第18話

 翌朝、彼は朝九時ごろに目覚めた。

 目を覚まし、体を起こして大きく伸びをし、あたりを見渡してみると扉の前に控えるキアラがいた。


「あら、おはようキアラ。今日はあなたが担当?」

「は、はい! キアラ、頑張ります!」

「お願いね。じゃあ、朝食をお願いできる?」

「か、かしこまりました! ただいまお持ちいたします!」


 キアラは金髪をなびかせながら部屋を出ていった。緊張しているようだが、元気があった。彼も自然と笑っていた。


「今日は、ちょっと頭痛が酷いかな」


 そうぽつりとつぶやいて、ベットから降りる。服をはたき、仕事机の上に置いてある手鏡で寝癖がないか見る。目立った異常がないことを確認して、席に着く。

 仕事机と言ってもここで仕事をすることなどほとんどないので、食卓として使うことになるだろう。それに対して何か言うものは誰もいなかった。


 コンコンコン――


 しばらく待っていると、ノックがなった。


「どうぞ」

「失礼します。朝食をお持ちしました!」

「ご苦労様。ここに置いてちょうだい」


 扉を開けて入ってきたのはワゴンを運ぶキアラだった。せっせと料理をワゴンから彼の座る机へと運んだ。手際は悪くなく、見習いとは思えないほどだった。動きもかなり洗礼されており、一般人とは思えなかった。


「あなた、どこかで礼儀作法を習ったの?」

「え、あ、はい。キアラ、じゃなくて私は宮廷作法を習ったことがあります」

「それはすごいわね。……あと、別に無理して私って使うことはないわ。好きにしなさい?」

「わ、わかりました! ありがとうございます!」


 キアラは勢い良く礼儀をした。


「じゃあ、悪いけど食べ終わるまで待って居て頂戴ね」

「はい! ごゆっくりどうぞ!」


 ファミレスかよ、と彼は脳内で突っ込みつつ、食事を始めた。


「ごちそうさま。下げていいわよ」

「はい! ……あれ? 残されるのですか?」

「ええ、少しお腹の調子が良くなくてね」


 ここの料理人は張り切っているのか彼にとっては過剰な量の料理を出す。何度か残しているので改善されるのでは、と彼は思っているがそんな気配はない。むしろ増えている気がする。

 料理人たちは、自分たちの料理が不完全だから残されているのだ、と張り切っているのだから仕方のないことなのだが、彼がそれを知る由もなく、しばらく改善されることはなかった。

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