貞操逆転世界なのに思ってたのとちがう?
イコ
高校入学編
第1話 貞操逆転世界に転生ですって
俺は20歳という若さでこの世を去った。
生まれてから体の自由がきかず、病院と家だけが俺の世界だった。
唯一の楽しみは、小説やネットで読む物語だけだ。
その中でも、貞操逆転世界が大好きだ。
異世界転生物は多く存在するが、貞操逆転世界では女性が肉食系になり男性を求め。
男性が草食系になってしまい、女性の方が恋愛に積極的な世界になる。
身動きが取れない俺が元気な女の子たちに手籠めにされる。
そんな光景を想像するだけで生まれ変わりたいと何度も思った。
だから、最後の時、俺は貞操逆転世界に転生したいと願った。
「はっ!?」
死んだはずの俺が目を覚ますと見たこともない景色が広がっていた。
机と人の頭。そして黒板に立つ先生。
病院ばかりで学校にいったことがない俺が、映像でしかしらない学校の風景。
俺は肘をついて窓の外を眺めるように眠りついていた。
何が起きたのかわからなかったが、ふと記憶が甦る。
年齢は15歳。
現在中学三年生で、受験を終えたばかり。
来年には青葉高校に入学することが決まっている。
中学三年生の冬。
俺は転生して新たな生を得た。
----------------------------ーーー
俺という魂の存在は、転生した黒瀬夜の記憶と、すぐに溶け込むことが出来た。
俺は俺であって、俺という存在の記憶がない。
病気で死んだこと。
貞操逆転世界が好きだったことは覚えている。
ただ、それ以外の記憶がない。
家族や病院でどんなことをしていたかなど覚えていなかった。
そのため黒瀬夜という人間になることに違和感がなかった。
黒瀬夜の記憶を思い出していると、一つの結論に達することが出来た。
ここは貞操逆転世界だ。
教室を見渡せば、30名のクラスメイトの9割が女子で、男子は黒瀬夜を含めて二名だけ。
歴史の授業では、2050年を超えたあたりから男性が生まれ難くなり、女子が多くなった。
男女比1/15程度で、男性保護法案なる男性優遇処置が全世界法案で可決された。
俺は、死ぬ前に願った夢を叶えたんだ!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
貞操逆転世界にはいくつか鉄板ネタが存在する。
一つ、電車で痴女に出会う。
二つ、女子が男子に優しくされて惚れてしまうチョロイン。
三つ、転生した男子は元々女性が好きなので、草食系の貞操概念逆転世界の男子に比べて、肉食系女子を選ぶ権利がある優位性を持つ。
俺は巻き起こるイベントにワクワクとしていたが、あれ?なんだかおかしいぞ。
女子を前にすると頭が真っ白になって、言葉も身動も言うことが出来なくなる。
対人恐怖症?女性恐怖症?
おいおい、俺は絶対にそんなことないよな?じゃあ黒瀬夜がそうなのか?
しかも、クラスの女子たちと目が合わない。
貞操逆転世界は男性に選ばれるために女子のレベルは高い。
クラスメイトたちも類に漏れずに美少女ばかりだ。
それなのに男子に飢えているはずの女子が俺と視線が合えば逸らしてしまう。
不思議に思いながらも、電車に乗って自宅へ帰る。
電車は男性専用車両も存在したが、共有車両にもちろん乗るよね。
鉄板ネタを経験したいじゃん。
……あれ?痴女が来ない。
周りを見れば、黒瀬夜から一メートルほど距離を開けるように女子の輪が出来上がっていた。
……めっちゃ避けられてる。
黒瀬夜の記憶通りに家に帰れば、セキュリティばっちりな高級タワーマンションに辿りついた。
「ただいま」
扉を開くと広い廊下が続いていて、リビングに入ると広いリビングに大きなソファーが置かれていた。
そこには黒髪の美少女が寝転んでいた。
記憶を辿れば、黒瀬夜の妹で、
「えっと、ツッツキ。たっただいま」
こちらを見て固まっている妹にもう一度【ただいま】と伝える。
「えっ?お兄?おかえり……なさい」
驚いたような顔をするツキの反応。
どうしてなのか考えれば、最近妹と挨拶するのも戸惑っていた記憶が甦る。
クラスメイトの女子の前に出て話せなかったときのような感じになっていた。
ただ、俺とヨルの体が馴染み始めるにつれて、ドモリながらもなんとか言葉を発することが出来た。
「ドっドモるとかマジキモイ」
驚いていたツキはキモイと言って自分の部屋へと入ってしまった。
ヨルの体から突然力が抜けてリビングの床へと両手をついて項垂れる。
メッチャショック。
貞操逆転世界の妹はお兄ちゃん大好き確定だと思っていた。
キモイ?ドモッたから?見た目ちゃいますよね?会話ですか!?魂がキモイってことですか!魂が偽物ってバレた?
