第13話 部活見学一日目 運動部 後半

グラウンドがメチャクチャ広い。



サッカー部の練習場が二面

野球部の練習場が二つ。

陸上部やラクビー部にそれぞれ一つ。

他にもグランドが何面あるんだ?

ドームが立っていたり、山をトレーニングに改築されている施設まで存在する。

途中で数えるのを諦めた。



「本当にここは高校の施設なのか?どこかのヒーロー養成所とかじゃないよな?」



「何それ?ヒーロー?」



「いや、あのドームとか災害訓練用とか中に入ってたりしないかと思ってな」



いったい何人入れるのか分からないほど大きなドーム。プロの試合をすると言われても納得してしまう。



「ヨルって、想像力豊かだよね。災害用ってなんの運動訓練?

あれは、全国の高校が運動系の大会を開く夢の舞台。青葉ドームだよ。

パンフレットに書いてあったじゃん。時期をそれぞれズラして、全国から青葉ドームで全国大会を開くために建てられたんだよ」



職員室でもらったパンフレットにはウィンタースポーツの練習場と記されている。

ドーム内では、スピードスケートやフィギアスケート。

スキージャンプなんかも練習できる施設が入っているそうだ。



大会が開催される際は、一部を他校の更衣室や宿泊施設としても貸し出すこともできるようになっている。



「どんだけお金かかってるんだ?」



「それこそだよ。青葉は、国公認だからね。共学にするために莫大な予算と補助金が組まれてるんだから。だから他の高校よりも男子生徒の数が数段多いんだよ。普通の共学はせいぜい一学年に10人いれば多い方だからね」



本来ならば、男子の数がもっと増えて、女子と男子を別々に練習しても余裕な施設を目標にしたそうだ。

しかし、年々減り続ける男子によって、女子の入学数を増やすことで、施設を利用している。



「色々大変なんだな」



「そうだね。そんなことよりもどこを見て回るの?そろそろ日が傾いてきたから、行けても一つか二つだよ」



時計を見れば、そろそろ18時に差し掛かろうとしていた。

部活動をしているグラウンドはライトが付けられて、部活動はまだまだ練習をするようだ。



ただ、見学が認められているのは18時までなので、確かにあと一つぐらいしか見れない。



計画では女子に囲まれてチヤホヤされる予定だったが、体育館ではセイヤが取り囲まれ、ブール棟ではユウナを見て気分的に退室してしまった。



「全然、部活見れてないな」



「うん。だから運動系はマネージャーしかできないっていったじゃん」



美少年がプンプンと怒りながら腰に手を当てても、まったくご褒美感が味わえない。


こいつが女だったらと思うが、胸を見てもさっぱり膨らみを見て取れない。



「うん?なんか邪な視線を感じるんだけど?」


「気にするな。一番近い部活は?」


「この辺だとサッカー部かな?」


「なら、そこを見て帰ろう」



二人で一番近いサッカー場へ向かう。

100名を超える女子サッカー部は、ボールを追いかけて走り回っている。

汗が流れ小麦色に焼けた健康的な女子たちは、見ていて飽きない。



「青葉のサッカー部は強いのか?」



「ヨルは本当に何も知らないね。青葉のスポーツは全国でも常連校だよ。

特にサッカー。野球。ラクビーは常勝無敗って言われる程度には強いよ」



セイヤの解説を聞きながらサッカー場を見ていると、一際目立つ二人が目に入る。



一人はベリーショートの髪が特徴的。

大きな声で、他の子に指示を出す元気な女子。



もう一人は、肩まで伸びた髪をゴムで纏めた。

指示通りに走り回る女子。



「ラブ!いくよ!」


「シカ!来い!」



二人の連携は見事で髪をまとめた子がサイドギリギリを走りボールを運び。



中央を駆け抜けるベリーショートの子がセンタリングにヘッドを合わせてゴールを決めた。



「凄いよね。あの子たち、まだ一年生なんだよ」


「知ってるのか?」


「有名だからね。サッカー部の次期エースと司令塔だって。パンフレットに乗ってるよ」



パンフレットを開けてみれば、一年生からレギュラーに選ばれた二人の名前が記載されている。



ゴールを決めた司令塔が、馬場鹿江ばばしかえ

走ってボールを運んだエースが、宗田愛そうだあい



二人がハイタッチをして、一息ついたところで馬場さんがこちらに視線を向ける。



「えっ?えええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえぇぇぇぇぇえぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」



絶叫に近い大きな声でサッカー場全体の視線が馬場さんに集まる。



「ビックリした!この馬鹿!いきなり大きな声出すな」



「だって、だって、だって!」



先ほどまでのカッコイイ馬場さんが女の子らしくモジモジとし始めた。



相方の宗田さんが異変に気付いて馬場さんの視線を追いかける。



「あっ!」



宗田さんと目が合った。



二人が急いで駆け寄ってきた。



「あっあの私達一年でレギュラーしてます。宗田愛です」

「馬場鹿江です」



先ほどまでは馬場さんの方が引っ張っていたのに、男性を前にすると宗田さんの方が前に出てきた。



「今週末インターハイの予選があるんです。よかったら応援に来てくれませんか?」



宗田の提案にセイヤと顔を見合わせる。

部活見学に来ただけなのに応援を頼まれた。



頑張っている女性を応援するのは悪くない。



「うんいいよ。応援に行かせてもらうよ」



俺が返事をする前にセイヤが笑顔で応じている。

さすがは陽キャラ超絶イケメン主人公だ。

行動がスマートで様になっている。



宗田さんたちと話していると、他の女子部員も俺たち姿に気付いたようだ。

無言で100人近い部員が押し寄せてきていた。



「……いくか」


「だね」


「二人とも頑張ってね」


俺は最後に二人だけ聞こえる声で応援を口にする。

二人とも背中を向けてしまって返事はなかった。



もみくちゃになる前に、押し迫るサッカー部を全力で振り切って帰路へとついた。



途中に何度か、フラッシュが光ったような気がしたが気のせいかな?

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