第12話 部活見学一日目 運動部 前半


生徒会勧誘というイレギュラーは起きたが、5月に入ると本格的な部活勧誘が行われる。



スポーツ推薦などで入学が決まっていた者は、三月から練習に参加するそうなのだが、それ以外の者達は5月に部活動を決めることになる。



男子も部活動を決めることに例外は無く。



女子スポーツ部の男子マネージャーなども存在する。

全国大会が開催されるのは女子だけで、強引なスポーツ女子に引っ張られて断ることが出来ない男子マネージャーを引き受ける、男子なども例年数名は出るそうだ。



運動部のマネージャーになることも確かに考えた。

スポーツ女子ならば、文系女子よりも本能に忠実な気がしたからだ。

そうすれば引き締まった身体を持つ女子たちが、あり余る体力を俺へとぶつけてきくれるかもしれない。



スポーツ部室で数名の女子から、囲われて無理矢理……



「ねぇねぇ、ねぇってば!!!」


「うわっ!なんだ。セイヤ!」



夜の部活動について妄想しているところをセイヤに邪魔されてしまった。



「さっきから呼んでるんだから無視しないでよ。それで?ヨルはどこの部活に入るの?僕はいくつか見学に行ってから決めようと思うんだけど。まだ決まってないなら、一緒に見学行かない?」



ゴールデンウィーク前から病院で検診を受けてきたセイヤは、体力が有り余っているようだ。



「ああ、別にかまわないぞ」


「よし。じゃ行こうか?それでどこから行く?」


「誘っておいて決めてないのかよ」


「えーこういうのは色々回るから楽しんじゃないか。適当にだよ。適当に」



軽いノリで話を続けるセイヤに付き合うのは楽ではない。


ふとクラスメイトの女子たちから見られている気がするが、視線を向けると一斉にクラスメイトたちが、黒板へと体ごと向いてしまう女子までいた。



貞操概念逆転世界なのかと疑いたくなるが、ここ最近ではこれが日常だと思えばあきらめもつく。



「ねぇ、何してるの?いくよ」


「おう」



部活動の見学と言っても、さすがはマンモス校であり。

パンフレットだけでも一冊の雑誌のように厚みがある。



自分がやりたいことを見つけるために、職員室でもらえる【部活及び同好会一覧】は青葉高校の名物だそうだ。



「うわぁ~凄い数あるね。運動部だけで300を超えてるよ」



カポエラ部とか、カバディ部なんていうマイナー部から、サッカー部や野球部などの有名どころまで運動部はやっぱり多い。



「よくわからない部活も多いね」



地球征服発案部や、男子見守り隊部なども部活動として認められていた。



「情報調査兵団だって、ちょっと名前がカッコイイね」



IT関係の部活だろうか?結構バラエティーに富んでいて、パンフレットを見るだけで面白い。



「それでどこから行く?」


「一日じゃ全部回れなさそうだから、とりあえず今日は運動部かな?」


「大丈夫?男子は大会とかないから、マネージャーだよ?」



先ほど妄想したことが現実になるのなら、マネージャーも悪くない。



「まぁ行ってみないとわからないだろ。それに身体動かすのは好きなんだ」


「うーん。僕はちょっと運動苦手なんだけど」


「別に俺たちが運動するわけじゃないだろ。見るだけだ」


「見るだけ?本当に?まぁそれならいいけど」



いざ、行かん。



運動部ハーレム



………


………………



「わかってたよ」



………………


………



「セイヤ君!バスケ部のマネージャーになってよ!」

「何言ってるのよ。剣道部に来て!後悔はさせないわ」

「いやいや、卓球部こそ、セイヤ君が必要です」

「バレーは一番部員が多いの!マネージャーなら内に来て」

「バド部はいつでもセイヤ君歓迎だよ」



体育館が第一から第四まであるのだが、それぞれ室内運動部の女子たちがセイヤを求めて集まってきた。



あれ?ここはどこ?本当に貞操概念逆転世界?



俺はそっと体育館を離れた。



セイヤと一緒に部活見学はダメだ。



女子が全てセイヤに寄っていく。



「ヨーールーー!!!どうして置いて行くの!!!」



どうやって女子たちから逃げてこれたのか、セイヤが体育館から走ってきた。



「……楽しそうだったからな」


「えっ何?もうヒドイよ。女子ってパワフルだよね。もみくちゃだよ」



よし。こいつを殴って俺は家に帰って泣こう。



「ふぅ~次はどうする?うん?どうしたの拳なんて握って」



「ハァ~なんでもない。体育館の近くにプールがあるらしい」



「え~また運動部?水泳と水球とか、めっちゃ力強そうで恐いんだけど」



飛び込みとか、シンクロとかメッチャ綺麗だろ。


それに水着美女とか、見てるだけで癒されるっての。



「いくぞ」


「え~本当に行くの?ハァ~ヨルは運動部好きなんだね」



嫌がるセイヤを引き連れながら、プール棟へと入っていく。



さすがはマンモス校だけあって、様々な競技が練習できる施設が網羅されている。



「うわ~あんな高いところから飛んで凄い!」



10mの飛び込み台から回転をしながら落下する女子は美しかった。



プールを見下ろすことが出来る廊下側から競技を見ているので、競技をしている女子たちに気付かれることなく見学が出来る。



プール棟には、



50メートルプールが一面。

25メートルプールが二面。

更に飛び込み用プール。



四つのプールが一つの施設の中に作られている。



「それにしても凄い施設だよな」



「だね。青葉高校が人気なだけじゃなく。全国でもスポーツで有名になれる理由がわかるよ」



競泳プールを見下ろす位置に来て、幼馴染の【青柳悠奈】を見つけた。



高校に入学してからは何かと忙しく顔を合わせる機会が減っていた。



「おっ、あれってヨルの幼馴染さんだよね?声かけなくていいの?」



プールからはこっちに気付くことはないのだろう。



一生懸命に泳ぐユウナを見るのは小学生以来で、中学時代は色々と距離が出来てしまっていた。



ガンバル、ユウナの姿はカッコイイと思った。



「声をかけるのはやめとくよ。行こう」



「いいの?」



「ああ、次に行こう。次はグラウンドだ」



「えーまた運動部?今日だけで運動部全部は無理だよ!!!」



嘆くセイヤを引っ張ってプール棟を後にした。




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