機神、惑星ヘブンに立つ 11
11.秘密は誰でも 3
デサラ。正式名称は『デザートサンド ア・ラ・モード』。俺のじいさんが作ろうとしていたアームヘッド。その完成品が目の前にあった。
頭痛が収まる。こつんと響く音がする。何かが落ちた。信じがたいがそれはどうたら俺の頭の中から出てきたらしい。
これは見たことがある。コアだ、エヴォリスのコア。青い色をしている。トッパのはたしか緑だったな。
だが考えるべきはそれじゃない。
「とりあえず拾っておくか」
そうしてコアに触れた瞬間…。
**********
「とりあえず君たちが何者なのかも知りたいが、まずはコアってなんなのかを教えてくれると嬉しいな」
普通に疑問に思っていたことを聞いてみる。
「コアには記憶などが蓄積される。破壊やリセットされない限りそれを基にして復活できるのだ。いわば私たちの命のようなものだ」
「だが、特殊な使用方法も出来るようだ。例えば記憶の一部を封じ込めることも可能だそうだ」
「なんだよそれ?聞いてないぞ!?」
「それもそうだ!ワタシもついさっきまで知らなかったのだから!」
答えてくれたのはいいものの、どうやらまた置いて行かれそうな気がした。
「バリゴルン、だっけ?じゃああなたはどうやってそれを知ったの?」
「一久と簡易的なリンクを行った。これはお互いに情報を見せ合うものだ。本来であればそのまま機神としての能力を行使するためにも、本格的なリンクに移行したかったのだが…、残念ながらそれは出来なかった」
「それはどうして?」
「私もそこが気になった、教えてほしい」
「ワタシ達はこの世界の異物。それをどうにか誤魔化すために機神は自分たちの世界を広げる力を持っているのだ。それによってトッパがこの世界、この惑星において行動できるのだ。そして世界を広げるワタシの中もまた別世界、適合率が高ければ高いほど搭乗者は別世界の存在に、そして最悪の場合は消滅だ。普通ならばな、しかし彼は、一久はコアを持っていた!それが問題なのだ!」
「でも適合率が高いとデメリットはあっても、強い力が出せるのなら、なぜトッパを乗せないんだ?」
「それは…」
言い淀むバリゴルンに変わってトッパが答える。
「それは機神は別世界のもの同士の反発する力で動くからだ。言ったら悪いが適合する人間は使い捨ての電池みたいなものなんだよ」
「そんな!じゃあ一久はそれを知っているのか!教えないでお前らは利用しようとしたっていうのか!」
「できるのなら私が乗ってバリゴルンを故郷へと帰している!それが出来ないから、あいつに、一久に頼むことにしたんだよ!それにその辺はちゃんとあいつも理解していた!大丈夫だと百丸も言っていたんだ!」
「だが駄目だった。コアを持っていたことで彼も知らないうちにエヴォリスに近づいてしまっていたんだ。もしこれがコアを埋めて間もないころだったならば、デメリットも防げていたのかもしれない。だが完全なエヴォリスでもない、しかし人間でもなければ、拠り所がなく、消滅へと一直線なのだよ。それは絶対にあってはならないことだ」
彼らなりにも罪悪感というものがあるようだ。だが待ってほしい。
「ねえ、コアに記憶を封じ込められるって言ってたけど、それって結局何。一久の記憶の一部が入ってるということなの?」
「そうだ。それも彼が忘れたことさえ知らない記憶がね」
でもその内容は教えてくれることはなかった。でも、なんとなくわかった気がする。それがどういうものなのか。
**********
この感覚は今日二回目だ。頭の中に映像が流れ込んでくる。だがそれを俺は知っている。これは記憶。俺の記憶。
かつてこの研究所で起きた事故。俺が危険だから入るなって注意されてたのに勝手に機械を触ってしまったから起きたんだ。
出来心だった。それだけだった。でもそうはいかなかった。
デサラにある力、存在を消す力、これが暴走した。父さんと母さんは俺をかばって跡形もなく目の前で消えてしまった。
俺はしばらくふさぎ込んだ。部屋にこもっていた。夜は眠りたくなかった。寝ればずっと怖い夢ばかりだった。自分のせいだって責めて責めて責めて責めて責めて責めて責めてもうわけがわからなくなっていた。
そんな時だ、じいさんは俺にコアを埋めたんだ。この記憶をコアに入れ、俺はこのこと忘れたんだ。
でも逃れきれなかった。わけのわからないトラウマとして残ったらしい。俺はアームヘッドに乗ることを極端に恐れるようになった。
そのせいで無理やり入れさせられた高校では苦労した。アームヘッドの部活があったのだ。
等式理とも会ったのはその部活にいれられそうになったときだったっけな。結局入らなかったのだが、今でも彼女はよく相談に乗ってくれる良いやつだ。今回だって船を貸してくれたし。まあその船は島に置いてきてしまったのだが…、あとで謝っておくとしよう。
とりあえず、今目の前に問題のデサラがここにある。いろいろと思い出しているうちに時間が経ってしまったようだ。すっかり日が暮れていた。
「乗ってみるか」
俺自身何を思ったのかデサラへと乗り込む。狭い。でも不思議とアームヘッドに対する恐怖心がなかった。
たしかこれ量産型として設計されていたんだっけか。その割に取り付けようとした機能が豪華すぎるんだよなあ。無茶苦茶だよ。存在自体を消す機能なんて。そんなものほとんど調和能力じゃないか。
突っ込みどころ満載だな。でもそれが完成している。嬉しいやら怖いやらもうわからない。
「そっか、もう気にしても仕方ないか」
ほんとはこんな言葉で済ませていい問題なのかはわからない。でも今、とても落ち着いている。
狭い機内を見渡す。すると手紙が挟まっていた。
それはじいさんからのものだった。
**********
俺はこれからどうしたらいいのだろうか。手紙の内容はまた不安や問題ばかりを運んできた。じいさん、前々から思ってたけどやっぱちょっとずれている。
そんなことを考えていた矢先である。地上から地下の天井を突き破って何かが落ちてきた。どうやら録音機のようだ。
こんなとこに偶然落ちてくるわけがない。これは意図的なものだ。だからとりあえず再生する。
『明日、未明島に総攻撃を行う。機神とエヴォリスを守りたいのなら来い。だが来ないのも自由だ。お前の好きにしろ』
なんだか勝手な内容だ。こんなもの来いと言っているようにしか聞こえない。
だが俺の答えは決まった。すべきことをする。それだけだ。
だから、まずは寝るとするか。
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