機神、惑星ヘブンに立つ 13
13.決戦、未明島
はっきり言おう。ピンチだ。
「話が違う!敵の数が多い!やっぱりあいつを信用したのがバカだったのだよ!」
「落ち着けトッパ、きっと何かがあったのだろう。ワタシの見立てだと…」
「どうせオーゼの仕業だと言うんだろ?たとえそうだったとしても、私たちがピンチな今がその結果だ!」
言い合いをできるくらいにはまだ余裕がある。大丈夫、まだいけそうだ。
*********
そもそもこの状況のきっかけを思い返せば昨日のことである。私たちは極盛逢世とある作戦を遂行することにした。
それはこの惑星で静かに暮らすために必要なこと。私たちの存在をなかったことにすることだった。
「なかったことに」とは、なにも死ぬというわけじゃない。証拠をなくすといいうことだ。
そもそもこの島は百丸が守ってくれなかったら、いまごろはすでに転王輪財閥とかいうところのものになってたらしい。
あいつの、逢世の言うことがすべて真実かどうかまだ疑っているが、そこのトップはどうやら私たちの存在、というよりも別世界の生物の存在を確認しているらしく、それもあってかこの島を狙っていたらしい。それを百丸がうまく収めていた。
だが百丸亡き今、この島はどうなる?
逢世は研究所を壊そうとしていた。だがそれは遺言だったからだ。
彼女は私たちのことを知らなかった。これが重要だったのだ。
おそらく転王輪のやつらは一久も、逢世のことも把握している。私たちのことを知らない方がよかったのだ。そして、知ってしまった以上、危険な目にあうことはもう目に見えている。
思えば余計なことをしてしまった。
*********
今行われている戦いはマッチポンプだ。いや、そもそも戦いですらなかった。
逢世が研究所を破壊し、オーゼを眠らせる。おおまかにいえばそんな感じだ。
ある程度島を壊させるだけで、戦う必要もなかった。それですべてごまかせると思っていた。
だが甘かったようだ。
朝、この島に来たのはエボシというアームヘッドが60体だった。過剰すぎる。最初は何かの冗談かと思った。
そしてほとんどが無人だった。
エボシは4体までしか常人には同時に操れないらしい。12体同時に動かすことも可能だが、脳への負担はかなりのものとなると聞いた。
だがすべて確認しても人が登場している機体が11体だけだった。
ならば考えられることは一つ。所員を媒体として60体すべてを操っている。こんなこと人間が出来るわけがない。こんな非道なことが彼女にできると思えない。
認めよう、これはオーゼだ。おそらく逢世は悪くない。彼女なりにも頑張ったのだろう。
*********
考えている間にも、敵はとにかくやってくる。
やはり量産型無人機、コツさえつかめば私でもなんとか倒すことが出来る。それでもまだ8体しか倒せていない。やはり数が多すぎる。
加えて厄介なのは人が乗っている指揮官タイプ。所員は媒体として使われているから意識はない。つまり見られてもいいわけだが、けがをさせるわけにもいかない。
彼らの相手はバリゴルンがしている。
オーゼはこの場にいなかった。やつの乗るものだけが未だに姿を見せていない。
こちらの様子を窺っているのだろう。
策はこちらにもある、あとはタイミングだけだ。今だ!
「あいつを引きずり出してやる!いけるかバリゴルン!」
「大丈夫だ!では行くぞ!」
バリゴルンが右腕を上げる。そして何かをつかむように手を握った瞬間!
エボシたちがガタガタと音を立てその場に膝をついていく。
「よし、成功だ!バリゴルン、次だ。さっさとオーゼのもとへ!」
簡単なことだ。遠隔操作の無人機ならば電波を遮断すればいいのだ。機神の力を持ってすれば容易い。
いける、勝てる!
「思ったよりも楽勝だと思っているんじゃないか?お望み通り出てきてあげたのだから、もっと気を引き締めてほしいものだね。トッパ・ハッパ君」
しかし望んではいた奴は、心の準備が出来ぬまに来てしまったのだった。
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