第33話 合宿にいこう

夏休みも一週間が過ぎた頃。



セイヤから合宿所を借りることが出来たと連絡がきた。


今回の合宿の目的は個々の


体力アップ

ダンス力アップ

歌唱力アップ


三点の強化を目的に行うために合宿をする。



セイヤから、着替えを四日分と水着とラッシュガードを持ってきてほしいと伝えられて青葉高校集合だと言われた。


タエさんにも合宿のことを伝えると、ハヤトの体力訓練協力もしてもらうためにどうこうしてもらうことになった。



「合宿所は、どこさいくの?」



ツキには四日ほど合宿で家を空けることにを伝えて、タエさんに護衛されながら青葉高校へ向かっていた。



「すみません。全て副団長のセイヤに任せていて全然わからないんです。もしかしたら青葉高校内にそういう場所があって訓練するのかもしれません」


「あ~あの高校広いもんね」



俺が知らない未知の場所がまだまだありそうな青葉高校の校門にたどり着くと、黒塗りのリムジンが三台止まっていた。



「へっ?」


「なっなんだべ、あの豪華な車!」



黒塗りの豪華な車の近くにセイヤが立っていた。



「あっ、やっときたね。ヨルが最後だよ」


「おいおい、これはどういうことだよ」


「あははは、これは驚くよね。まぁ今回の出資者がね」



セイヤの目配せを追いかけた先には、生徒会長である東堂麗華さんが立っていた。



「生徒会?」


「そう。今回は生徒会と合同合宿をすることになったんだ」


「合同合宿?」


「うん。手頃な合宿所がないから生徒会に相談したら、会長がプライベートビーチで一緒に合同合宿をしないかって提案してくれたんだよ。夏の思い出にもなるし、費用は全部生徒会がもってくれるっていうしね」



さすがは策士セイヤ。

生徒会に乗ることで全ての費用から場所まで確保してしまうとはやるな。



「それにしてもリムジンは凄いな」


「これも快適な移動ができるようにって会長が用意してくれたんだよ。さすが東堂グループだよね。スケールが違うよ。あっ、だから今回は接待も兼ねて男子は三つのグループに分けて車に乗ることになってるんだ」



なるほど、俺たちはコンパニオン的な扱いってことかな?

元の世界でいう綺麗どころを連れていく的な?


高校生でそれをしてしまう東堂先輩って……



「ヨルは、会長と最上先輩。あと森さんと一緒に先頭のリムジンに乗ってね」


「セイヤはどうするんだ?」



セイヤは女性が怖いと感じている節がある。

大丈夫か心配になって問いかける。



「僕は西松清江先輩と倉峰さんと同乗するよ」


「大丈夫か?」



倉峰の名前を聞いて、一抹の不安を感じる。



「大丈夫大丈夫。剣さんも一緒に乗るからね。何かあれば守ってもらうよ」


「随分と信用してるんだな」


「剣さんは真面目だからね。信用できる人だよ」



セイヤ自身が、信用できると思っているなら問題ない。



「わかった。何かあったらメッセージしろよ」


「はいはい。ヨルは心配しすぎだよ」



セイヤが大丈夫というなら、これ以上俺が何かを言うことはない。



指定されたリムジンに向かうと上品な年配の女性が立っていた。



「あなた様が黒瀬夜様ですか?」


「はい。僕が黒瀬夜です」


「私は東堂麗華様付きの執事をさせていただいおります。セリーヌ・浜と申します。此度は運転をさせていただきます。」


「よろしくお願いします」


「はい。どうか、お嬢様をくれぐれもよろしくお願いします」



丁寧に頭を下げられて、扉を開けてくれる。

セリーヌ・浜さんに一礼して開いてくれた扉から乗り込む。



「お邪魔します」



森さんも俺の続いて乗り込み隣に腰を降ろす。


車の中には、会長と最上先輩が待ってくれていた。



「まぁまぁまぁまぁ。久しぶりですね。黒瀬君」


「お久しぶりです。黒瀬君」



会長はにこやかに。

最上先輩はモジモジと恥ずかしそうに挨拶をしてくれる。


二人と会うのは部活申請との時以来なので、随分と久しぶりな気がする。



「お久しぶりです。今回は応援団の合宿に会長の別荘を貸していただけるそうで。ありがとうございます」


「ふふふ、全然良いのよ。皆さんがレベルアップすることで、青葉高校がますます発展できることはすでに証明されていますからね」


「そっそうですね。皆さんの動画の再生回数が、それはもう凄いことになっています。トップnewtubebarのヒデブンさんも注目しているって言ってましたよ」



最上先輩が興奮気味に伝えられた情報は、俺がこの世界に来てから拝見させもらっている。少しおデブなnewtubebarさん。


エンターテインメント性が高くてついつい見ちゃうんだよな。



「ヒデブンさんって誰だべ?」


「私も存じ上げませんね」



田舎から出てきたばかりの森さんと、超お嬢様の会長はヒデブンさんを知らないらしい。



「えっと、ネットの動画投稿サイトで凄く有名な方です。僕も拝見させてもらっています」



最上先輩が二人が知らないことに愕然としていたのでフォローを入れておく。



「そうなのね。私も応援団の動画を拝見させてもらっています。水泳部にバレー部。次はどこに行くのかいつも楽しみですよ」


「いやいや、僕らはまだまだ練習不足なので、今回の合宿でレベルアップ出来ればと思っているんです」


「黒瀬君は、男性であっても努力を怠らないのね。素敵だわ」



真っ直ぐに褒められると気恥ずかしくなってしまう。


ふと気恥ずかしくて車の中に視線を向ければ、リムジンの内装は人が四人寝られるぐらいのソファーとテーブル、テレビに、冷蔵庫まで内蔵されていた。



「そっそんことよりも今回はどこまで合宿に行くんですか?」


「千葉にとてもいいところがあるのよ。皆さんのレッスンに使える宿も手配しているわ。それに私たち生徒会は夏の慰労会もかねているの」


「慰労会ですか?」


「ええ、私も三年で今年が青葉高校最後の学園生活です。ですから、後輩の子達に思い出をプレゼントしたいと思ってね」


「そうだったんですね。優しいんですね」



千葉まで二時間ほどの道のりを、会長や最上先輩と話しながら楽しく向かうことが出来た。


途中、会長のダイナマイトなバディーが揺れ動く光景は眼福でした。


たまに森さんの的外れな回答も会話を盛り上げる一因になってくれて、気楽な旅行の始まりとなった。

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