第325話 調査報告と新たな招待状

 更新が遅くなり申し訳ございません。こちら10/28分の更新となります。よろしくお願いいたします。


▽▼▽▼



 レイノルト様とエリンと共にエルノーチェ公爵邸へと戻った。

出発と同様、裏口から入りベアトリスとカルセインの待つ書斎に入れば、真っ先にベアトリスに抱きしめられた。


「レティシア……‼ 貴女、怪我はない?」

「はい、無事ですお姉様。レイノルト様が守ってくださいました」

「よかった……ありがとうございます、レイノルト様」

「守るのが私の役目ですから」


 当初の予定よりも長い外出になってしまったことが、ベアトリスの不安を増長させてしまったと考えていると、ベアトリスの不安そうな声はまだ残っているようだった。


「実はつい先程まで、屋敷にシグノアス公爵の使いがいらっしゃって」

「「!!」」


 予想外な訪問の理由は、前回のパーティーで提案した場について話すためだったようだ。


「以前、シグノアス公爵が後日二人の時間を設けるという話をしていたでしょう?」

「はい」

「その件で招待されたのよ。是非シグノアス公爵邸にいらしてほしいと」

「シグノアス公爵邸に……」

「私としてはエルノーチェ公爵邸でも構わないと伝えたのよ。もちろん、向こうの方が高貴な身の上で足を運ぶべきなのはわかるわ。けれどね、非礼を働いたのは向こうなのだから、動くべきは第二王子の方でしょう」


 ベアトリスの主張はもっともなものだった。

話しながら一同は着席していく。自然と私とベアトリスが隣同士に座り、レイノルト様とは向かい合う形となった。


「お姉様の主張が正しいと思いますが……使者はその要求を突っぱねたのですか?」

「えぇ。相手がどなたかわかっておられますかと言わんばかりの目でね。……それに、自分達は招待状を任されただけで場所を変更できる決定権は持ち合わせていないと言われてしまったわ」

「使者の言い分もわかる。恐らくシグノアス公爵は、最初から自分の屋敷でしか場を設けるつもりがないのだと思うぞ」

 

 ベアトリスに続きカルセインは嫌悪を表すような顔でそう告げた。


「話をその場で断ろうとした矢先、使者の馬車から第二王子殿下が出てきたのよ」

「第二王子殿下が……!」

(イノさん……)


 どうやらエルノーチェ公爵邸に訪れた馬車に乗っていたのは使者だけでなく、第二王子殿下も同行していたようだ。ベアトリスの話では、相変わらず仮面をつけていたため、何をしに来たかまるでわからなかったのだとか。


「えぇ。遅れて出て来るなり謝罪をされたわ。先日の非礼を詫びたいと」

「先日……シグノアス公爵邸でのパーティーの一件ですね」

「仮面について言及もしたのだけど……まだ顔を見せることはできないと言われてしまったの」

「そうでしたか……」


 イノさんという人間が顔を見せることは、確かに危険が伴ってしまう。

 その事実を伝えるためにも、間を挟んでベアトリスに結果を報告することにした。


「お姉様。仮面の理由含めて、私達の方の調査結果についてお伝えしても?」

「もちろんよ、聞かせてもらえる?」


 ベアトリスの不安そうな声に応えるように、私はレイノルト様と共に順序立てて説明し始めた。


 オル様がオルディオ殿下をであったこと、仮面をつけた第二王子はオルディオ殿下の影武者であるイノさんということ、そして現在は帝国所有の屋敷で匿っていること。


 全て話し終えると、部屋の中は沈黙に包まれた。


「……お姉様。決してオルディオ殿下はベアトリスお姉様をないがしろにしたわけではありません。なので――」

「えぇ、わかっているわレティシア。むしろ守ろうとしてくださったということも。ありがとう、本心を聞き出してきてくれて。ここまで重要な話を持って帰ってきてくれて」


 今にも泣きだしそうなベアトリスに、私まで心が揺れ動かされてしまった。ベアトリスはぎゅっと目を閉じると、気持ちを整理したように小さく息を吐きだした。


 そして、ゆっくりと目を開けると自身の考えと思いを述べ始めるのだった。


「現第二王子が、オルディオ殿下ではなくイノさんなら、尚更明後日はシグノアス公爵邸に行かなくてはならないわ」

「お姉様……」

「姉様、それは危険です」

「確かに安全ではないと思うわ。でも考えてみて。仮に明日、接触したとして私に危害を加えてもシグノアス公爵側に利益はないはずよ。まだ婚約も結んでいない赤の他人同士なのですから」


 ベアトリスはそれよりも利益に繋がる可能性について語った。


「むしろ、私がシグノアス公爵邸でさらなる非礼を受けたその時は、エルノーチェ公爵家から正式的な抗議を出すことができるわ。さらに言えば、第二王子がした非礼の責任は本来ならシグノアス公爵家ではなく王家が取るべきよ。そうすれば、第二王子を強制的に王家に戻せるんじゃないかしら」

「……確かにそれは一理ありますが」


 ベアトリスの作戦ともいえる考えは筋が通っており、イノさんの救出に繋がる意味のある行為だった。カルセインも心配そうな面持ちではあるものの、納得はしたようだ。

 そして、私達の反応をみたベアトリスは決意を固めた。


「だから私は明日、第二王子に……イノさんに会って来ようと思うわ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る