第25話 水泳大会

水泳大会が始まると、青葉高校は破竹の勢いで勝ちを重ねていった。

部長である水無瀬先輩は負け知らずで自由形を全制覇した。

100mは高校生の新記録まで樹立してしまった。




勝利者会見では……




「私には軍神が付いている。彼らの応援がある限り。私が負けることはない」




そういって男子応援団の宣伝までしてくれていた。




ヨウヘーは自分で作った曲以外にも、世界水泳で使われているロックバンドの楽曲なども用意していて、状況に応じて音楽を変えて応援を盛り上げ、俺たちも力が入った。





二日目には副部長の背泳ぎ、ユウナの平泳ぎでも、青葉は勝利を重ねて青葉高校は総合でも大勝した。





土曜日、日曜日と続いた大会はこうして幕を閉じ。




男子応援団の初依頼である、水泳大会の応援は大成功に終わることが出来た。




「黒瀬君。此度は応援ありがとう。君たちの応援は本当に私たちの力になった」




水無瀬先輩に、そう言って握手を求められた。




握手の中に小さな紙が入っていて、水無瀬先輩のmainのIDが記されていた。




「連絡待っているよ」




水着姿で魅力的な先輩に耳元で囁かれるのはヤバい。




他にも水泳部の女子全員と握手をして、感謝を伝えらえた。




「ハァー、ハァー、ハァー。こんなにも声出したの初めてだ」





男子応援団の部室に戻ってくると、ハヤトは重い荷物を運んだことで、息も耐え耐えになり、ベッドへとダイブしてしまった。




夏の間にハヤトと体力作りをするのも悪くない。




ヨウヘーは自分が作り出した楽曲が人に向けて発信することが出来て「興奮MAX!」とソファーへダイブした。




テンションアゲアゲになった会場とは打って変わり、緊張の糸が切れて片付けもそこそこに眠りについてしまった。




部室で休んでから帰ると言う二人とは対照的に……




セイヤだけは二人に比べて体力がまだ残っているようで、SNSの編集をすると言って片付けが終わるとパソコンを持って作業場になっているもう一つの部室に引きこもってしまった。




「おいおい、初めての依頼達成に打ち上げでファミレスとか行くんじゃないのか?」




全力でやり切った顔をして眠っている二人の邪魔するのも悪いと思い、それ以上声をかけることを諦めた。




「……今日は帰るか」




俺はセイヤに帰ることを伝えて部室を後にする。

セイヤは編集作業が忙しいようで、片手を上げるだけで別れを告げた。






校舎を出ると夕日が眩しく。





影法師がグラウンドへと伸びていく。





夏前の日曜日は、それぞれの部活も試合や練習などで、遠くの方から声が聞こえてきていた。





「ヨル」




名前を呼ばれて振り返る。





久しぶりに見る幼馴染はいつの間にか大人の女性へと変わりつつあり、美少女から美女へ美しさが進化している。





青色の髪は少し濡れて乱れていた。

部活のミーティングが終わってすぐに来たのか、息を切らせていた。




「ユウナ。今日はお疲れ。それと平泳ぎ1位おめでとう」




息を切らしているユウナが落ち着く前に声をかける。




こんなところでユウナに会うと思っていなかったので、何を話したらいいのかわからない。




中学の時だったら、ユウナが家に迎えに来て、たわいのない話をして、笑い合っていた。




成長して、お互いに異性になって、それぞれに忙しくなって疎遠になって……




自然に距離を空ければ、いつの間にかこの関係も懐かしい思い出になっていくと思っていた。




今、ユウナに会ったら……




「あっありがとう。今日も、応援してくれてありがとう。ヨルが私のこと見てくれて嬉しかった」




息を整えたユウナにお礼を言われる。

彼女にお礼を入れるのはいつぶりだろう?いつも怒られていた気がする。




「ねぇ、ヨル。最近、話せてなかったね」




ユウナは顔を逸らしながら、俺とは視線を合わせようとはしない。




「そうだな。ユウナも部活ガンバッてたみたいだしな。今回は初めてユウナの試合見たけど凄かったよ。ユウナって速かったんだな」




「まっまぁね。これでも1年ではエースだから。水無瀬先輩には自由形で勝てないけど。平泳ぎなら負けない」




ユウナはスポーツを通して色々の人と交流を深めている。




ユウナの世界は俺が見ている世界よりも遙かに広い。




「ねぇ、ヨル」



「ユウナ」




ユウナが何かを言おうとしていたけど。




俺はずっと思っていた気持ちを伝えることにした。




もしも、ユウナに出会っていなかったら言わなかったかもしれない。




だけど、今日のユウナを見て決心がついた。




このままじゃダメだ。





「何?」





「ユウナにはたくさん助けられてきた。



中学で誰からも話しかけてもらえない俺にユウナだけは変わらず話をしてくれた。



一人で塞ぎ込んでいる俺にユウナは毎日メッセージを送ってくれた」





俺はユウナに感謝している。




それを伝えたくて言葉にする。




「本当に、本当にありがとう。




ユウナがいなかったら俺は中学に行くことも出来なかった。




こうして高校に来ることも出来なかった」





ユウナは少しづつ顔を上げてくれる。




大きな瞳は夕日に照らされてキラキラと輝いて見えた。




「だから、今日をもって黒瀬夜は……











【青柳悠奈】から卒業します」










やっと伝えることが出来た。



俺はもうユウナがいなくても大丈夫。




親友も出来た。

好きな女性も出来た。




だから、ユウナは俺を負担に思わなくてもいいんだ。






「今まで本当にありがとう。



もう俺は大丈夫だから、ユウナはユウナの世界を生きてくれ。



俺は俺の世界を生きるから。



あっ、幼馴染として恋の相談は聞いてくれよ。



俺さ、好きな人がいるんだ。



今日の打ち上げを部活の奴とやろうと思ってたんだけどすっぽかされたからさ。



好きな人を食事に誘ったら行ってくれるって言うから行ってくるよ」




ユウナは呆然とした様子で俺の話を聞いている。



やっぱり何言ってるんだと思うよな。



でも、これが俺の気持ちだから伝えたかった。





「ユウナ。またな」




貞操概念逆転世界なら幼馴染が一番最初に恋人になる相手だと思ってたけど。




この世界は普通の貞操概念逆転世界なのに思ってたのとちがう。




夕日でもまだ暑い。もうすぐ夏がやってくる。




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あとがき



どうも、作者のイコです。


第一章 これにて完結となります。


ここまで読んで頂きありがとうございました。




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あとがきのあとがき



第二章 夏休み~二学期編



プロット制作中のため、出来次第投稿したいと思います。



第一章を書き上げることに集中していて、コメントを返せていない方、申し訳ありません。

誤字脱字報告もいただいておりますが、修正できていなくてすみません。



少しづつ時間を作って修正していきますので、これからも報告お願いします!!!



それでは第二章が書けましたらよろしくお願いします。


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