第17話
彼がルミナスに転生し、領主として屋敷に住み始めてから数日が経ったある日の夕食後、ティナが彼の部屋を訪ねてきた。
「失礼します。お風呂の支度が終わりました。いかがなさいますか?」
「ん? そうね、入らせてもらおうかしら」
「かしこまりました。では、こちらにどうぞ」
ここ最近は屋敷に慣れずすぐに寝てしまっていたためお風呂に入る機会はなかったが、今日は特に理由もなく起きてしまっていたためせっかくならと思い彼はお風呂に入ることにした。
ティナについて行って一階のふろ場に着いた。
時間は午後七時。夜ご飯は食べ終わり、まだ少しだけ残っていた書類の整理もやった。彼は今暇だったためティナに素直についてきたが、そこでとんでもないことに気づいた。
(俺、ルミナスの姿で裸になるのか!? やばい、それは考えてなかった。ど、どうする!? 戻るか? いや、でもここまで来ちゃったし……それでもルミナスの裸を見るのは……ッ! お、俺はどうすれば……)
そもそも彼には《
(っく、いやでもそもそもルミナスの姿でお手洗いとか行った後だし、もう遅いのでは? ……ごめんルミナス、許してくれ)
なんとなくやらかした気がした彼は、脳内でルミナスに土下座するのだった。そして、諦めてお風呂に入ることにした。
「ティナ、面倒なので手伝ってくれる? 髪の手入れとか」
「かしこまりました。少々お待ちください」
それは、本当にただ髪の手入れが面倒くさくて特に意図したわけでもない発言だったわけだが、彼はすぐにそれが失言であったことに気づく。
(あれ、これってまさか、ティナの裸も見ることになるのでは!? さすがにそれは……性別偽って女性の裸見るとか、どんな変態だよ……)
彼は自分がクズに思えてきた。
(確かに無意識で言ったけど! これ重罪じゃないか? ばれた時、やばいことにならないか? ……いや、でも今の俺はルミナスだ、女性だ、問題ないはずだ。それに、別に俺はやらしい視線を向けるつもりはないわけだし。そもそもティナは俺のメイドだし問題な――)
――い、と言おうとしてそれ以上はいけない気がして思考を中断した。
その後、結局ティナと一緒にお風呂に入ることにした彼だが、ほぼ無意識を保ちながらティナになされるがままにしていたという。
(はあ、ティナがバスタオルを巻いておいてくれて助かった。あれがなかったら理性を保てないとこだった)
髪も乾き、就寝の支度も終わったころ、彼の脳内を渦巻くのは先ほどのお風呂での風景。
(あいつ、着痩せするタイプだったな)
そんなことを考え、想像し、かけたところで頭を振って、彼は眠りについた。
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