sideボディーガード ー 2
【森多恵】
深呼吸すると変な匂いがするだよ。
やっぱり都会の空気は美味しくない?
「なっ!」
男性が驚いた声を出したので、ワタスは視線を向ける。
「へへっへへ!男だ!男がいるぞ!」
「男だ!ヒャッハー!」
都会の女?が厚化粧をして男性を囲んでいるべ。
「あっあんたらなんだべ!男を囲んで何する気だ!」
私は驚きと男性への無礼を働く女たちに怒りが湧いてきたべ。
「はっ!女は〇ね!私らは今からこの男といいことすんだ!」
「そうだそうだ。田舎臭いお前とは違うんだ!ここを拠点にして、あ~しらはもう処女じゃねぇ!」
「そうだ。もう両手で数えるだけ男を襲ってやったんだからな」
ワタスの怒声にもひるまない都会の女?たちが、今から男性を襲うと言う。
「襲う!あんたら男の人にそんなことしたら、なんね!男の人は守る対象だよ」
ワタスは怒りに任せて都会の女C?の肩を掴んで投げ飛ばした。
開いたスキマから男性を救い出して後ろに隠す。
「大丈夫だ!絶対に男の人はワタスが守る!」
「え~聞いた?ワタスだって!これだけから田舎者は!?って感じ」
ワタスの方言をバカにしてくる都会の女B?は戦い慣れしていない様子で、大振りで殴るために腕を振り上げる。
男性が前に出ようとするが、ワタスは男性を止める。
「大丈夫!下がって!」
相手の腕を掴んで投げ飛ばした。
「えっ?」
「ワタスはちょっと柔道には自信があるんだよ」
状況不利と見た都会の女A?が逃げようとするので、ワタスは後ろから捕まえて締め落とした。
「さて、こいつらは警察に連れて行くから、もう大丈夫だよ」
男性を守るために都会にきてよかったよ。
こんな女ばかりじゃ男性があぶねぇ。
「凄く強いんですね」
男性から感心した声をかけてもらえる。
「そんなことねぇだよ。でも、私は頭もよくねぇから強くなって、男の人を守る仕事をしようと思ってるんだぁ」
自分の夢を語るのは恥ずかしいけど。褒められるのは嬉しいな。
「えっと、俺の名前は黒瀬夜っていいます。助けて頂いてありがとうございます」
彼は強い。強いのに、助けてもらってお礼が言える凄い人だ。
男性とか関係なく人として、ワタスは凄いと思った。
「黒瀬君か~本当にあんたは良い人だね。さっき手を触らせてもらったから分かるけど。あんたも結構強いよね。余計なことしたかと思ったけど。ちゃんとお礼を言ってくれて。嬉しいな」
本当に嬉しいべ。ワタスが憧れた男性はこんな人だ。
黒瀬夜君。彼のような男性のためにワタスは働きたい。
彼を守ってあげたい。
「とりあえず、公園の外に交番があるので、そこまで一緒に行きましょうか」
「そだね。さすがに三人は一人で連れて行くの辛かったよ」
黒瀬君に手伝ってもらって、交番に痴女たちを連れて行くと表彰されるやら、インタビューを受けるやら色々大変だったけど。
素敵な男性と出会えたことはワタスにとって最高の思い出になったべ。
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初出社の会社では、ニュース報道を褒めてもらったり男性を救ったことで箔がついたなど。先輩たちの覚えも良くて、みんな良い人ですぐに馴染むことが出来て嬉しかったよ。
そんで「私が社長のSEIです」「副社長のYUIだよ」
新人の入社時に社長と副社長が挨拶してくれたのは驚いたよ。
SEIさんは田舎に住んでるワタスでも知ってる有名人だよ。
柔道の遠征で試合に行くときに、コンビニの雑誌や化粧品のモデルさんなんかに使われてるポスターで見たことあるもん。
YUIさんもモデルさんとして二人で映ってる看板を見たことあるしね。
有名人にあったワタスはテンション上がったけど。
黒瀬君に比べれば驚きは小さかったけどね。
「あなたには特別な任務についてもらいたいの」
SEIさんから挨拶を受けて、すぐに仕事の話になった。
なんでも、今度創設される新しい部署に配属になるらしいんよ。
私は言われるがままに配属部署にいくと、ポニーテールに綺麗な上司の剣さんに出迎えられる。
「私達はこれから男子高校生のボディーガードにつく。少しでも若い者で構成されている。森さんは本日配属で研修もかねて任務にあたってもらいたいと思う」
「はい!」
「教えられる範囲は私が指導して教えて行こうと思う。よろしく頼む」
「よろしくお願いします」
そして、休日が明けて最初の仕事へで向いた先は大きな学園だったべ。
私は建物やグラウンドの大きさに圧倒されて目が回りそうになっただよ。
制服の帽子を深々と被って何も見ないようして剣さんの後に続いていった。
校長先生と担当する高校生の担任の先生に挨拶をして、いよいよ高校生に会いに行く。
配属されてすぐに男性の護衛に成れるなんて運がいいべ。
「次だ!」
剣さんから挨拶するように背中を押されて前に出る。
「はっ!二等保護官をしております。森多恵であります」
カチコチに緊張した私は顔を上げて挨拶をする。
「えっ?」
「あっ?」
私は少しだけ男性を見ようと視線を向けたところで気が緩んでしまった。
「えっうわ~メンコイミステリアス男子だべ!」
あの日の夜に見たときよりもハッキリと見えた黒瀬夜君はヤバかった。
また会えるなんて、これは運命だべ!
スパン!
「ウグッ!」
「申し訳ありません。当方の職員が不適切な発言を致しました。
彼女は昨日から入社したばかりで、まだまだ不慣れな新人なのです。
ですが、男性の護衛は我々も経験不足なため。少しでも若い彼女を今回採用させていただきました。
もしも不愉快に思われたなら、すぐに他の者と交代いたします」
やっちまっただよ!!!!
…………
「ぶっあははははは」
男子生徒の一人が笑い始める。
他の二人も笑い出して、最初に笑った生徒が私達を指さす。
「スパンって!メッチャいい音した」
「森さん。先日はお世話になりました。言葉使いも今のままで大丈夫です。それと剣さん。そんなに畏まらなくて大丈夫ですよ」
黒瀬夜君が優しく声をかけてくれる。
「しかし!」
「剣さん、俺の名前は黒瀬夜です。母さんの会社の人ですよね?」
黒瀬夜君が名乗ると、剣さんが畏まった。
「畏まられるのもわかりますが、僕等は学生です。
ずっと緊張感を持って行動しているわけではありません」
剣さんが緊張しているのがワタスにも伝わってくる。
「青葉高校は男性に対して、免疫を持つ女性が登校しています。
そのため校内はそこまで警戒していません。
ですが、僕等はSNSで顔が知れている恐れがあるので、登下校やそれぞれが外出時に臨んだときに護衛をお願いしたいと思っています」
黒瀬夜君の話を聞いて、一瞬だけ剣さんは考えるそぶりを見せて大きく息を吐く。
「……ふぅ~わかりました。森、先ほどは手を上げてすまなかった」
謝罪されたけど。悪いのはワタスです。
「ふぇ?全然です。痛くなかったですから気にせんでください」
「剣さん。森さん。どうぞこれから僕らの護衛をよろしくお願いいたします」
黒瀬夜君に握手を求められて、恥ずかしくなりながら握手をした。
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