まずはプロローグをご覧下さい。この、雰囲気たっぷり、不穏な、そしてどこか懐かしい世界観を! この雰囲気が気に入ったら間違いありません。
舞台のマップが近況ノートに用意されているので、是非そちらもご確認ください。
私はご近所徘徊ホラーゲーム『夜廻』的な雰囲気を感じて拝見したのですが、作者さまいわく夜廻の他に『夕闇通り探検隊』にもインスパイアされたとのこと。
擬音が多いやわらかな文体も、ジュブナイルや児童文学めいた雰囲気を強調して「子供の世界の怪異」という味わいがあります。
最初は毎回愛犬のお散歩をしてお参りをして、その行き帰りなどに怪異と出会うのかな……と想像していました。が、散歩やお参りのシーン自体は少なく、三兄弟が舞台の「こうべ町」のあちこちで怪異と遭遇するさまが続きます。
また序盤はそこまで怪異要素は控えめなのですが、三兄弟の穏やかな日常が描かれる様に「この子たち好きだなあ」と自然と感情移入できて、そこが後の展開にきいてきます。
「0日」を起点にひるがえるあれやこれや。それまで巧妙に隠された事実と、徐々に崩壊していく家族の絆。そして判明する「オガミ様」の真実。
家族のドラマであり、失ってしまった命を受け容れる「喪」の物語でもあるタソガレモモカ。楽しませていただきました。
ある日、末っ子の朝陽が行方不明になったが、兄・優日と姉・まひるは奇跡的に朝陽を見つけることができた。
しかし朝陽が見つかったのは、兄弟が『オガミ様』に祈り、それを叶えてくれた結果だと考え、三人は『オガミ様の百日詣で』を行うことにする。
百日後、家族を失わないために。
三兄弟は愛犬モモカの散歩がてら、毎日、『オガミ様』を詣でに行く。
日課になったその日常の中で、三兄弟はそれぞれ、様々な怪奇現象を目撃することになる。
……とこれが物語の大筋に辺りますが、幽霊や妖怪や人知の及ばない怪物によって命が狙われる……といったことはありません。
なんてことない日常の中で出会う不思議なオカルト体験、都市伝説のような存在、尋常ならざる奇怪な人物との遭遇など、まるで、現実と幽界が交差するかのような日々の中で、微細な恐怖が描かれます。
あまりに当たり前の日常の中で何気なく起こるために、実際に私たちが住む街中でも、気がついていないだけで、そういったことが起こっているのではないか、と錯覚しそうになります。
そして、本作は0日目を起点に、大きく見方が変化する作品です。
そこから次第に判明していく『オガミ様』の真相と、三兄弟の家族の思い出、そして、愛犬モモカ。
その中心で行動を起こすのが、姉・まひるであり、彼女の二人の兄弟に対する想いには胸がしめつけられます。彼女が突然置かれた境遇を考えると、くじけてしまっても仕方がないと思いました。しかし、それでも諦めずに進み続けられたのは、彼女を支えたクラスメイトと兄弟への想い、そして、モモカの存在でしょう。
末っ子の朝陽にとっても、モモカの存在は大きく、大きすぎた結果、0~1日目で判明する結果に繋がったのでしょう。
この物語は、不安の淵を歩くようなホラーであると同時に、家族の物語でもあります。
『オガミ様』の真相が判明し、兄弟の関係もぎこちなくなり、それでも、モモカの存在と共に、家族と『オガミ様』の問題を解決する物語。
『百日詣で』の真の理由と、『オガミ様』の正体、そして三兄弟の家族の思い出を知っていくと、本作が家族の物語だと実感できることでしょう。
怪異譚の中で紡がれる家族ドラマ。
本作を一言で表すと、そうなるでしょうか。
『オガミ様』に100日間参拝すれば、どんな願いも叶うと言い伝えられている長久市こうべ町。町に住む高校生『優日』、妹である中学生『まひる』、末っ子の小学生『朝陽』の三兄弟はペットの犬『モモカ』を連れ、『オガミ様の百日詣で』を欠かさない。だが参拝を繰り返すうちに、兄弟の周囲や町で『異変』が起こり始め――。
