第11話 平穏
次の日の朝、俺が保健室のベッドで目を覚ましてしばらくすると、
ガラっと音がして保健室の扉が開いた、入ってきたのは高坂と一条、
そして金髪碧眼の少女だった。
「ん?あれ蓮人起きてんじゃん。だいじょぶか?」
高坂が相変わらずの笑顔で俺にそう聞く。
「あぁ、大丈夫ッ、いってぇ」
上半身だけ起こした状態で天使と話していたため気づかなかったが、立ち上がろうとした瞬間足に激痛が走る。退避するとき足は効果範囲から逃げられなかったようだ。
「だいじょうぶじゃなさそうね。お願いできるかしら」
少し眉をひそめながら一条は隣の金髪碧眼美少女に言った。
「任せて!」
少女はハツラツとした声でそういうと、
「いくよー。『治癒・
と、能力を発動した。
「おお、さすが、すげぇもんだな」
俺の足のケガが治っていく様子に高坂が感嘆の声を上げる
「ありがとう、えーと・・・」
俺は、お礼を言おうとしたが、彼女の名前がわからず黙ってしまう。
そんな俺を見て彼女は不思議そうにこちらを見ていたが、
ようやく自分が名乗っていないのに気付いたのか、
「あっ、私、【如月なのは】って言うんだ。
茜ちゃんに頼まれてここに来たんだよー」
といった。どうやら一条の知り合いだったらしい。
「ありがとう、如月さん,一条もありがとう」
「どういたしましてー」
「別にいいわ、私を助けてくれたお返しの一つだと思って」
2人は少し照れ臭そうにそう言った
「あははー、茜ちゃん素直じゃないんだから」
「は、はあぁぁ!べ、別にそういうのんじゃないんだから」
「そうだぞ、一条少し蓮人に素直になったらどう、ぐふっ」
高坂が口を開いた瞬間、一条の蹴りが高坂の腹に突き刺さった。
「うっさいわ!あんたは黙っときなさい」
「お前ら、うるさいぞー」
「「「「すいませーん」」」」
騒ぎすぎたみたいで、保健室の先生に怒られてしまった。
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先生にも普通に生活してよいという許可が下りたので、高坂と俺は、教室に向かっていた。授業はつい3日前から始まっているらしい。
ちなみに、一条と如月さんは用事があるからとどこかへ行ってしまった。
「にしても、如月さんって何者なんだ?あんな回復術を使える人なんて、先輩どころか世界でもそういないと思うんだが」
と、俺はずっと思っていたことを聞いた。
「ん、知らないのか、いや、知らないのも当然か。彼女、『聖女』らしい」
「『聖女』?なんだそのファンタジーな名前は?」
「聖女っていうのは聖なる力を使うことができる女の人らしい」
「そのまんまじゃねぇか、まったくわかんねぇんだけど」
高坂のあまりにも雑な説明に、思わず突っ込んでしまった。
「えーとだな、つまりだな。役割としては、蓮人が言ってたファンタジーに出てくる聖女と同じ働きをする。サポート特化型の能力持ちだ。違う事と言えば、何人もいるという事くらいかな。」
「え、聖女って何人もいるのか」
「まぁ、世界でも何人かっていう部類の珍しい位置だけどな。だから国家は聖女に危険が及ばないように情報を隠蔽する」
「なるほど、だから今まで知らなかったのか」
確かに、世界で数人ともなると聖女のいない国は、暴走してほかの国の聖女を誘拐なんてことになりかねない
「そういうことだ」
「まぁ、聖女の話は置いといて、蓮人の退院祝いも込めてどっか遊びに行かね?」
「めんどいから嫌。てゆうか退院って、大げさだろ」
「何言ってるんだ蓮人、1週間近く意識不明だったくせに、如月さんがいなかったら死んでたかもしれないんだぞ」
「俺ってそこまでやばかったの?!ん、1週間?え、今何日?」
「今日か?4月19日だぞ」
てっきり4日くらいしかたっていないと思っていた。1週間もたっていたら
そりゃ授業も始まっているだろう
「嘘やん…」
「なんで、関西弁?」
「まじかー俺そんなやばかったんだー」
「驚きすぎで棒読みになってる!逆に本人が自分のけがをちゃんと認識していなかったことがびっくりだわ」
「そういうこともあるって」
「そうか?でもなんか蓮人であった時と比べてだいぶ印象変わったな、なんていうか人当たりがよくなった?」
あんまし変えたとは思っていないが…
「いつもこんな感じだと思うけど?」
俺は、さも当たり前かのように言った。
「なるほど。ん?じゃあ、最初に会った時のあのめんどくさそうな態度は演技か!」
「いや、演技じゃないよ」
そう、あれは単純にめんどくさかっただけだ。高坂と会話することにめんどくささを感じなくなったのも事実だ。
まぁ、今回の戦闘で、かなりの時間村正を抜刀していたから、そのおかげかもなぁ。
「なお悪いわ!あれも蓮人の本性って事か?」
「本性っていうほどでもないけどな」
本性っていうと悪く聞こえるから使わないでほしい…
と思っていると先生が入ってきて授業が始まった。
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