第2話 皇子
簡単な幻術はサキュバスにとって基本的な能力だ。この能力を使って人間に天国をみせる、そうしやって存在し続けてきた。
「あ…」
ネルの体はあっという間に18くらいの若い女の体に姿を変えた。胸は大きく美しい黒髪を持つ。そして特徴的で胸元が大きくあいた派手なドレスは極東の国のものと似ている。そして極めつけは黒い瞳と真っ白で美しい肌。
「ボインボインだな。」
「うわあああああ」
驚いたのか青年は叫びかけた。しかし驚きのあまり大きな声が出なかったようだ。
「馬鹿!騒ぐな!」
しかし、これだけ叫んでも誰もやってこないとはこの国の警備はどうなっているんだ。
「本当に似ているよ…君は本当にサキュバスなのかい?」
「そうだ。この姿はお前の記憶から生成した厳格じゃ。お前、きれいな顔をしておいてこんなにオッパイが大きい女が趣味だったとは。」
ネルのもとの姿とは大きな違いだ。
「おっぱ…ねえぇ!君!僕が好きなのはオッパイだけじゃないから!彼女のことが全部好きなんだ!」
「フーーーン、でもやはり一番好きなのはこのオッパイじゃろ。スイカが二つ付いてるぞ。」
慌てる青年が顔を真っ赤にしたり青くしたりを繰り返すのが面白いので調子に乗ってスイカを揉みしだく。ハリがあっていいスイカだ。
「だめだ!君!もとの姿に戻りなさい!」
調子に乗りすぎては交渉に失敗してしまう。警察に突き出されては元も子もない。ネルがサキュバスであることは青年も身に染みてわかっただろう。幻術を解いた。
「からかってしまって申し訳ないのじゃ。お前がわたしを見逃してくれたら、お前の恋路を応援してやってもいいぞ。この百戦錬磨のサキュバスが!」
青年は恨めしそうにこちらを見る。
「ほんとう?」
「あたりまえじゃ。あたりまえじゃ。そこらの令嬢くらいなんてことないのじゃ。」
顔もいいし、家柄もよさそうだから特に何もしなくても何とかなるだろう。
「相手が侯爵令嬢でも?」
「え?」
侯爵令嬢となると話が違う。政治が絡むとサキュバスの力を以てしても恋を実らせるためには大方政治次第となるだろう。そしてさらに大きな問題は…
「じゃあお前の身分は…」
「ジェキア王国の第一皇子フェルナンドっていうんだ。よろしくね。」
第一皇子?ということはこいつの恋が実ったらあのオッパイ女が女王になるかもしれない、ということか。うーん、少し厳しいものがあるな。伝統を重んじる皇室があのような派手で極東のオッパイ女を迎えるとなると…荒れるだろうなあ、色々と。調子に乗って余計なことを言うんじゃなかった。
「素敵な人なんだ。みんなは彼女を悪く言うんだけど本当に素敵な人なんだ。」
フェルナンドは優しく色気のある緑の瞳を細めた。思い人を想う顔はかわいいと感じた。なんというか、応援してあげたくなっちゃうというかおこずかいを上げたくなってしまうというか。
「お前は本当にあいつのことが好きなのじゃな。」
「そうだよ。彼女は全然僕のことに興味が無いけど。」
「正直サキュバスは政治や社交界のことはさっぱりわからんし干渉もできん。しかし情熱を唄うこの国のことは好きじゃ。協力をしてやろう。」
くちに出した瞬間しまった、とおもった。しかし、言葉はすでに言い終えていて手か会は出来ない。情に操られてしまったか。いや、良い。人間に干渉するのはこの国らしくていいじゃないか。
「本当に!?ありがとう。君の名前は?」
フェルナンドの顔がパッと明るくなった。やはりこいつはかわいい。
「ネルと呼んでくれ。これでもサキュバスを束ねる王の役割をしている。よろしくな。」
「こちらこそよろしく!」
ネルはフェルナンドに抱きかかえられる。
「おい!やめろ!わたしはおまえよりはるかに年上なんだ!敬え!」
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