機神、惑星ヘブンに立つ 3
3.出逢い
声のする方へ振り替える。しかしそこには何もいなかった。気のせいだろうか。だが、さらに声が続いた。
「下だよ。下を見てくれ」
言う通りにする。ほんとに居た。小さい人型の何かが。大体1mくらいだろうか?
ていうか近い。そんな小さいのに近くにいたんじゃ見えるわけがないだろ。
とにかくその小人は話をつづけた。
「私はトッパ。トッパ・ハッパだ。君を待っていたんだ。10年間もこの島でね」
どうやらトッパという名前らしい。だが今一番聞かなければならないことがある。
「トッパ、お前がこの手紙を寄越した、それでいいんだな?じいさんが亡くなったのも事実なんだよな?」
「ああ、そうだ。君を呼んだのは私で、君のおじいさんである百丸が亡くなったのも事実だ」
嘘は言ってなさそうだ。だが俺にはいろいろ聞きたいことがある。
「とりあえずいいか、なんでお前がそれを知っている?」
別に俺を呼びつけたのはどうだっていい。でもどうして俺が最初じゃなくてこいつなんだ。それが知りたい。
「それに関してなんだが、実は百丸からの伝言なんだよ。『もし三日経ってもこの島に戻ってこなかったのならば、私は死んでいると見なしてくれて構わない』とね。だから…」
「はぁ!?お前?それを信じてるのか?その言葉を鵜呑みにしてじいさんが死んだと思ってるのか!?ふざけるなよ!」
「話を最後まで聞け!いいか!これは一年前の伝言なんだ!そして百丸は今もこの島に帰ってきてないんだよ!」
なんだよそれ。じゃあ俺ほんとになにも知らないし、知らされてないんだな。
「それに最後にあった時の百丸はどこか慌てているようだった。もしかしたら何かに巻き込まれたのかもしれない。だがもう一つ君に話すことがある」
「それは俺をここに呼んだ理由か」
「その通りだ。そしてそれが君のおじいさんと私たちの悲願でもある」
「じいさんの悲願?」
「詳しく説明したいのやまやまなんだが、どうにも急がなければならない状況になってしまった。こんなはずじゃなかったんだがな…。とにかく君に、あるものに乗って欲しいんだ!」
悲願については気になる。でもそれ以上に「あるもの」というのが引っかかった。もしそれがじいさんの研究から考えるならば、答えはアームヘッドしかない。だがそれはまずい。とてもまずい。できれば乗りたくない。
こいつは何かを期待している。だがそれに応えることは出来ない。そもそも俺はアームヘッドに乗れないのだ。見るだけでもめまいがしそうになる。
いや、いきなり会ったやつのために頑張る道理はないのだけれど。
「なあ、そのあるものってアームヘッドなのか?」
「いや違う。それとは別のものだ。だが君はそれを使って世界を変えることが出来る!」
あ。…う、嘘だなこれは。うん。嘘だ。この得体の知れない小人は俺を騙そうとしているに違いない。世界を変えるだって?そんな出鱈目な話、あるわけがない。
早く逢世さんに知らせよう。こいつよりもよっぽど信頼できる。さあ助けを求めろ!今すぐに!
「逢世さん!一久です!なんか変なのが居まああああああああああす!!!!!」
「おい馬鹿お前やめろ!?あれはなあ、誰にも知られちゃいけないんだよ!」
何言いやがるんだこいつ。
「どう考えてもお前みたいななんかわからないやつより知ってる人信じるだろ普通!お前の方こそ馬鹿だ!」
「言いやがったなお前!島に攻撃してるんだぞお前が信じようとしてる人!信頼できるか普通?」
「うるさいな!大体百歩譲ってじいさんが亡くなってるのが事実だとしよう。それを教えてくれたのは感謝している。だがその後に言ってることはなんか詐欺だ!詐欺の導入だ!この詐欺師め、俺を嵌めようったってそうはいかねえぞ!」
「んだとテメエ!?いくらなんでも言って良いことと悪いことがあるだろうが!もういいテメエに頼んだ私が馬鹿だったよ!」
その後も言い合いは続いた。だがそれも長くはなかった。
「うるさいぞイッキュウ。呼ばれたから来てやったというのに。高校生になっても中身はまだまだガキだな。それよりもお前、島に何しに来たんだ?」
何故なら逢世さんがやって来たから。でも俺が知ってる記憶の中の逢世さんとどこか違う。雰囲気が違う。
目が赤い、でも徹夜したとかそういうやつじゃない。
凛としたポニーテールから殺意のようなものが飛んでいる。
なんだか、怖い。
そう思った矢先、あの人はこう言い出した。
「まあいいか。うん都合が良い。なあイッキュウ。とりあえず死んでくれないか?」
内容に見合わず、とても軽い調子で、その言葉たちは俺に向かって放たれた。
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