機神、惑星ヘブンに立つ 5

5.話すきかい


「所長!大丈夫でしたか。何かあったみたいですが」

 さっきの騒ぎで所員の一人が来てしまったようだ。あの二人は見当たらない。どうやら逃げられたらしい。まあいい。

「いや。ちょっと小うるさいねずみがいたものでね。それはそうと待機しておくようにいったはずだが?」

「すみません。心配だったもので。あとネズミですね。ネズミ捕りでも用意しますか?」

「馬鹿者!私が言ったのはそのネズミじゃない!コソドロという意味だ!!」

「は、それは失礼しました。で、そのネズミとやらはどのように?」

「いまあるエボシの操作権限、それを全部私によこせ。どうせすぐに島から出られるわけじゃない。だったらこの研究所の破壊ついでに始末してやる」

「それは良いのですが…。一人で12機すべてを操るのは脳に負荷がかかりすぎるから駄目だと所長自身がおっしゃっていましたよね?ほんとうに何があったんですか?」

 小うるさいやつだ。私の言うことをただ聞けばいいというのに。

「なんでもいいでしょ?あと今いる所員全員をこの島から出せ。一斉放火するから巻き込まれることになる」

「建物一個に対しては明らかにオーバーキルかと思われますが、命令ならば仕方ないですね。ではエボシを残し、全員を退去させます」

 そしてそいつは研究所を出て行った。準備ができるまで一息つくとしよう。


**********


  目を開けると薄暗い空間だった。

「気が付いたようだな。すまない一久、ほんとは同意のうえで君を連れていきたかったんだがな」

 助かったのか、俺。トッパのおかげか。

「ありがとなトッパ。なんかよくわからないけど助かったよ。だから、お前には思うところがいろいろあるけど、この借りは必ず返すと約束する」

「そうか。じゃあまず自分の足で歩いてくれないか。重い」

 今気づいた。足が引きずられている。そうか、背負われてるんだな。

「あ。ごめん。でもなんか妙に焦ってない?それってもしかして逢世さんのこと?」

「そうだ、あいつのことだ。なぜあいつがエヴォリスを知っている。不思議だ。私たちのことは誰にもばらしていないと百丸は言っていたのだが…」

「ああ、そういえばお前『私たち』って言ってたな。なんだ、お前以外にも仲間がいるのかよ。ていうか『エヴォリス』って何?」

 トッパにあわせて急ぎ足で通路を移動する。ほとんど成り行きで動いているけどどこへ向かっているのだろうか。

「それは後で説明する。あともう少しだ。ペースを上げるぞ」

 まじかよ。ていうか何その速さ。置いてかれてるんだけど。背負ってくれてたほうが速かったんじゃないのか?

 でも早く走らざるを得なかった。突如として後ろから鳴り響く轟音が無理やりにでも俺を走らせたのだった。


**********


 急に空間が金属とかそういうのから自然のものに変わった。洞穴だろうか。

 先に着いていたトッパが今か今かと俺を待っていた。どうやらここが目的の場所といったところか。

「遅いぞ。彼が待ってる」

「無茶言うな。こちとら帰宅部のエースだ。超単距離走者だぞ!?」

 まだ言い返せるくらいには元気だった。でも、「彼」ね。ここまで来たら『あるもの』についても知りたいと思っている自分もいた。

「バリゴルン、一久を連れてきたぞ」

「そうか、トッパ。ご苦労だった」

 少し影になっているところから声が返ってくる。何かが歩いてくる。だがそれは想像していたよりも重いものだった。

 だって現れたのは、特徴的なデカい腕をした緑色のロボットだったのだから。

「初めまして一久。ワタシの名前はバリゴルン。元気な君に会えて嬉しいよ」

 これは驚いた。だが今日は驚くことが多すぎる。なんだか慣れてしまって疲れを感じたほどだ。

「あー、えっと、はじめまして、バリゴルン…さん?」

「そう固くならないでいい。そうだな、少し話をしよう。君も知りたいはずのワタシたちのことだ」

「だが時間がない。手短にまとめてほしいんだバリゴルン」

「わかっている。大丈夫だ、安心しろトッパ。長くても10分でまとめるから…」

 え、結構長くない?大丈夫?

 だがそんな心配をよそにバリゴルンの話が始められた。

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