第372話 衝撃が走るパーティー
誓いが終わると会場を移動し、和やかな雰囲気でパーティーが始まった。家族や友人皆に祝福をされて、幸せな時間を過ごしていた。
ライオネル様が一人ふらりとやって来ると、ドレスを褒めてくださった。
「レティシア嬢。弟をよろしく頼むよ」
「必ず幸せにします」
「ははっ、これは頼もしいな。……レイノルト、結婚おめでとう」
「ありがとうございます、兄様」
誰よりもレイノルト様の結婚を喜んでいた気がする。今も私達に向けられる微笑みは温かく満足そうなものだった。
「ところで義姉様は」
「実はシャーロット、レティシア嬢の姉君達と意気投合してずっと話しているんだ。女性の話だからと追いやられてしまった」
「まぁ。どんなお話をしているんでしょう」
「何だか結婚生活に関して話していたな」
「兄様の愚痴ですかね」
「……否定できない」
どうやらライオネル様には心当たりがあるようだった。特にリリアンヌは同じ王の妻になる者として、色々と話を聞いているとの事だった。
「まぁ、両家の関係が良くなるに越したことはない」
「ライオネル様の仰る通りですね」
「……そろそろ良いんじゃないのか?」
「?」
ライオネル様がじっとレイノルト様を見つめている。すると、少しの間黙ったレイノルト様が小さく微笑みながら頷いた。
すると、誇らしそうにライオネル様は私に告げた。
「レティシア。今日から私は義兄だ」
「はい……よろしくお願いいたします、お義兄様」
にこりと微笑めば、ライオネル様ーー義兄様は満足そうに微笑んでいた。そしてもう一度祝福をされると、リカルド様とオルディオ様の元へと向かうのだった。
「レイノルト! 姫君!!」
「リトス」
「ご結婚おめでとうございます、レティシア様!」
「ありがとうございます、フェリア様。次はフェリア様ですね」
「あっ……そ、そうですね!」
かあっと頬を赤くさせるフェリア様。リトスさんも満更では無さそうだ。
「セシティスタ王国の一件では、本当にありがとうございました」
「お止めくださいレティシア様。私もリトス様も、お役に立てたならそれだけで幸せなのですよ」
「そうですよ姫君。無事に収束して良かったです」
恩など感じる必要はないと断言する二人に、胸が温かくなっていく。
「それと姫君。今日選ばれた緑茶、さすがですね。どれも一級品かつ飲みやすいものばかりで、勉強になります」
「料理とも合っていて、緑茶の魅力が最大限発揮されていましたわ」
「レイノルト様と一緒に考えたんです。良かった、お気に召していただけて」
「良かったですね、レティシア」
「はいっ」
今回のパーティーでこだわった物の一つであったため、リトスさんとフェリア様に褒められるのは凄く嬉しかった。
「まだパーティーは続きますから、是非とも楽しんでください」
「もちろんです」
「ありがとうございます、姫君。それとおめでとう、レイノルト!」
「……あぁ」
ふっと微笑むレイノルト様の笑みは、一見軽そうで実はとても喜んでいるように思えた。
二人が傍を離れると、とんでもない形相をしたベアトリスとリリアンヌがやって来た。
「「レティシア!!」」
「ど、ど、どうされました、お姉様方?」
あまりの迫力に、さすがのレイノルト様も驚いていた。
「レティシア、私達は夢を見ているのかもしれないわ!」
「集団幻覚かもしれないのよ」
「ほ、本当にどうされたんですか」
ベアトリスとリリアンヌが突拍子もないことを言い出すと、私の頭には大量の疑問符が浮かんだ。
「あそこを見て!」
「あそこ?」
リリアンヌが指差す方向を見る。そこにいるのはカルセインだ。何もおかしなことはない。
「……カルセインお兄様ですね」
「よく見て!」
念を押されたのでよく見ると、何とカルセインは女性と楽しそうにお話をしていたのだった。
「………………………え?」
あのカルセインが、女性と一対一で話している。……あり得ない光景だ。
「そうなるわよね、わかるわ!」
「やっぱり集団幻覚ですわ、お姉様!!」
「私にも見えてますが」
「「「!!」」」
レイノルト様の一言で、幻覚でないことがわかった。そこで正気になってじっくりと観察をする。
「えっ………………えっ!?」
「どうしたのレティシア」
「グレース様……」
「知り合いなのレティシア!!」
「お兄様が話されているのは、私の友人ですわ」
荒ぶるベアトリスに説明をする。私も困惑しながら、レイノルト様に尋ねる。
「レ、レイノルト様。グレース様は確かまだ、婚約者がいないと先程仰ってましたよね」
「えぇ。お見合いを奮闘中だと」
「……ということは、未婚かつ婚約者なしですよね」
「そうなりますね」
「グレース様は侯爵令嬢で、なおかつシルフォン家は由緒正しき歴史あるお家……凄くお似合いですね」
「「!!」」
その言葉を、ベアトリスとリリアンヌは聞き逃さなかった。
「レティシア! この縁を逃しては駄目だわ。姉としての直感に過ぎないけれど、カルセインにとって他にない最高のお相手だと思うのよ……!!」
「お兄様のお見合いを知らない私でも、何だかそう思います」
ベアトリスの必死の訴えに、こくりと頷いた。すると、レイノルト様から鶴の一声が発せられた。
「……でしたら、カルセイン殿とシルフォン嬢お二人のお見合いをご用意しましょうか?」
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