sideボディーガード ー 1
【森多恵】
ワタスのいた田舎は男の人が存在しない世界でした。
畑仕事と学校、それと柔道だけがワタスの世界。
学校での男女比は先生や街人を入れても、0/100
ワタスには不満はありませんでした。
お母さんが大好きで、友達やライバルたちと過ごす日々はワタスにとってかけがいのない思い出たちです。
そんなワタスの世界を一変させる出来事が起きたのはワタスが高校生の時でした。
年頃になると、友達がどこからともなくHな本を入手してきました。
とても古い雑誌の切り抜きで、そこに映っていたのは黒髪の綺麗な男性が上半身ヌードで映っていたんです。
ワタスは友達が貸してくれたHな本が恥ずかしくて見れんくて顔を手で隠しました。
それでも机の上に置かれたHな本が気になって気になって……チラリと見ては本を閉じる日々を一か月ほど続けて、意を決して本を開きました。
そこにはワタスの知らない男性の情報がたくさん書いてありました。
男性の頭は髪が無くなる
男性の胸は膨らんでいない。
男性の手は硬くてゴツゴツしている。
男性の股の間にある〇〇〇
男性の脛には毛が生えている
読めば読むほど手が止まらくなりました。
友達に雑誌を返すことも忘れて一年間、私は何度も雑誌を読み続けました。
友達が家に遊びに来た際に持って帰ってしまったのが悔やまれます。
でも、私は雑誌を読んだ日から本物の男性に会いたいと思うようになりました。
気持ちを発散させるために柔道に打ち込んでいる間に高校生チャンピオンにもなりました。
高校を卒業する前に、先生に今後のしたいことを相談しました。
「せんせい!ワタス、男の人の役に立つ仕事につきたいんです!」
「そうか、タエも女なんやな。なら、タエ。
今度男性を守るメンズガードって言う仕事が出来るんや。
公務員の試験と保護官の資格を取る必要があるけど。
今から勉強すれば2級なら取れるかもしれん。やってみるか?」
「やります!」
今まで柔道ばかりで、勉強が苦手な私は公務員試験を落ちました。
その代わり保護官2級にはどうにか受かることが出来たので、警備会社ならば務められると男性がいる都会の警備会社の面接を受けました。
大手の一つであるバルキリー警備保障に内定を頂き都会へいくことが決まりました。
ただ、ワタスの心残りは、お母さんやお祖母ちゃんをおいて都会に行くことです。
「あんたのしたいことをしたらええ」
「そやそや、タエちゃんは好きに生きればええんやで」
私の夢を応援してくれる二人に涙が出そうになります。
「もしも、都会でお婿さんを見つけることが出来たら、絶対に連れて帰ってくるのよ」
「そやそや、タエちゃんは絶対に男を連れて帰ってきたらええんやで」
そう言ってくれたお母さんとお祖母ちゃんに見送られて私は田舎を出ました。
都会についたワタスは大きな駅で道に迷い。
大勢の人に酔って、泊まるはずの社宅に着くのに凄く時間がかかってしまいました。
それだけではなく、社宅についた後はスマホの契約やら、都市ガスや電気を管理人の人に聞きながらバタバタと引っ越しを終えるまでに疲れてしまいました。
やっと落ち着くと田舎が恋しくて、近くの大きな公園を探して散歩に出た。
都会の公園は森のように木々が生い茂っていて、都会にもこんな場所があるんだとワタスは嬉しくなりました。
暗闇の中で人影が見えて、田舎の癖で挨拶しようと思って近づいていく。
近づくにつれて輪郭がハッキリしてきて、ワタスはあまりの驚きで大きな声を出してしまった。
「おっ男!!!」
「うん?誰?」
私の声にふり返った男の人は、雑誌で映っていた人よりもカッコイイ綺麗な人だったべ。
「なっなんて!メンコイ、ミステリアスイケメンだべ!」
あまりにも綺麗でワタスは方言が止めることが出来んくなってしまったべ。
「えっと……何か御用ですか?」
あわわわ、男性が警戒してしまうべ。私さ冷静になれ。
「わっワタスは
いきなり何言ってんだべ!!!!
初対面の男性にお願いするなんて、図々しいべ。
「なんですか?」
男性に問いかけられてもう止められんべ。
「あっあんたの」
「僕の?」
「手を!握らせてください!!!」
言ってもうたべ。言ってもうたべ。
もう止められん。
雑誌で見たんだ。男性の手はゴツゴツしてるって!
ワタスらも柔道してて固くはあるけど。
男性の手はもっとゴツゴツしていて固いって
「……はっ?」
うわ~うわ~うわ~戸惑ってるべ。
でも、行ってしまったから止められんよ。
「ワタス、男性にあったら手を握らせてもらいたかったです。
男性の手は女性と違って、ゴツゴツだったり、固いって聞いてずっと触ってみたかったんです」
ワタスは渾身の想いを込めて頭さ下げたよ。
どうかワタスの願いを叶えてけろ。
「……別にいいよ」
ミステリアスイケメンから、ワタスの方へ近づいて着れくれたよ!!!
差し出される手を見てワタスの興奮はMAXだよ。
「うわ~うわ~うわ~いいんですか?ありがとです。ありがたやありがたや」
母ちゃん、祖母ちゃん、都会に送り出してくれてありがとう。
私は夢がかなったよ。本当にありがとうありがとう。
ワタスは深呼吸をしては恐る恐ると言った感じで手を出した。
最初はチョンチョンと男性の手をつつく。
「うわ~うわ~うわ~本当に固いんだねぇ~しかもおっきい」
男性が手を引っ込めない!本当に触ってもいいんだべ。
ワタスは思いっきり彼の手を握って硬さを確かめる。
本当に固いんだね。
しかも、この男の人……凄く強い。
今まで柔道をしてきた中で一番強いって感じる!
「えっと、初めて触った感想はどう?」
男性に感想を聞かれて、ワタスの頭は手のことでいっぱいになっちゃうよ。
「えっとな。えっとな。すっごいよかったよ~なんか幸せってこういうことを言うんだろうね」
「そう、ならもういいかな?」
「んだ。ありがとな。男性はやっぱ優しね~~。よし、私、仕事頑張れそうだよ」
ワタスは都会に来て、ホームシックになってたよ。
でも、男性の優しさを知ってしまったら、明日から頑張ろうと思えたよ。
「仕事?」
「そうだよ。私、都会に仕事しに来たんだよ。まだこっちの話し方とか言葉は慣れんから、ちょっと勉強しないとなぁ~。でも、都会に来た日に男性に会えるなんて運がいいべ~」
男性と話すって楽しいね。
話しやすいし、ミステリアスイケメンだし、本当にこれが幸せなんやね。
「えっと、森さんはどうして公園に?」
「明日から、初出社なんだけどね。なんだか緊張してきてさ。田舎の自然が恋しくなってなぁ~この公園は広いしいいねぇ〜」
思いっきり両手を広げて息を吸う。
男性も釣られて同じことをしている。
「うん。ちょっと変な匂いもするけど。やっぱり自然はいいべ~」
最高だべ!
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