物語は廻る
本を開けるとそこは宇宙だった。
その本の物語は■■■■に侵されており、星全体が触手に包まれていた。惑星から脱出した人類は箱舟に乗って■■■■から距離を取り始める。何世代もかけて、ようやく移住可能な星系にたどり着いた。そこでは惑星サイズの丸い猫が恒星の周りをまわっており、人たちはそこに降り立った。 猫星での生活は過酷だ。怪獣のごとき大きさのダニやノミが闊歩しており、人々に安息の時はなかった。また住んでいる猫星にとっても餌が必要で、数百年に一度でいいから食事を与えなければ重力の動きがおかしくなって地殻変動が起こってしまった。なのでロケットとミサイルで鼠彗星を誘導して、猫の口に運ぶプロジェクトが定期的に実行された。鼠星の小惑星帯を■■■■に向けて隕石攻撃をしたりもした。これにより■■■■を満腹にして動けなくさせるのだ。しかし結局■■■■の進行を止めきれずにその宇宙は滅ぶこととなり、直前に人間の一人が本を読み始めた。
そこではそこでは猫が経済を牛耳っていた。貨幣の単位も猫と名付けられ招き猫が大活躍をしていた。空間にどれだけ招き猫を積み込めるかが競われたりもした。猫はハイパーインフレーションを起し、私は九十九那由多猫手に入れた。紙の猫の価値はほぼ無くなったので皆が戯れに紙幣の猫で猫を折った。猫で出来た猫たちが町中を闊歩し、やがて人権ならぬ猫権を訴え始め、元居た猫と戦争となった。資金面で負けたたのは猫のほうで、敗北を認めた猫が貨幣を務めることとなった。猫がかわいそうだって? 大丈夫、猫を傷付けてはいけない。何故なら貨幣損壊罪にあたるから。そして次の単位が■■■■になっていることに気が付いて、これは明らかに悪貨でまずいとなり、何とか駆逐できないかという話になり、そこで実行されたのはれたのは本と本の間で取引を行って資金を転々と移転することだった。いわば別宇宙を使った資金洗浄だ。
しかしこれはいたずらに■■■■を別宇宙に広める結果となっただけだった。そろそろ危なくなったので私はインフレによってゴミ同然になった紙幣で作られた本を見つめる。私は猫を読んだ。
私は長くて太い糸を上っていた。糸は林のように一定間隔で並んでおり、それが無限に広がっていた。私は糸から糸へと飛びこえて先を進んでいた。もう気の遠くなるほど登っている。生まれたころから上っており、父や母も、そして祖父や祖母もまた上っていたそうだ。いったいこの糸は何なのだろうか。太さは直径50cmほどで、何やら白い毛が生えていた。まったく正体がわからない。
そこで■■■■が下から迫りくるのがわかる
「誰か助けて!」
私は叫んだ。すると上から、「まかせろ!」と声がした。
見るとなんととてつもなく胴の長い猫が空から伸びてきたのだった。いや良く見ると、今上っているのがとてつもなく胴の長い猫だったのだ! そんな猫たちが無数に伸びていたのだ。
猫たちは私の周りに集まり、その銅を編み込んでいく。そして自分たちを糸のように使い、巨大な猫の縫いぐるみを作り上げた。端から端まで何代もかかる長さの猫が編まれた猫なので、当然大きさも尋常ではない。巨大ネコは■■■■にじゃれるように手を伸ばす。猫は傷つけていけないので遊んで疲れさせるのだ。■■■■の大きさは少しずつだが小さくなっていく。しかし■■■■の根底は形を持たない思想型生命体だ。蛸の姿は物質世界にはみ出ている存在に過ぎない。そこで巨大ネコの手を一部置換することにした。猫は物語と等価である。だから手を物語の群れと交換するのだ。
幾億の叙情詩が編みこまれた爪を立て、781兆もの空想科学と253京もの狂詩の舌で舐める。見聞録から絵本までの本を百㎞並べた脚で飛び、宇宙中の随筆の肉球を押し付けた。
火は燃えると灰となり土になり、土は金を作り出し、金の表面が結露して水を生み、水が木を育て、木が燃えてひとなるように、金は本となり本は空となり七つ飛ばして欲が肉となり、肉は猫となるように、めぐりめぐって本は猫となった。
本から本へ移り、内側の世界へ逃げながらも少しずつ■■■■を消耗していった。
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