side妹ー1 私の兄は完璧です

【黒瀬月】


私は学校でも生徒会長を務め、スポーツに勉強。文武共に励んできた。


それもこれも私には兄がいるからだ。


兄がいるからどうだと思われるかもしれないが、兄がいるということは群がるハイエナ共を蹴散らせるだけの力が必要になるということだ。



知っているだろうか?男性が少なくなった昨今。

犯罪を犯すのは女性ばかり。ターゲットになるのは男性ばかりなのだ。



か弱く守らなければならない男性は、保護対象が法律で決まっている。



そうだ。兄を守ることが私の役目であり、私の生まれてきた使命と言ってもいい。



そのため、他の女共に舐められるわけにはいかない。



幸い、兄は軟弱な男性とは違う。


幼い頃から母によって鍛えられたことで、肉体的には健康で丈夫だ。しかし、私は失念していた。



黒髪黒目で大人びた顔立ちと雰囲気に、鍛え上げられた肉体を持つ兄。



この世界のどこを探しても、そこまでと断言できる!!!



兄以外の男性はどんな人がいるのかと、new tube を見たことがある。


そこには太った男性が、笑顔を浮かべるだけで再生回数を増やしていた。

男性に面識のない女性たちからすれば、最高のオカズ画像なのだろう。



しかし、男性らしさを出そうとして太っているだけで、あれは紛い物でしかない。



兄は異常なのだ。カッコ良すぎる!!!



男らしくない!!!普通の男は女性に守られるべきか弱い存在なのだ。



小学生までの兄はとても優しくか弱かった。

私を妹として可愛い可愛いと宝物のように扱ってくれた。

母の教育が特殊であったため、幼い頃から訓練を受けてきた。

辛かったが、兄の優しさが私を救ってくれた。



そんな救いである兄が、中学生になってから少しずつ変わり始めた。

明るくて優しかった兄が塞ぎがちになり、あまり会話をしないようになった。



男性の知識が少なかった私は男性について勉強するようになり、学校の先生にも質問をした。



「先生、お兄ちゃんが最近話してくれないの。どうしてかな?」



先生は私の質問に対して諭すよう。



「そうですね……男性はとてもデリケートな生き物なんです。思春期を迎えた女性たちが面白半分で男性を傷つけてしまうことがあります。

そういうことがあると、男性は女性恐怖症になってしまうんですよ。

家から出られなくなることもあると言われています」



他の女どもが兄を傷つけた?先生の話を聞いて、私は怒りが込み上げてきた。


私の大切な兄を傷つける奴はどんな奴なのか?兄が通う中学に潜入して調査をした。


しかし、兄に話しかける女は誰もいなかった。



兄が通う中学は共学だ。

女子は男性への免疫力が高いことが面接で求められる。

男性への配慮をしていることは分かるのだが、疑問が浮かんでくる光景だった。



どうして兄の周りには誰も近寄らないのだろう。



私から見ても兄はカッコイイ!!!間違いなく世界で一番カッコイイ。

中学生とは思えない大人びた顔立ち。切れ長で鋭い目つき。鼻が高く。

男らしい顔つきというのは兄のためにある言葉だ。



他の軟弱でひ弱な印象しか感じられない男性とは違う。

鍛えられた体に抱きしめられる妄想を何度したかわからない。



欠点と言えば、優しすぎるが故に少し話し下手なところぐらいだ。



あの鋭い瞳が私にだけは優しく笑いかけてくれるのだ。

そのたびに妹であることを忘れて、私の女が疼いてくる。



「あっそういうことか」



それは一人の女子生徒が兄に向ける視線で、私は気づくことができた。

女子数人が、兄に対して視線を向けときだ。

窓の外を眺めている兄の横顔を見ては顔を赤くして視線を外す。


兄は嫌われているわけじゃない。


むしろ……



「これはあれだね。やっぱりお兄は私が守らないといけないんだ」



調査を終えた私は家で兄の帰りを待った。


兄は中学生になってから口数が少なくなり、妹である私とも滅多に会話をしなくなった。


でも、今日の私はいつもとは違う。



「おかえり。ねぇお兄。最近のお兄ってなんかキモイよね」



リビングに入ってきた兄に、私は悪口を言う。

色々悪口を考えたが、容姿は完璧。性格も優しい兄の悪口が浮かんでこなかった。

だから、キモイっていうことぐらいしか言えないなかった。



「えっ?」



私から突然、悪口を言われるとは思っていなかったのだろう。

兄は戸惑った顔をする。兄の戸惑う顔を始めてみた。

いつものカッコイイ顔とは違い。兄が戸惑った顔はなんだか可愛い。



「だって、最近のお兄ってオドオドしているし。前見たいに明るく話さないし。やっぱりキモイよ」



最近、思っていたことを告げながら悪口を言う。



「うん……ごめん」

「ハァー?なんで謝るの?マジでキモイんだけど」



どうしてだろう?本当は思っていないのに、兄が気弱そうに謝るとイラっとしてくる。

男らしい顔が悲しそうな顔になり軟弱な他の男と同じような気がする。

だから、思ってもないのにキモイを連呼してしまう。



「機嫌悪い?何か怒らせることした?」

「別に悪くないし。いい?お兄はキモイんだから、もう誰とも話さない方がいいよ。それに外にも出ない方がいいかもね」



吐き捨てるようにリビングを飛び出した。


私は兄に思春期の反抗期のような態度を取った。


それには理由がある。


兄はカッコイイ。


間違いなく他の軟弱な男たちとは一線を画すほどのカッコ良さを自覚していない。

このままでは、余計な女たちが群がってくるかもしれない。


私が守らなくちゃ。



「もっとキモイって言って、女と話さないようにしないと。ユウ姉にも協力してもらおう」



兄と同じ年の幼馴染に協力してもらう。

お母さんにもお兄ちゃんの調査報告をしてキモイと言ってることを伝えておこう。



これは私達家族が兄を守るための聖戦だ。



手始めに、兄のクラスメイトたちとの格付けを済まさなければならない。

絶対に兄に手は出させない!!!


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