メインストーリー

第1話 

「悪いな」


 ルミナスはティナの背中にゆられながら謝罪を口にした。


「いえ、これが私たちの使命ですから。それより、ルミナス様は大丈夫ですか? お腹の具合は? もう少し持ちそうですか?」

「あと少しなら、大丈夫だ」

「はい。すぐに着きますので、少しの辛抱です!」


 ティナの言う通り、廊下の角を二つ曲がった先にお手洗いはあった。一人用の個室に洋式トイレが設置されていた。


 ティナは扉を開けると彼を便器に座らせた。


「お一人で用を足せますか? お手伝いしましょうか?」

「さすがにそこまでしなくていい。というか、恥ずかしい」

「そうですよね……ははは、すみません。では、私は扉の前に待機していますので、何かあったらおっしゃってください」

「そうさせてもらう」


 ティナはそう言うと、お手洗いの扉を閉めた。扉の内側には、小さな鏡がかかっていた。

 そこに映っているのは赤い瞳を持つ一人の少女。黒髪をサイドに垂らす形のハーフツインテール。フリフリのゴスロリ黒ドレス。齢九つと言ったところだろうか。小さな背に見合う童顔をしており、いわゆるロリっ子であった


「この顔になって、もう一年経つのか」


 便器に腰掛けながらそう呟いた彼の声は、高校生男子とは思えないくらい高く、可愛らしいものだった。お手洗いに着いたことで、少し落ち着いたらしい。懐かしむような様子で、彼は言葉を漏らす。


「結構いろんなことがあったよなぁ……」


 彼はしみじみと懐かしむようにつぶやいた。

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