side生徒会 ー 1

【生徒会員】



三人の一年生が退室した生徒会室では、女子たちが思い思いの行動を開始していた。



食器を片付ける副会長。

自分の仕事を始める会計。

お客様を迎えた応接間の片付けをする書記。



男子が座っていたソファーに頬をスリスリしながら、たまにくんかくんかと匂いを嗅ぐ会長。



「いいですね~やっぱり男子が生徒会室にいる環境。是非とも実現したいです」



変態的な表情で、頬を高揚させた会長はなんともだらしない。

欲望に忠実な雌が思いっきり顔を出している。



「ハァ~だらしないですよ。お嬢様には婚約者様が居られるから、まだよろしいではありませんか?」



「キヨエさん。それとこれは違うのです。伊集院是人いじゅういんこれひと様はとても優しく。貧弱な男性とは思えないほど立派な方です」



レイカは、平凡な顔ながら上品な物腰と話し方をする婚約者の顔を浮かべる。

男性と言うだけで優遇されるこの世の中で、ご自身が平凡であることを理解しておられ、横柄な態度を取らない婚約者は悪い人ではない。



悪い人ではないが、面白味も感じられなかった。



「藤堂家の令嬢として、次期当主としてもう少し自覚をお持ちください。男女比率が年々悪化している世界で、高校にして婚約者が居られる幸福はお嬢様ぐらいですよ。この国では」




「キヨエさんは良いわよね。我が家に代々勤めるお家だから。格式にしばられることもなく。かといって人生に困ることもない。自由な男性を選べるのですから」



「ハァ~またわがままが始まりましたね。もう三年生なのですから、少しは自重されてはいかがですか?去年の前島君のときも同じことを言ってました」



「前島君は、結局中身が残念な殿方でしたので……今度こそ今度こそですわ」



「はぁ職権乱用も極めればですね」


キヨエがため息をつく職権乱用とは??生徒会のメリットは大きく分けて三つ存在する。



一つ・全学年の男子生徒全員の情報を把握することが出来る。



新聞部や調査兵団のように独自で調べるのはなく。

学校側が生徒会側に提供するのだ。

そのため入学当初から、本人や家族からの情報を知ることが出来る。




二つ・空き教室や学校全体で使える施設の把握とマスターキーを所持。



空き教室を使いたい放題。

物色したい男子が居れば、連れ込んでしまうことも可能である。


男性を襲うことは犯罪である。

しかし、相手が学園でも有数の名家出身のお嬢様ならばどうか?

貞操概念逆転世界であっても、将来が約束されていて、好まれる美の持ち主となれば男性側も悪い気にはならない。



三つ・生徒会に許される優遇措置。



生徒会に選出されると言うことは、成績最上位であることを意味している。

それは青葉高校の代表であり、誰もが競い合う餌として最高の褒美を用意されることを意味する。



彼女たちにとっての褒美とは、つまり【男性】への接触権利を意味する。



「そうは言いますが、私はまだ清い身体ですよ」



「そうでしたね。お嬢様は美しい容姿ではありますが、男性に好まれる体型ではありませんからね」



巨大な肉の塊に視線を向ける。

貞操概念逆転世界では、男性は気弱で脆弱。

己から行動しない草食系男子ばかり。



また男性はプライドが高い者が多く。



自分より脆弱な女性を好む節がある。



そのため、女性の象徴たる巨大な胸や立派な身長などは好まれない。

逆に会計であるロリ少女こと、南夏帆のような体型ならば、小柄で脆弱。

つまり、貞操概念逆転世界ではもっとも好まれる体型を持つ一番人気だったりする。



「む~キヨエさんは。意地悪ですね。ですが、私は運命の殿方を見つけたのかも知れません」



「運命の殿方ですか?」



レイカは巨大な胸元を腕で持ち上げる。



「黒瀬夜君は、私の胸に視線を向けていました。それも嫌悪感を含んだ視線ではなく。もっと情熱的にいやらしく。私の胸を凝視してくれたのです」



「そんなまさか?」



「噂では、白金聖也君の方が気軽に話が出来て評判がよかったですよね?ですが、白金君はあまり私にご興味がないようです。ですが、黒瀬君は色々凄い方でした」



「それはまぁ凄い殿方だと私も思います」



キヨエは「ホッ」と熱を含んだ息を吐き。

黒瀬を思い出して頬を染める。

キヨエも所詮は女なのだ。

求める相手が現れれば肉食系女子の本能をさらけ出したくなる。



「カホもそれは思った。男子って細くて挙動不審でなんか頼り無いって感じがあったけど。あの二人は違ったね。白金君は堂々としながらも、こっちに気を遣う余裕があるし。黒瀬君は大きいし、エロい!」



草食系男子のタイプとされるカホは、男性から欲望を向けられることが多くある。



それは他の女性たちからすれば羨ましいことではあるのだが。

カホとしては好きでもない男性から受ける視線はうっとうしさを感じる。



だが、黒瀬からは自分だけでなく、生徒会メンバー全員に欲望を向ける視線を感じた。

自分以外にも、そのような視線を向ける男性は初めて出会ったので、興味が尽きない。



「みっみなさん。先ほどから黒瀬君の話ばかりですよ。生徒会に入るのは倉峰さんなんですからね」



真面目なテルミが注意するが、三人はニヤッと悪い笑みを浮かべる。



「そうですか。そうですか。黒瀬君の最初のお相手はテルミさんにお願いしようと思って居たのに、お嫌でしたら仕方ありませんね。

生徒会長である私が先にアプローチさせていただきます」



「いえいえ、会長。会長は婚約者が居られるので、ここは藤堂家お嬢様付き従者筆頭である私が対応したしましょう」



「え~ズルい。私も黒瀬君を抱きたい。私に行かせてよ」



三人がニヤニヤと悪い笑みを浮かべて、ツインテール美少女を追い詰める。



「くっ黒瀬君は、きっとシャイなので三人が行っては引いてしまいます!だから」



「「「だから?」」」



「私が仲良くなって、皆さんを紹介します」



照れたテルミがもじもじしながら宣言する。



三人はスッと立ち上がり、それぞれの仕事に戻っていった。



三人の様子に困惑するテルミが焦り出す。



「なっなんで何もいってくれないんですか?!」



「……いえ、お子ちゃまをからかったことを恥じただけです」

「ですね。テルミさんごめんなさい」

「テルミン。もうちょっと恋愛について勉強しようね」



三者三様でありながら、全員から憐れむ視線を向けられるテルミだけがあわあわしながら、自らの発言を恥ずかしがっていた。

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