やせいの のうりょくしゃに おそわれた!(2)
命を狙われ、俺が普通の人間だったら間違いなく死んでいたであろう鉛弾についカッとなり殴り飛ばしてしまった。
前世の仕事で染み付いていた僕という第一人称が剥がれる程度にはキレていた。
殴り飛ばした事と、自分の身に被害がなかった事もあり、少し落ち着いてきてはいる。
-…さて、こいつが公安組織なのか非合法な組織の人間か聞いてみるとするか-
文字化けの神様からの手紙という名の託宣からは【一般的には能力者は処理されている】と書かれていた。
それならこの僕に襲いかかってきたこの瞬間移動の様な事をしてきた子は、一般的な枠組みから外れた者なのだろう。
先程襲いかかられたのもあって、倒れて気絶してるであろう彼女を無理矢理叩き起こすのも考えたが、こんなくだらない事で暴力を振るいたくない。
-…友達がヤられたとかなら遠慮なくやるんだけどなー…-
自分の事となると、途端にそういう気はなくなるのだから僕は前世、自分で命を断ったのだろうと今になって思う。
タバコでも吸って起きるまで待つかとポケットを漁るが、部屋着にパーカーを着てエナドリだけを持って出てきたのを思い出す。
公園に自販機はあるが、自販機に入れるお金もなく、本当に手持ち無沙汰になってしまっている。
-…適当に座って待ってるか…-
少し離れた場所にあるベンチへと向かい、俺は彼女が起きるまでただボーっと空を眺めることにした。
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-私は…生きてる…?-
潰れた空き缶をさらにクシャクシャにして、それを消え去るような力で投擲できる力の持ち主に殴られ、吹き飛ばされた事までは覚えている。
-に、逃げなきゃ…それに-
たしかに装填していた【対特殊能力者用弾丸】が効かず、こちらへと殴りかかってくるバケモノ。
音を立てないように、静かに-
「お、起きたか。嬢ちゃん」
最悪だ。なぜトドメを刺さなかったのか気にはなるが、持ち前の武器では到底歯が立たないバケモノが声をかけてくる。
「…スースー…私は起きてないですムニャムニャ…」
軽口を叩いてみる。バケモノは深い溜息を吐き、倒れていた私からは離れていたのだろう、足音が近づいてくる。
一歩一歩と砂を噛む音が近づいてくる度に、私の心臓はバクバクとうるさくなっていく。
「…何十分もずっと空見ててよぉ、暇だったんだよ嬢ちゃん。カッとなって殴って悪かったな。銃で撃たれたなんて初めてでさ、でもどこも怪我してないしもう怒ってないぞ」
-…なんだこの男は。こっちは殺す気だったのに-
未だに痛む体をはね起こし、再度銃口を男へと向ける。すかさず引き金を引き-
パン、と乾いた音が辺りに響く。それでも男は何事もなかったかのように突っ立っている。
「…さっきなんたらかんたら弾が効かなかったのにまだ撃つのか。僕はもう嬢ちゃんを攻撃する気はないよ」
服に穴が空いた様子もなく、呆れた顔でこちらを見る男。
「は、ははは…か、確認の為に…って事で…許して……下さい…。」
「…もう1回殴っとくか?ん?」
内蔵が破裂してないのが不思議な程の威力の拳を再度くらいたくなく、私は銃もナイフも遠くに投げ、土下座する。
「許してください!何でもしますから!」
無様な私の姿を見てだろうか、男は再度ため息を吐く。
-…今頭踏み抜かれたらグチャグチャだろうな-
生殺与奪の権利ははあちらにある。心臓だけが激しくドラムを叩いているかのようにドクドクと音を立てている。
「…もう二度と僕に武器を向けるなよ。ちょっとお話しようか嬢ちゃん」
…頭の上から降ってくる言葉が信じられなくて、ガバっと頭をあげる。
「…ほ、本当に…?お話だけならいくらでも!いくらでもしますよー!」
この男が潰した缶を投げた後の呆けた様子から、最近になって【能力】に目覚め、実験していたのだろうと今になって思う。男の能力の実験体にされないのであれば機密であろうと喋る所存だ。
私は命拾いしたと、久しぶりに心から笑顔になった。
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ね、繧ソ繝翫ヨ繧ケ。殺さなかったでしょ?私の見込んだ通りね!
…繝倥せ繝?ぅ繧「、君本当に期待通りに行くと思っているのかい?ハァ…
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