機神、惑星ヘブンに立つ 14

14.決戦、未明島 2


 落ち着け。冷静になれ。自分に言い聞かせる。

「わざわざ来てくれてありがとう。でも私は思うんだが、登場の仕方がワンパターンじゃないか?地味だねえ。もっと派手に出てくることは出来ないのかい?」

「そんな見えすいた挑発に我が引っかかるわけがないだろう。まあ以前の我であれば乗っていただろうがな」

 どういうことだ?

「そうか。だが本当にそれでよかったのかな?オーゼ」

「これからは我の好きなように、我の計画通りに進めるまで。これはただの身体だ。なんの問題があろう?」

 とりあえず推測だ。オーゼと逢世、二人は一つだった。だが今はそうじゃない。

「つまり前は二人が混ざり合っていたが今は完全に別々だって言うことか?」

「ほう。意外にも頭が回るようだな、エヴォリスよ」

 となるとあの女の意識が完全に飲み込まれたってことになる。

「なあ!まずいんじゃないかこれ?」

「大丈夫。これが正解だ」

 どこがだよバリゴルン。これじゃあ計画が台無しじゃないか!

「随分と余裕だな機神よ。もうじきお前は我の物だ」

「どうかな?そう簡単にはいかないよ!」

 その言葉と同時に、戦いは再開した。


*********


 戦いはやはり劣勢だ。

 無人機はただ倒せばいい。だから楽だ。だが有人機を前に、つまり盾にしながら後方から撃ってくるオーゼの機体や周囲の無人機が目障りだ。

 それにアンテナ部分を破壊しなければまた別の機体がリンクして向かってくる。

 倒した有人機のパイロットも保護しなくてはならない。圧倒的に不利だ。

 しかし向こうも焦っていた。催眠が切れればパイロットが目覚め、機体リンクの影響で脳が焼き切れてしまう。彼らもあくまでアンテナなのである。

 それがなくなれば持ち駒はよくて12機と一気に減ってしまうのだ。

 だから、この状況が動いた。

「優勢だが劣勢。劣勢だが優勢!面白い!取っておくつもりだったがこの状況では仕方ない。戦力投入だ。来い、スパパイドンッ!!」

 その声と同時になにやら遠くより音がしているのに気付いた。これは近づいてくる音だ。どんどん近くまで来ている。

「なんだなんだなんだってんだ!?」

 慌てふためくトッパ。覚悟していた。

 恐ろしいものが来るのだと。

 ただでさえ劣勢なのだ。これ以上は無理なのだと諦めかけたその時!それは現れた!

 だがそれは思っていたものとは違っていた。来たものはアームヘッドだ。

 だが私はそれを知っている。心で覚えている!

 銃の腕をしたそいつを!

 そうだ、あれは!

「デザートサンド ア・ラ・モード!!」

 誰が乗っているのだ!それに何故直っている!

 そんな疑問を消し飛ばすかのように、私たちを囲んでいたエボシたちを上空から何体も始末していく!

 その行動がこれは味方だと教えている!誰がなんて考えなくてもわかる!

 あいつしかない!

「待たせたな。呼ばれたから来てやったぞ」

 一久。石田一久だ。ある程度片付いたからかコックピットから体を出している。

「何故だ!何故貴様がここに来る!貴様は必要だが別に今ではないのだ!誰だここに呼んだのは!」

「お前が呼んだんじゃないか。わざわざメッセージまで寄越したくせによ?失礼しちゃうね」

 なにがなんだかわからない。一体どういうことなのだ。

「言っただろ。分離して正解なんだよ」

 ますます訳がわからない。

「あの二人はもう、別々なんだよ。プライベートってやつだ」

「はあ...」

 わかったようなわからないような、そんな返事をしていた。

 一久の方はデサラから降りて来て私に面と向かってきた。

「トッパ、俺は決めたぞ。お前たちに協力する!とことんまで巻き込まれてやる!それでだ、すまないがお前らを俺に巻き込む!だからついてこい、力貸しやがれ!」

「ちょっとなに言ってるかわからないですね」

 だがとてつもなく頼もしい。色々言ってしまったが、やはりこいつは頼りになるやつなのかもしれない。

「キィエエエエエエエエエエエッ」

 突如として奇妙な咆哮が響く。

「なんだ!?」

「あの女め。余計なことを。いやそれを教えたのは貴様か、機神よ!だがもう遅い。スパパイドンが来たのだ。これで貴様らを始末しお前を連れ帰る!」

 巨大なクモ、赤いからきっと毒グモだ。鋭い牙は強靭そうな顎によって見るからに凶悪な武器だ。

 だが何よりも恐ろしかったのは、私たちが倒したエボシのパイロットを食おうとしたことだ!

 咄嗟に体が動く。敵だ。だが関係ない。彼らに対して恨みは全くない。むしろ目の前で殺されてしまう方が後味が悪い。だから助けるのだ。

「やっぱお前はそうだよな。よし、バリゴルン!あの人たちを安全なところへ逃してほしい。多分乗って来た船が一番いいはずだ。もしあれと同じやつがいたら、まあお前なら一捻りだろ。最悪船から追い出すだけでいい。とにかく任せた!」

「良いだろう。任された」

 え。最高戦力をそれに回すのかよ?じゃあ誰があれと戦うというのだ。

 だがバリゴルンに何か言う前に、彼は人を担いで一時この場を離脱してしまった。


*********


 どうやら策があるらしい。でもそれはなんだかとても嫌な予感がする。

「トッパ、今からお前にエネルギーをくれてやる!だから進化しろ!そんでそのクモと戦え!俺は俺でこいつを何とかするからよ!」

「だが一久、お前どうやって....。私がこの世界では力を使うことができないことを知っているはずだ」

「ああ、もちろん知ってるさ。だからこいつを使うのさ!」

 そうして取り出したのは何かガントレットのようなものだった。

それを見たオーゼが思わず言葉を漏らす!

「それは、ビルダブレスだと!?いや形が違う...。あんなもの我は知らん!一体なんなのだそれは?!」

「これはビルダローア、俺のじいさんの置き土産さ。さあ行くぞトッパ!覚悟を決めろ!」

 向けられる銃口、そして放たれる緑色の光線。それはトッパへと直撃し....

「ウォォォォォォ!!!!力が溢れる!行ける、行けるぞ!」

 彼の体が光へと包まれた!

 そして叫んだ!そのための掛け声を!

「エヴォリスクラスアップ!」

 進化、それはエヴォリスの力。エネルギーを身に纏い、戦うための姿となる『闘体形成』のことを指す。

 本来であればこの世界では不可能な事実。それを捻じ曲げ、トッパの姿が、変わる。

 光の中に見える!見えるぞその姿!

 見よ!腕に!脚に!全身に!備えし銃口砲門は、どこに敵がいようとも、狙いは外さぬ意志の表れ!

 胸のキャノンは漢のロマンッ!

 彼の名が!銃が!全てが!今、火を吹く!

「トッパッ!バスタァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!!!!!」

 これにて『闘体形成』、完了である!

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