第2話 幼馴染

家族からキモイ扱いをされた。

そこそこ美形に生まれかわったと思っていたのに、そうでもないかもしれないと疑問に思う。



中学三年生の一ヶ月を貞操概念逆転世界に過ごした。

周りの女性からは避けられ、電車に乗れば距離を取られる。

あれだな。オジサンがバンザイして痴漢してませんアピールしてるみたいだ。



クラスメイトからは目を逸らされる。

家族から受けたキモイ発言に、ますます真実味が増していく。



年末年始を家族と過ごしたと言えば聞こえはいいが、クラスメイトからお誘いは一つもなかった。



高校受験が終わっているので、出席する意味がなくなったため学校に行くこともなくなってしまった。



余った時間で体を鍛えたり、この世界のことを知るために勉強することにした。



スマホはそのまま使えたので、ネットサーフィンに明け暮れる。

new tubeという動画サイトでは、女性が笑いを取ったり、スポーツしたりするなかで、デブで醜い男性tubaが微笑むだけで再生数が爆上がりしていた。



これならば俺が男性tubaになれば再生数を稼げるのでは?とか考えたりもした。



そんな年末年始の中で、唯一連絡をくれたのは幼馴染だけだ。



クラスメイトや友人がいないヨルは、幼い頃から親同士が仲が良くて知り合いだった。

幼馴染の青柳悠奈アオヤナギユウナが唯一の話し相手だった。



同じ学校ではあるのだが、クラスが違うので中学ではあまり交流がなく。

連絡が来て嬉しかった。



「ヨル君。最近学校来てないよね。どうしたの?もうすぐ卒業式だよ。卒業式は出るのかな?出るなら、帰りはお母さんたちがご飯行こうって言ってたよ」



対人恐怖症であるヨルであっても幼い頃から知ってるユウナに対しては、話すことが出来た。



「もう卒業式なんだね。卒業式は出るよ。ご飯。了解」



一か月ネットサーフィンをしていてわかったことは、やっぱりこの世界は自分が想像していた貞操概念逆転世界そのものだ。



・女性は美女、美少女ばかり。女性は肉食系で男性を求めている。

・男は少なくて、草食系が多く。ブサメンでもハーレム作り放題。

・男性保護法案によって、男は働かなくても生きていける。



まぁそう思っても、仕事しないクズでいるのは小心者である俺には無理なことだ。



家族からキモイと思われている以上。

捨てられる覚悟をしなくてはいけない。

将来のことを家族には相談できない。



そうなると相談できる相手は一人だけ。



「ねぇ、ユウナ。俺ってキモイのかな?」



メッセージアプリmainの画面に既読が付く。



幼馴染はボーイッシュ系美少女で中学時代は水泳部に所属していた。

全国大会にも出場していて、有名人なだけでなく勉強も出来て友人も多い完璧美少女だ。



同じ青葉高校に入学が決まっているが、ヨルは進学科。

ユウナは進学科も選べたがスポーツ科に進学した。

男性の少ない世界で、男っぽく分け隔てなく接してくれる数少ない幼馴染の存在はありがたい。



中学時代は、ヨルがキモイ?からか男女比3/30だったにも関わらず、女子たちはヨルに話しかけることはなかった。



「うん。キモイよ!」


「なっ!」



帰ってきた返信に絶句する。

幼馴染からキモイって思われていた。



家族よりマジですやん!家族なら、家族だから近すぎてとか言い訳できたのに。

幼馴染で他人から言われたら確定ですやん。



こういうときは幼馴染だけは、慰めてくれるもんやないんですか?



「いきなり、そんな当たり前のこと聞いてきてどうしたの?」



当たり前!今、当たり前って書いてましたよ!この幼馴染さん。

俺の夢を打ち砕きますやん!粉々に打ちひしがれとんねんこっちは!



「……いや、ほら、もうすぐ高校生活が始まるからさ。上手くやれるかな〜て不安になるあれだよ」



何とかメッセージを返信できた。



家族からキモイキモイと言われとるから確認したかったなんて言えませんやん。



「ああ、そういうことか。それなら、高校なんて行かない方がいいくらいキモイと思うよ。目つきは悪いし、老け顔だし、話すの苦手だし、総合的にキモイから家から出ない方がいいんじゃないかな?宿題とか勉強は僕が教えてあげるよ。仕方なくだよ。幼馴染だからね」



メチャクチャ悪口言いますやん。



目つき悪いって、これでも元の世界より視力良くなってるから、目を細めれば見えるようになってますけど!



老け顔って、ちょっと彫りが深くて、悪い感じでパーツが組み合わさっただけやぞコラ!



話すの苦手は、対人恐怖症やねんもん。

マジでキモイとこ上げてくるのやめて、泣くぞマジで。



幼馴染で締めくくれば、いい感じで終わると思うなよ。



でも、構ってくれる唯一の友人を手放したくない。

だって、めっちゃ美少女ですねん。



ピコン!



mainから送信音が聞こえて来て見れば、タンクトップ姿の美少女が拳を突き出している写真が送られてきた。



成長途中の胸元が透けております。

天然ですか?狙ってるんですか?メッチャ癒されますやん。



「あっありがとな。俺の唯一の友人はユウナだけだよ」



友人を失いたくない気持ちと、キモイと言われた悲しさ。

葛藤が吹っ飛ぶほどの画像の破壊力。



「はいはい。そろそろ私ストレッチして寝るねぇ~おやすみ~」



ユウナからmainの送信から画面がテレビ電話画面へと切り替わる。



あれ?っと思っていると。



テレビ電話に気付いていないユウナがベッドの上でストレッチをしている姿が映しだされていた。



ユウナは背中を向けているが、タンクトップを脱ぎ去っていた。



ゴクリと唾を飲み込み画面を見つめてしまう。

水着跡が残る健康的な肉体が惜しげもなく披露され、悪いとは思いつつも、画面を消し忘れたユウナが悪いと内心言い訳して、じっと画面を見つめてしまう。



発展途中の胸元が身体を捻る度にチラチラチラチラチラッと、リズム良く俺を釘付けにする。



しばらく時間が経過して両手を合わせる。



今日のオカズありがとうございます!



ユウナに気づかれる前に消そう。



そう思って手を伸ばした瞬間。

こちらに足を向けてホットパンツの隙間からメタリックレッドのVラインが目にとびこんできた。



ボーイッシュな見た目からは想像出来ない大人な部分。



ふと、ユウナがスマホを見るように振り返りそうになったので、慌てて電源をオフにした。



「ええもん見れたわ」



キモイと言われたことなど忘れるほどに幸せがそこにはあった。



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