第262話 待ちに待った日(ルナイユ視点)

 

 更新を止めてしまい大変申し訳ございません。体調が不調だったのですが、無事回復いたしましたので更新を再開したいと思います。今後ともよろしくお願いいたします。


 フェリア・ルナイユ視点になります。


▽▼▽▼




 今日は待ちに待ったリトス様とお会いする日。


 本来ならレティシア様とシエナ様に準備を手伝ってもらう約束だった。しかしマティルダの一件でレティシア様には療養に専念してほしいと思い、後程報告することで話をまとめた。


 ということで、シエナ様とシルフォン嬢ーーグレース様にお手伝いをお願いすることにした。


「ごきげんようフェリア様。思っていたより緊張していなさそうですね」

「失礼します」


 二人を笑顔で迎え入れると、それぞれ椅子に座ってもらった。


「朝早くからありがとうございます」

「お役に立てるなら、いつでも呼んでください! ……恋愛面で私が力になれるかわかりませんが」

「いらしてくれただけで本当に嬉しいですわ、グレース様」


 グレース様はまだ婚約者を探している身で、恋愛経験はほとんど無いと本人が語っていた。それでも、女性としての客観的な視線も重要なので、手伝ってもらえるのは本当にありがたかった。


「お茶をどうぞ」

「あら。フェリア様が淹れてくださったんですか」

「はい」

「ありがとうございます」

「ありがとうございます!」


 シエナ様とグレース様に緑茶を淹れて出した。


 リトス様に好意が芽生えて以来、緑茶を自分で淹れる練習はしてきた。それでもまだ未熟なもので、美味しく淹れるには時間がかかりそうだった。


 でも嬉しいことに、今度レティシア様に緑茶の淹れ方を教えてもらう約束をしたのだった。

 

「っ!」

「……フェリア様」

「はい?」


 グレース様が緑茶を飲んで驚く隣で、お茶を口にしたシエナ様が、困惑の表情でこちらを見ていた。


「私の記憶では……緑茶はここまで苦くないと思うのですが」

「えっ!」


 慌てて自分の淹れた緑茶を飲むと、茶葉の分量を明らかに間違えた味が口の中に広がった。


「ごめんなさいっ! 淹れ直しますわ」


 シエナ様とグレース様から茶器を回収して、淹れ直そう立ち上がった。


「……どうやら緊張されてるみたいですね」


 シエナ様の声がそう響くと、自分が緊張すしていることに気が付いた。


「……緊張、しているかもしれません」


 立ち上がったままそう呟くと、シエナ様だけでなくグレース様までも頷いた。


「で、でも。緊張することは悪いことではありませんから……!」

「そうですね。それほど楽しみにしていたということでもありますし」


 二人からそうフォローされるが、苦笑いを浮かべることしかできなかった。


(緑茶をこんなに派手に淹れ間違えるなんて……リトス様の前で何か失敗してしまったら……!)


 緊張というよりも、そこから生まれた失敗に対する心配が込み上げてきたのだが、それを打ち消すようにシエナ様が立ち上がって、パンッと手を叩いた。


「今ここで悪いことが起きたなら、後は良いことしか起こりませんわ。それくらいの心意気でいきましょう。せっかくの記念すべき日ですから。フェリア様、明るく考えましょう」

「シエナ様……」


 心強い眼差しで温かい言葉をくれたシエナ様に、感謝を伝えた。


「ありがとうございます。……そうですよね。今日はこれ以上気にせず、気合いをいれて頑張りますわ!」

「その意気です」

「応援します、フェリア様!」


 グレース様も立ち上がると、両手を拳にして胸の前に掲げながら、応援する体勢で告げてくれた。


「それでは早速、今日の服装を決めましょう」

「そうしましょう……!」


 シエナ様の言葉に頷くと、デートへの準備に取りかかるのだった。




「こちらの服はどうでしょう?」

「お似合いですが、少し華美かと。今回は王都のデートですよね。社交界にでも着ていける服装でない方が良いかと」

「なるほど」

「いわゆるお忍びデートというものですね……!」


 的確な助言をくれるシエナ様に、目を輝かせながら服を見ているグレース様。


「グレース様はどちらが良いと思います?」

「そうですね……フェリア様に似合いそうなのは、こちらの花柄が入ったお洋服かと」

「とても良いセンスですね。王都にはぴったりかと」

「ありがとうございます、シエナ様」


 二人のやり取りを聞きながら、参考にしながら服装を選んだ。結果、グレース様が選んだ花柄が入った洋服を着ることにした。


「今日は日差しが強いですから、帽子を被っても良いかもしれませんね」

「帽子はーー」


 その他の物や、お化粧も助けてもらいながら準備を終わらせるのだった。


「……お二人に手伝ってもらったから、凄く自信を持てますわ」

「それは良かった」

「お役に立てて何よりです」


 二人に改めて感謝を伝えると、応援の意味が込められたであろう微笑みを返してくれた。


(……よし、これでリトス様にお会いできるわ!)


 そう意気込むと二人に見送られながら、屋敷を出発するのだった。



◆◆◆


〈シエナ視点〉

 

「さてと。では行きましょうか」

「ここで解散ですね」

「あら。本番はこれからですよ、グレース様」

「え?」


 キョトンとするグレース様に向けて、ニッコリと笑みを深めながら言葉を続けた。


「私達も王都に行かないと」

「!」

「見守ることしかできないかもしれませんが、影ながら支えることが、もしかしたらできるかもしれませんからね?」

「……なんだか凄く表向きの言葉に聞こえるのですが」

「あら。わかりました?」


 本心はとても気になるから見に行きたい、というものだが、それがグレース様には伝わっているようだった。


「でも私も気になります……ご一緒させてください」

「是非。二人で行きましょう」


 こうして私達は、影ながらフェリア様の恋路を見守ることにするのだった。

 

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