あまりにもショックで洗面所へ行って顔を洗う。
ふと、鏡の中を見れば、貞操逆転転生物語でテンプレ的な誰もが振り返るような美少年はそこにはいなかった。
異世界転生を果たすと、中性的な女の子と間違えそうな超絶イケメンになっていると思っていた。
だけど、そこには黒髪で15歳にしては老け顔な、彫りの深い男くさい顔が映し出されていた。元の俺は病人で痩せてガリガリなゾンビみたいだった。
そのときに比べれば健康的で悪くないように見える。
ただ、対人恐怖症で女性と話すことが苦手なコミュ障だ。
ーーーーー----------------------------ーー
ニュースで流れる逆転世界ならではの事件。
・男性への痴女行為。
・人工授精の発展から女性誕生比率増加。
・男性優遇法案の見直し。減り続ける男性。
取り上げられている事件は、逆転世界であることが間違いない。
ただ、俺は甘かったと言わざる終えない。
逆転世界に転生すれば、美人な家族が男と言うだけで、媚びて甘やかしてくる定番の流れを味わえると思っていた。
最悪、性奴隷扱いされながらも身体を求められて、くんずほぐれつ、なんやかんや妄想していたのに!
「あんた話すの下手だし。存在がキモイから外に出ない方がいいよ」
あの後、帰ってきたワイルド美女巨乳の
元軍人で現在は警備会社社長をしているお母様。
ヨルの記憶の中でも、小学生の頃から厳しく、体を鍛えられていたので引き締まった体を手に入れられた。
ただ、中学生の息子に蔑むようにキモイと吐き捨てのはやめていただけませんか?
新たな世界の扉を開いてしまいそうです。
「そうだね。お兄はマジでキモイと思う。お兄がお兄だって外で話したくないから、絶対に外に出ないでね」
夕食を取るために部屋から出てきた。
バランス完璧なJC妹様は、兄が嫌いな思春期真っ盛り。
罵倒が止まらない。
言葉で人を殺せるレベルで毒を吐く。
家族から汚物扱いされるって、どんな逆転世界やねん。
ここは美人で巨乳のお母さんが優しく甘えさてくれるとこじゃろがい!
妹だって、お兄ちゃんが世界で一番大好き。って言ってくれるとこちゃいますの?
家族からキモイ認定された俺の結末は……ふて寝します。
まぁ春になったら高校は行くけど。
家族に捨てられたときのことを考えなあかん。
生きていくためには勉強が必要なんや。
思ってた貞操逆転世界と違い過ぎるやろ!!!
ーー----------------------------
あとがき
「面白かった」
「続きが気になる。読みたい」
「今後どうなる?」
と思っていただけたら
下にあるレビューの+ボタンを作品への応援をお願いします!(^^)!
面白かったら☆3
応援しておこう☆2
つまらなかった☆1
いいね。ブックマークも頂けると嬉しく思います!(^^)!
何卒よろしくお願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます