機神、惑星ヘブンに立つ 6
6.話すきかい2
結論から言おう。ワタシたちは元々ここではない世界の住人だ。
「並行世界ってやつか?」
そうとも言えるしそうでないとも言える。ワタシがいた世界は『空間』とだけ呼ばれていたからな。だが詳しいことはワタシにも分からない。君のおじいさんなら分かるのかも知れないな。
「多分。大学ではそれが専門だったみたいだし。にしても機械みたいな見た目しているのに生き物なのか」
それについては後で話そう。まだ先に言うことがあるのだ。
『空間』では二つの種類の存在がいる。そのうちの一つが小型の『エヴォリス』。君をここまで連れてきたトッパがそれだ。特徴としては体のどこかにクリスタルのようなコアを持っていると言ったところだ。これさえ無事ならいくらでも復活出来るのだ。
そしてもう一つが『ラジャ』。こっちは人と同じくらいのサイズの姿だ。とにかく強いというのが特徴でな、生まれた時点で全ての力が頂点という存在なんだ。
「じゃあ、バリゴルンはラジャなのか?」
いや、ワタシは元々エヴォリスだ。ところで君は知っているかな?この島の有名な噂話を
「確か未明島は空から落ちてきたってやつか」
そう。それは事実だ。ワタシはこの島ごとこの世界に落ちてきたのだよ。
「まじかよ!?あれ、でも待てよ。お前ら2人なのになんでバリゴルンだけなんだ?」
「ああ、それは私がこの島で生まれたから」
ちょっとしたアクシデントがあったのさ。だがそれがエヴォリスとラジャ、それぞれの平和を跡形もなく破壊した。この『未明島』はその結果の一つに過ぎないのだよ。
「ほーん。で、今のあんたの姿はなんだってわけ?」
そのためにエヴォリスのもう一つの特徴、いや、能力について説明しないといけないのだ。
「まあ手短に言えば私たちはこの身で強大なパワーを操って、戦うための姿や特殊な能力を使うことが出来るんだよ」
トッパ、勝手に説明しないでくれないか?話しているのはワタシだ。
「話が長い。さっき説明しただろ?今私たちは何者かに襲われかけてるって」
ああそうだった!すっかり忘れていたよ。何しろ君以外と話す機会が全くなかったのだからね。つい楽しくなってしまったよ。
「あんたら今までよく大丈夫だったな?島には調査隊とか来てただろ?それこそ俺のじいさんとかが」
そうそう。最初は頑張って隠れたり追い払ったりしてたのだがね、君のおじいさんには見つかってしまったのさ。だが彼とは引力的な何か感じて結果意気投合。そして彼がワタシをこの姿にしたのさ。
「へえ…え!?ちょ、待っ、えええ!??」
**********
一応研究所内を見回す。目当てのものはない。よし、壊すとしますか。
ヘッドセットをつけ、12機全てに指令を送る。
立て続けになる砲撃音。みるみる壊れていく建物。元々依頼されてたのだ。なんてことはない。
少し頭が揺れる。仕方ない。簡易的なAIを積ませているが、それでも普通の人間では4機を同時に操るのが限界だ。
エボシは12機で1セット。隊長機でなら遠隔操作で動かすこともできるが、それはではたったの一機だけ。結局は別の場所から操縦しているだけだ。
そんなのでは既存の量産タイプを越えるアームヘッドは作れない。だからこのプログラムを無理矢理組み込んだのだ。初使用の使い心地は最低だが、改善方法もないわけではない。
まあそれはもっと非合法的なものなのだが・・・・。
大体建物は崩れた。あとは瓦礫の中を漁れば、あいつらが逃げた道がわかるというものだ。
また指示を出す。吐き気がする。
大型の重機でしらみ潰しに探すのだからそんなに時間はかからない。だが脳に負担がかかりすぎる。さっさと見つけろ愛すべきでくの坊たち。
そう思った矢先、動きが一斉に止まった。どうやら入り口を見つけたらしい。
「さあて。追いかけてやりますか。だってまだ始まってすらいないのだからねえ?」
そして逢世は穴に飛び込んでいったのだった。
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