『日常に潜むホラー』『町の歴史に関わる伝奇モノ』といった感じで、ジワジワと日常を蝕む不気味さがたまらない、良質な怪異モノ作品でした。幽霊がバーン!と飛び出てきたり、怪物に追いかけ回されたりする内容ではありませんが、シッカリと『怖さ』を感じることができて大満足です。
高校、中学、小学校と三兄弟が過ごすそれぞれの日常や、友人達との関係がほのぼのと綴られ、例えば「ゆらゆらゆら。枯れたひまわりが微かに揺れている。ふたりを見送るように、手を振るように、ゆらゆらゆら。そよ風に揺られていつまでも。」(※作中から引用)といった具合に擬音語や擬態語も多く使用されているため、文章にはどこか童話っぽさもあります。しかしその穏やかな日常の雰囲気がジワジワと『狂気』に浸食されていくために、『落差』が激しくなって怖さも倍増といった具合でした。意図的なのか普段からこういう書き方なのかは分かりませんが、この文体やスタイルを採用したのはお見事で大正解だと思います。
そして読者を怖がらせる『ネタ』も豊富であり、様々なバリエーションの『異変』や『狂気』を見ることができるのも特徴的だと思いました。
しかし単なる不気味なホラー展開の連続で終わらず、シッカリと『家族』を作品テーマや物語の主軸にして、その絆を描いている部分も良かったです。怖い作品を怖く書いたって、『個性』にはなりませんからね。
ただ、ビックリ系だったり読後感の最悪な強烈胸糞ホラーを好む人には、薄味というかインパクトが足りない印象を抱くかもしれません。
それに100日目の最終盤の展開に、ちょっとだけ唐突感があったため、そこが惜しかったです。
約24万文字というボリュームの内容であるならば、10~12万文字の作品を超えるほどの恐怖や感動や爽やかな読後感が欲しかっただけに、尚更そう思ってしまいました。
とはいえ「100日後に何が起きるんだろう、この三兄弟はどうなってしまうのだろうか」というドキドキやハラハラ感は最初から最後まで保たれ、非常に惹き付けられる作品だったのは間違いないです。100日目のオチ自体も、とても綺麗で良い終わり方でした。
夏の終わりにピッタリな良作ホラーだと思います!リアルタイムで最終日を見届けることができて良かったです!
19日目まで読みました!!
物語はオガミ様の祠に100日間お参りを続けると願いが叶うという言い伝えの中で、主人公たち家族三兄弟妹を中心にした100日間を描くというものです。
家族も長男が高校生、妹は中学生、弟は小学生と分かれていて、読んでいるとこれくらいの時期にこういうのあったなぁと思い返される話ばかりです。
日常の温かい人間物語や甘酸っぱい青春の恋模様にさりげないオカルト要素、本格的に怖いものではなく学生時代に流行ったおまじないや都市伝説のようなもの、ちょっと不思議な話などが混ざり込んでくるような塩梅が絶妙ですね。
とてもおすすめの作品です!
十四日目までの感想です。
学校の裏山に百日詣をすると何でも願いを叶えてくれる「オガミ様」という神様がいる。オガミ様の祠にお参りに行く三兄弟。百日後、何を叶えて貰うのか――。
1ページ目のゾクゾク感におっかなびっくりページを進めると、愛らしい家族についての作文。母子家庭だけど幸せそうな家族。末っ子の朝陽が何を『返して』ほしくて祠に行ったのか、相対的に深まる謎。奥深いです。
ノスタルジックな描写が印象的でした。
『煌々と燃える篝火のような色を映した空。一体、何が燃えているのだろう。』
とても綺麗な表現力に脱帽です。
このまま百日目を迎えるまでの仄暗さと散りばめられた謎にドキドキしました。先はまだ長そうですが、百日目を迎えた家族の形が気になります!