第3話 卒業式 と スポーツJD
ユウナに誘われて出席した卒業式は、意外に胸に来るものがあった。
卒業生総代を読むユウナ。
在校生代表で挨拶するツキ。
二人の姿を見ただけで、なんだか感動してしまう。
他にもクラスメイトと最後のクラス撮影を撮る際に、俺を真ん中に左右を男子に固められ、女子たちがそれを包み込むように配置されて写真を撮った。
出来上がった写真では、ほとんどの女子が涙を浮かべていた。
俺(ヨル)にはあまり中学思い出がないが、彼女たちは中学生活を楽しんでいたんだろう。
女子たちは、二人の男子に別れの挨拶などをしていた。
俺に話しかける女子は存在しない。
卒業式だと言うのに誰からも声をかけられない。
ここまで避けられていると涙が出そうになる。
「お兄。帰るよ」
やっと声をかけてくれたのはツキだった。
あまりの嬉しさに自然とツキの頭に手が伸びて、ポンポンと頭を撫でてしまう。
「なっ!ちょっ!そういうのは外でしないで!」
ツキは周りの目があることに恥ずかしんだのか、小声で怒られてしまった。
払いのけられなかっただけ、まだマシかな?と思って周囲に視線を向ければ、クラスメイトの女子たちがこちらを見ていた。
兄妹で頭ナデナデなんかしてたからキモイと思われたかな?と思ったけど。
視線を向けると全力で視界を外されてしまった。
ユウナは、他の友達と別れを惜しんでいたようで、母さんとユウナのお母さんが連れてきた。
家族や幼馴染以外の女子からは避けられる悲しい卒業式を終えた。
自分は家族たちからもキモいと思われる存在で、ヨルは気づいていなかったのだが、クラスメイトに嫌われていたのだろう。
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家族や幼馴染だけでなく、クラスメイトからもキモイ認定をされていたことを理解しても人生は続いていくのだ。
病気で死んでしまった前世のことを想えば、健康的でそこそこイケメン。
自分が望む貞操概念逆転世界にやってきただけでも幸福なことなんだ。
いつか出会う俺を求めてくれる女性のためにも、体型を維持する必要がある。
学校が完全になくなったこともあり、ランニングを始めた。
一週間も続けていると、10キロ走っても疲れないハイスペックな体に嫌なことも忘れられることが出来た。
「やぁ、またあったね」
声をかけられて、振り返る。
「おはようございます。蘭さん」
振り返った先には、ポニーテールにモデル体型。
スラっと高身長の美女が体のラインを強調しているランニングウェアを身に纏って立っていた。
「おはよう」
三つ年上の
入学を控えたこの時期に互いに体を動かしているうちに挨拶から始まり。
今では一緒にトレーニングをする仲になった。
「ランさんは早いですね」
「毎日走ってるからね」
ランさん、中、高と陸上部で長距離ランナーをしていたそうだ。
大学は駅伝で有名なところに推薦入学が決まっていたので、俺とは違って走ることをやめることはないのだろう。
「専門ですからね。俺は太らないための自主訓練ですよ」
「そういって訓練をサボっていたら、すぐに太るよ。今日も一緒に体操と激しめのトレーニングをしようか」
強引なところがあるランさんは、俺の両手を取って運動を開始する。
いつもの行動なので勘違いすることはないが、両手を取られるとドキッとしてしまう。
引っ張り合うようなストレッチや背中を合わせて互いに伸ばしあう。
一通りのストレッチが終われば、今度はランさんが考えた筋トレを始める。
最初はランさんをお姫様抱っこしてスクワット。
美女を抱き上げられるなんて、ご褒美でしかない。
ランさんは真剣な顔で腕を組ん姿勢のまま抱き上げられている。
「重りになるダンベルが無いからね。仕方なくだよ」
スクワットが終わると腕立て、腹筋と続くのだが……腕立てをすれば、背中に柔らかなお尻の感触が伝わり。
腹筋をすれば、足を抑えられて胸が膝に当たっている。
「ほらほら、ペースが落ちているよ。気合入れて」
邪念がバレたような気がして、恥ずかしくなっていつも以上に回数を増やしてしまった。
「ヨルもだいぶ筋肉がついてきたわね。それに身長も伸びた?」
筋トレとランニングを終えて汗を拭きながらスポーツドリンクを飲んでいるとランさんが俺の体を見ていた。
身長は転生してから伸びた。現在では180を超えている。
「そうですかね?身長は最近測っていないのでわかりません。まぁ男は筋肉が付きやすいみたいです。それとも今まで運動してなかったからつきやすいのかな?」
シャツをまくり上げて、割れた腹筋を眺める。
ゴクリ……
唾を飲み込む様な音が聞こえてランさんを見れば、ドリンクを飲みながら空を見ていた。
腹筋を見てもらおうとめくったのに興味が無さそうで残念過ぎる。
モデル級の美女であるランさんに男らしさをアピールししょうと思ったのに上手くいかない。
「そういばヨルはどこの高校に行くんだったかな?」
次の話題に移ったので、腹筋をしまって肩を落とす。
「この近くの青葉高校です」
転生したときにはすでに受かっていた。
「なんだ、青葉に行くのか?なら私の後輩だね」
「ランさん、青葉なんですか?!」
青葉高校は女性にとっては、この地区で一番倍率が高い。
ネットの情報によれば、今年の倍率は50倍ほどだと書かれていた。
他県からもわざわざ受験しにくる子が多いと有名な高校なのだ。
「ハハ、私はスポーツ推薦だよ。これでも全国常連選手だからね」
スレンダーながらも、自己主張が激しい胸元が突き出されて釘付けになってしまう。
「後輩であるヨルに一つだけアドバイスをしてあげよう」
得意げな顔も美人なランさん。
「ヨルは目つきが悪いし、視線が女性の身体を見過ぎだよ。多分、キモイって思われるから、他の女の子にあまり近づかない方がいいと思う」
だか、ランさんからもキモイ発言とわざわざ理由まで伝えられる。
そうか…俺って童貞丸出しで欲望むき出しの視線を女性に向けていたからキモイって思われていたのか。
ランさんからもキモイって言われたことは悲しい。
だけど、アドバイスとしてなら…
「ランさん。ありがとうございます」
俺はアドバイスと分かりながらも、キモイ発言に傷ついて走り去ってしまった。
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