第230話 相談会という名の作戦会議


 更新遅れて大変申し訳ございません。

 今回のお話を勝手ながら、日曜日兼月曜日の更新とさせていただければと思います。


 次回更新は火曜日となります。よろしくお願いいたします。


▽▼▽▼

 


 私のお茶会準備は、ルナイユ様とシエナ様の助力のおかげで想定の半分の期間で終えることができた。

 

 今日はというと、ルナイユ様の恋愛相談会という名作戦会議を行うことにした。


「ごきげんよう、シエナ様」

「お招きいただきありがとうございます、レティシア様」


 シエナ様とは準備に関する話を手紙でやり取りしていたので、対面で会うのは久しぶりだった。


 先に到着したシエナ様に、最近知った事実を改めて確認する。


「フェリア様とはお互いの生誕祭に行く仲ですので、任せてください」

「お二人が親しいのを知った時は少し驚きました」

「意外でしたか?」

「いえ。よく考えたらとても納得できたので」

「ふふ。元々は家同士が親しいので、その流れで」

「そうだったんですね」


 ルナイユ様と会って話している時、協力者にシエナ様の名前を挙げたところ、繋がりが発覚したのだった。


 シエナ様を今回お呼びしたのは他でもない、恋愛経験者だから。私もそろそろ恋愛経験者を語れるのかもしれないが、まだ経験は浅いというもの。


 それなら、婚約者ができて数年が経つシエナ様の方が視野か広いというのが私の考えだった。


 軽くシエナ様と話をしている間に、ルナイユ様も無事到着した。


「本日はこのような会をお開きいただき、感謝の限りでございます」


 洗練されたカーテシーは変わらずで、今は恋する少女ではなく、完璧なご令嬢としてのルナイユ様だった。


 それぞれ挨拶を済ませると、シエナ様がルナイユ様の馬車を見て一言告げた。


「やはりフェリア様も……家紋のついてない馬車でいらしたんですね」

「えぇ。最近うるさい蝿が飛び回っていまして。エルノーチェ様のお茶会を滞りなく進めるためにも、最善の方法を取りました。シエナ様もでしょう?」

「えぇ。蝿は不躾にもこの大公城の回りにもいるとお聞きしましたので」

「お二人とも、本当にありがとうございます」


 そうなのだ。最近、うるさい蝿ーーマティルダ・ネイフィス様の偵察らしき存在が、大公城付近にたまに出るという報告をレイノルト様から受けた。


 レイノルト様は「潰しましょうか」と冷ややかに微笑んでいたが、考えた末に、泳がせる意味も込めて放置することをお願いした。


 いつも通り応接室に案内すると、ルナイユ様から「念のためお聞きするのですが」と前置きをしてから、私に偵察に関して尋ねられた。


「あの蝿、恐らくエルノーチェ様よりも大公殿下目当てだと思うのですが。……排除しますか?」

「……とても気分の悪いものですね。ですが、やはり放置させたいと思います。使い道がもしかしたらあるかもしれませんから」


 婚約披露会まで行って、婚約者だと紹介を受けたにもかかわらず、ネイフィス様の脳内からは私という存在が消えているようだった。


(それに、舐められた分だけ、後で必ずお返ししますから)


 私の意向を確認すると、ルナイユ様は微笑みながら「わかりました」と頷いた。


 今回の会の主役はルナイユ様なので、彼女の反対側に私とシエナ様が座る形で着席した。


「ルナイユ様。手紙でお伝えした通り、リトスさんはまだ侯爵家に籍は置いているようです」

「……」

「まだ籍を抜けないということは、フェリア様の想い人は、オーレイ領地を建て直すおつもりなんでしょうか?」

「お、想い人っ……!」


 シエナ様の予想外の言葉に、ルナイユ様はほんのりと顔を赤くして素早く反応する。


「あら、間違っていましたか? 正直、私のような立場の人間がどう呼べばよいのかわからないんですよね」

「た、確かにそうですけれど……」


 確かに、オーレイ侯爵でもなく、侯爵子息でもない。その上、リトスさん自身がオーレイ家を滅多に語らないこともあり、決まった呼び方がないのは事実だった。


「しょ、商会長様でよいのでは?」

「あら、そうでしたね。さすがフェリア様。よくご存じで」

「……基本情報ですわ」


 恥ずかしそうに、でもどこか嬉しそうにルナイユ様は微笑まれた。話に区切りがつくと、今度は私が動いた。


「話を戻しますと、現状籍を抜かない理由は、建て直す可能性が高いと踏んでいます」


 あの後レイノルト様から聞いた考えでは、建て直そうとしているというのが一番しっくり来るということだった。


「……ただ、あくまでも予想ですので、いずれ籍を抜くことも考えられます」

「ならば、行動は早く移すべきですね、フェリア様」

「……はい」


 ではまず何をすべきか。


 その問いの答えを、ルナイユ様は考えてきていた。


「私、まずはリトス様に存在を覚えていただくことから始めなくてはいけないと思うのです」

「そうですね。それが一番かと思いますよ」


 シエナ様は、間違いないという笑みを浮かべて反応した。


「エルノーチェ様、ちなみに本日リトス様はいらしてますか?」

「この後来る予定だと、伺っております」

「!!」


 ルナイユ様がどのような行動もできるように、当然ながら招待する日はリトスさんがいる日と時間帯を狙った。


「それなら私は、勇気を出してお話ししてみます……!」


 その瞳は、覚悟を決めたものだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る