三年、藤堂麗華です。


同じく三年の副会長、西松清江にしまつきよえ

二年生で、次期生徒会長である書記の最上照美さん。

会計の南夏帆みなみかほさん


そして、新メンバーである一年生メンバーさんの」



生徒会長の紹介に我慢できなかった様子で、倉峰飛鳥が立ち上がる。



「生徒会庶務を任された倉峰飛鳥です」



そして、もう一人の生徒会新メンバーも倉峰に続いて立ち上がる。



「え~と、生徒会広報を任されることになりました。最上晴美モガミハルミです。最上照美の妹です」



最上晴美さんは1ーAクラスメイトなので、全員顔は知っている。

話したことはないので、恥ずかしそうにしている姿は姉の照美先輩に似ていて可愛い。


テルミ先輩はツインテールだが、ハルミさんは短い髪を首のあたりで小さく結んでいるだけだ。



「次は僕たちですね。団長、お願いします」



生徒会メンバーの自己紹介が終わったところでこちらへと請け負う。



「ああ、えっと男子応援団団長を務めています。青葉高校一年の黒瀬夜です。


副団長の白金聖也

特攻隊長の赤井隼人

音響、美術担当の緑埜洋平


全員同じ一年Aクラスメイトで以上が男子応援団のメンバーです」



俺が紹介を終えると会長が頷いてくれる。



「こうして合宿を共にできるのです。より仲が良くなれるように互いに名前で呼び合うように心がけましょう。良いですねヨル君」



会長の提案に生徒会メンバーが力強く頷いている。



「はい。大丈夫ですよ。レイカ会長」



俺が呼びかけると、トロンとした瞳で見つめ返された。


互いに自己紹介を終えると、セリーヌさんの指示で昼食が運ばれてくる。

車で移動してきて、それほどお腹は空いていなかったが出された食事が美味しくてたくさん食べてしまった。



「男性の方ってたくさん食べるんですね」



男性と食事をしたことが無いのか、照美先輩は驚いていた。


俺は食べる方だが、以外にも他の三人もよく食べていていた。



「午後からは何をなされるのですか?」



会長の質問にセイヤを見る。



「まだついたばかりなので、少しゆっくりしようと思います。それぞれ自由にして、二日目からは朝から体力アップや歌唱力アップをしていこうと考えています」


「まぁそうなのね。でしたら、午後はビーチに行かれてはどうですか?ここはプライベートビーチですので他の方々(女性)に会うこともありませんので気が楽だと思いますよ」



セイヤがどうするのか?質問を投げかけるような視線を送ってくる。



「自由なんだ。それぞれが思うことをすればいい。俺は会長の言葉に甘えさせてもらうつもりだ」



折角、会長が勧めてくれたのだ。

誰かは行かなければもったないだろ。



「僕はパスするよ。環境が変わって新曲を作成できそうだから」



真っ先に断りを入れたのはヨウヘーだった。

合宿に来たことで、インスピレーションを刺激されたのか、ヨウヘーの顔はウズウズしたように楽しそうだった。



「ハヤトはどうするの?」



最後のメンバーであるハヤトに視線が集まる。



「俺は少し休ませてもらうつもりだ。車に食事と続いて少し疲れた」



「そう。う~ん、じゃ僕はヨルに付き合おうかな」



四人の動向が決まったことで会長にそれぞれが自由にすることに伝える。



「まぁまぁまぁ、それではヨルさんとセイヤさんはビーチに行かれるのね」



なんだかメッチャ嬉しそうな会長の顔に俺らは頷いて食堂を後にした。



部屋はそれぞれ個室になっていて、自宅の部屋よりも広い。


ベッドにテーブルだけのホテルのような部屋を想像していたのに、ベッドルームにクローゼット。洗面台にリラクゼーションルームなんかも存在する。



「どこのスイートルームだよ」



もってきた着替え以外にもバスローブとかタキシードなども用意されている。他にも下着やシャツなんかも数枚クローゼットに収納されていた。



「男性用の水着も用意してくれてるのか、まぁ今回は持ってきた水着があるからいいけど」



水泳部の応援をしたときに着ていた。

紫のラッシュガードと水着に身を包んでビーチへ向かった。

途中でセイヤと合流して別荘から浜辺へと出ると、とりあえず凄かった。



断崖絶壁によって出来た自然の要塞内に、透き通る海が美しく。

絶壁によってできた影のおかげで砂浜は少しひんやりとしている。



「お待ちしておりました」



砂浜までの階段を降りていくと、生徒会メンバーが水着姿で待っていた。



今にも零れ落ちそうなダイナマイトバディーを惜しげもなく晒しているレイカ会長。

スレンダーながらも引き締まった身体をパレオを巻いて大人っぽく見えるキリエ副会長。

低身長ながら、双子のように可愛い水着に身を纏った最上姉妹。

幼児体型にスクール水着の合わせ技を展開するカホ先輩。


そして、堂々と黒ビキニで完璧な容姿と、バランスの取れたボディーを見せつける倉峰飛鳥。


6人がそれぞれの魅力を最大限に発揮している水着姿に目のやり場に困ってしまう。



「皆さんも利用されるのですか?」


「はい。せっかくなのでお二人に楽しんでもらえたら嬉しいですわ」



会長に招かれるままに進むと、セリーヌさんがティータイムの用意をしてくれいた。



「海は体が冷えますので、暖かめてからお入りください」



影があると言っても夏の暑さの中で、出される紅茶はスッキリしていて美味しかった。

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