機神、惑星ヘブンに立つ 7
7.そして動き出す
どういうことだ?じいさんがバリゴルンをこの姿にした?そもそもエヴォリスでもラジャでもないんだったらお前は何者なんだ?
多くの疑問が俺の中で飛び交う。
「一久、この際あれだ。バリゴルンに触るんだ。それで全部わかるはずだ」
「いやどういうことだよ?余計わかんねえよ!?」
「そうだな。たしかにそれが一番手っ取り早い」
「お前も!?勝手に2人で納得しないで!?説明して!?ねえ?説明!?」
完全にこいつらのペースに呑まれていた。だがわからない。なぜ触ればわかるんだ?
だが多分触らないと何も動かないのも事実だ。
だったら、やるしかないってもんだろ。
そして俺は、バリゴルンの胸のコアらしきものに触れる。
すると。
「ウェ!?ウアアグァァァア!?????」
頭の中に映像が、記憶が、知識が、何もかもが流れてくる!?なんだこれは?なんなんだこれは!?
「すごい。本当に全てがわかった。ならなんでこれを最初からしなかったんだ?」
「ああ。それはだな。やはり話すことは楽しいか・・・!?ダメだ一久、今すぐ手を離せ!」
バリゴルンが急に叫んだ!
「なぜだ!?このままいけばお前らの目的だって達成出来るはずなのに!」
そうなのだ。俺は見た、そして知った。バリゴルンの過去を、苦しみを、そして願いを。できることならじいさんに代わってそれを叶えてやりたいとまで思った。だが俺は出来る。俺ならそれが出来るのだ!それを期待して呼んで置いて何故だ!?
「トッパ!一久を引き剥がせ!このままでは彼が・・・。彼が!」
「わ、わかった。すまん一久。私にもよく分からんが失礼させてもらうよ!」
無理矢理俺とバリゴルンは繋がりを絶たれた。急な怠さが俺を襲う。どうやらかなり体力を持っていかれたようだ。
俺の疑問は全て解消された。だが新たな疑問が俺をモヤっとさせる。
「バリゴルン、なぜだ?なぜ止めた?」
「すまない一久。それにトッパ。どうやらワタシの願いは諦めなければならない。君に故郷を見せることは出来なさそうだ・・・・」
そう言いながらバリゴルンがこちらを見る。どこか申し訳なさそうな雰囲気を漂わせていた。
対してトッパの方は平気そうだった。
「別にいい。私の故郷はここだ」
2人は納得していた。だが俺は納得できない。
「何勝手に決めてんだ!俺を巻き込んでおきながらそれは許さねえぞ!絶対にお前らを送り返してやる!この島ごとだ!」
俺は決めた。これはじいさんの悲願でもあるのだ。あいつらが勝手にそうするのなら、俺も勝手にしてやる。
「バリゴルン、俺を乗せろ。俺は適合者なんだろ?お前の力を引き出して、今の状況全部ひっくり返してやる」
「そうだな。それが出来るのならやってくれないかね?イッキュウ?」
この場に響く新しい声。それは逢世さんのものだった。遂に追いつかれたらしい。
「極盛逢世か。だが君はどうやら人間じゃなさそうだね。その雰囲気はラジャのものだ。なら君は一体何者だ?」
バリゴルンが俺と逢世さんの間に割って入る。やはり俺の知ってる逢世さんじゃないようだ。
「そこまでわかるのか?どうやらお前の方は覚醒し始めたらしいな。だが肝心の中身がまだか。なら失敗だな。イッキュウ、やはりお前はここで死ね」
「嫌だね!どうしても言うならお前の名前を答えろ!」
その時、俺は強気だった。力を手にしたつもりになっていた。こんなふうに言い返すことなんて今まで出来やしなかっただろう。
「名か、そんなもの捨てた。体も捨てた。これはただ借りてるだけだ。私が欲しいのは楽しみのみ。それ以外には何も無い。だがそうだな。一応オーゼとだけ名乗っておくとしよう。どうだこれで満足か?」
あ?逢世だからオーゼってか?ふざけるなよ?自分で捨てといて勝手に借りて。名前まで奪うのか貴様!
激しい怒りが込み上げる。こいつを、こいつをどうにか殺し、逢世さんを助ける。
そのためにはバリゴルンに、『機神』に乗らなくては!だが当のバリゴルンは俺を遮った。
「トッパ、彼を島の外に出せ!オーゼはもちろんだが、今は彼の方が危険だ!」
・・・・俺が危険だと?どう言うことだ?
また手首を掴まれる。
「逃すと思うか?」
「ワタシが何もしないとでも?」
バリゴルンがオーゼを足止めする。
そうして、さっきと同じように俺はトッパに連れられてこの場から逃げることとなったのだった。
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