第30話 トレーニング

夏と言えば……


海だ!

山だ!

ナンパだ!


と言いたいところだが……



「ハヤトさん!ヨル君!もう少し頑張って!」



俺は文学少年こと、ハヤトと共に母が経営するバルキリーグループのトレーニングジムにやってきていた。

トレーニングジム以外にも格闘術を教える道場もあり、護衛を務めてくれている森さんたちも利用している。



俺は小学校の頃に母さんに連れて来られた訓練所が発展した場所なので懐かしい。



「二人とも水分補給してください」



フィットネスウェアに着替えた森さんは隠れ巨乳だった。


声掛けや、運動指導をするたびに大きな胸が揺れて、ハヤトの視線を釘付けにする。



「ハヤトさん体力無さすぎだよ。そんなんじゃ女子から襲われたとき逃げられないよ」



美人巨乳の森さんがハヤトを応援する。

そのたびに胸が揺れる。

森さんの年齢は19歳なので俺の三つ上になる。

最近は都会女性に憧れてパーマを当て髪を染めた。

元々顔は色白で素朴な美人だったので、あか抜けた美人に変貌を遂げた。


ハヤトはあか抜けた森さんに見惚れて度々トレーニングの手を止めている。

イチカのことはいいのか?と突っ込みたくなる。



ハヤトには才能がある。



貞操概念逆転世界の常識では男子は草食系で貧弱だが!


ハヤトは見た目こそ貧弱で草食系に見えるが、その心には肉食男子の本能ともいえるムッツリスケベ心を持ち合わせている。



「ヨル君!動きが止まってますよ」



自分の得意分野であるスポーツをしているときの森さんは生き生きとした笑顔で発破をかけてくる。



柔道で鍛えた体は筋肉モリモリマッチョマンと言う感じではなく、しなやかで洗礼された綺麗な身体をしておられた。



強くて美しい女性。



母さんが好みそうな女性だと素直に思う。



「よし、二人とも今日はこれぐらいにするよ」



「「押忍!ありがとうございました」」



俺はハヤトと声を合わせて終わりの挨拶をする。



「じゃあハヤトさんは、シャワーを浴びてきてください。ヨル君はこちらへ」



最近はいつもの流れになりつつある。



大きな胸が逃がさないと言わんばかりに腕に当たる。

森さんの綺麗な顔が下から覗き込んでくる。



ここまで距離が近くなった理由が、これから始まろうとしていた。


それぞれがトレーニングウェアの上に柔道着を纏って道場へと移動した。



「さぁ!こい!」



意気揚々と構えを取る森さん。



俺はゆっくりと近づいていく。



森さんは警戒して、跳ねるように距離を取る。

狭い道場に逃げ場はそれほどなく。また、逃げていては戦いにならない。

ゆっくりと距離を詰める俺に森さんが意を決して飛び込んできた。



身長差が20センチもある体格差で、森さんの素早い動きが俺の道着を掴んで投げに入る。



一度の投げで体勢が崩れることはないので、二度、三度と森さんが技を仕掛けては体勢を崩そうと頑張るが、腰を低くして森さんの技を耐えきる。



「くっ」



疲れたが見えた森さんのスキをついて投げを入れる。



疲れて体勢を崩した軽い森さんの体重では、俺の力に抵抗できないで投げ飛ばされた。



「くっうぅぅぅぅぅ!!!また負けた!!!」



森さんは負けず嫌いなので、俺が屈んで近づくと……



「スキあり!」



と言って抱き着いてくる。



おっと、抱き着きじゃない。



寝技へと仕掛けてくるのだ。



だが、これはヤバい。



大きな胸に挟まれる腕。



汗ばみ甘い香りが強くなる森さんに十字固めを決められる。



「どうだ!?」



技が決まって嬉々とした表情を見せる森さん。



彼女の嬉しそうな顔を見るのは悪くない。



悪くはないが、これも勝負なので負けてあげるわけにはいかない。




「まだまだですよ」



俺は足を振り上げて一気に体を回転させる。



回転の勢いで腕を引き抜き、森さんの足を掴んで4の字固めに入る。



「イタっ!」



地味に痛い4の字固めを決めて森さんの反応を伺う。



「くぅぅぅ~」



降参したくなくて、ジタバタとする森さんは見ていて可愛い。

もっとイジメたくなるサディスティックな気持ちになってくる。



「う~もうダメ……降参だべ」



足が痛いのか、それとも負けたことが悔しいのか、半泣き気味の森さんに手を貸して立たせてあげる。



「ほら、泣かないでください」



俺は森さんのプニプニの頬っぺたに手を添えて、親指で潤んだ瞳を撫でる。



「ハウッ!」



森さんは突然顔を赤くして恥ずかしそうになる。

女性の顔にいきなり触るのはいけなかったかな?と思って手を放す。



「あっ」



「さて、そろそろ片付けて帰りましょうか?」



「おっ押忍!護衛させていただきます」



「はは、そんな畏まらなくても大丈夫ですよ。皆さんよくやってくれてます」



俺には森さんが専属の護衛として着いてくれている。



本当はいらないと言ったんだけど。

母さんが俺にもつけろと命令を出していたそうだ。



俺が必要ないと言ったせいで、剣さんになりに考えて一番新人である森さんが専属護衛として選ばれた。



「彼女は護衛としては未熟です。ですので、ヨル様の下で学ばせてください」



剣さんの物言いに断りづらくなり、受け入れることにした。


剣さんはセイヤの専属護衛として全体の指揮も取ってくれている。


ハヤトやヨウヘーにもそれぞれ護衛が付いているので、安心が出来るようになった。


そろそろ夏休みに入るので、なんとか間に合ってよかった。



楽しい夏休みをみんなで送りたい。


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