貧弱魔人に転生しました

シファニクス

プロローグ

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 とある世界の片隅で、なんやかんやあって車にひかれて魔人に転生した一人の男子高校生がいました。そんな彼が異世界に転生してからすでに一年が経ちました。なんやかんやあって魔王に仕え、領地をもらった彼は一年間必死に領地の管理を行っていました。

 そんな彼は今、窮地に瀕していました。彼の屋敷の廊下に、倒れ伏していたのです。


「お、俺もここまでなのか? これまでの努力は、全部無駄だったのか? 助けは、来ないのか?」


 苦しそうに左手を腹部に当て、右手を前へと伸ばしながら、彼はそう言った。


「そうか……結局こうなる運命だったんだ。この世界に転生したその時から、こうなることをは決まっていたんだ……せめて、せめて、魔王から与えられた使命だけでも、果たしたかった……」


 力強く伸びていた腕は垂れ下がり、前を向いていた顔も力なく地に着く。そして全身脱力しきった。

 静まり返る廊下の中央で、一人倒れ伏す彼の運命は、ここで途絶え――


「ルミナス様!? ど、どうしたのですか!?」


 ――ようとしたその直前、女神かのごとく現れたのはメイド服に身を包む一人の女性だった。

 歳は18といったところだが、背中半ばまで伸ばされた茶髪のせいか大人びて見える。洗礼された作法と綺麗に仕立てられたメイド服のおかげでメイドにしか見えないが、どこか聖職者のような印象を抱かせた。そして、翡翠色の瞳をしている。

 落ち着いた雰囲気を纏う彼女だったが、倒れ伏す彼を見つけ、一目散に駆け寄った。


 しかし彼に何が起きたのかわからず、彼の横に膝をつき、あたふたとするだけだった。


「ティ、ティナか……俺はもう、駄目かもしれない……」

「そ、そんな!? どうしたというのですか!? その左手……もしかして、お腹を!?」


 彼の左手がお腹に添えられているのを見て、ティナと呼ばれた彼女も察したようだ。


「お腹を下されたのですか!?」


 そして、そう叫んだ。


「そうだ……もう限界だ。出そう」

「それは大変です!! すぐに私に背負われてください。お手洗いまでお連れします!」


 ティナはそう言うとすかさず彼の目の前に移動して屈んだ。それを見て彼は最後の気力を振り絞ってティナの肩につかまる。それを確認したティナは彼を背負いあげてなるべく背中が揺れないように走りだした。

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