やせいの のうりょくしゃに おそわれた!

 …目の前にいたはずが、気がついたら僕の後ろから殴りかかられた。

 -…クソ!もっと手紙をしっかり読んでおくべきだった!-


 おそらく、【能力】を勝手に使うことは禁じられているのだろう。

 それに前世の人間と同じで黒い髪…ただ違うのは、アルビノによく見られる真紅に染まった瞳。

 日本人なら茶色か黒だろう。


「…お兄さん、異常なまでに硬いね。それが能力?いやでもあの跡をみると…」

 僕の正面に戻ってきた子は、土埃を立てつつ、俺を殴ったというのに悪びれもせずに飄々としている。

 そして、僕がクシャッと潰したエナドリで削った遊具の痕を見ている。


「うーん…能力の予測がつかないなぁ。ま、仕方がないってことで…」


 その子は懐に手を入れ、ナイフを取り出す。薄暗くなってきた公園には既にライトがついており、その光を鋭く反射させている。

「ごめんねー痛くしないからねー。」


 直後、また僕の視界から消える。

 そして脹脛ふくらはぎに走る衝撃。


「嘘!?これでもタングステン鋼くらいならスパっと切れるのに!?」


 後ろから聞こえてくる驚愕の声。


 -…脹脛をそんな鋭いナイフで切ろうとするとか…-


 スッと意識が、攻撃的に傾く。


「おい、嬢ちゃんか坊っちゃんか知らんけどよぉ…」

 まだ手には【硬化】させたままのエナドリ。それをさらに握りつぶし、投擲しやすいようにする。


「人様に刃物を向けちゃいけませんって習わなかったんかボケぇ!」



 野球のピッチャーの様にオーバースローで投げようとした時、体の様々な部位に【硬化】がかかっていくのがわかる。

 骨、筋肉、肉体全てが【硬化】というより【密度】が高まっていっているのだろう


 そしてエナドリだった空き缶はー


 -一条の光ひとすじのひかりと化して、その子がいたであろう場所を駆け抜けていった。-


「「…は?」」


 俺と赤眼の子の声が重なる。エナドリはあまりの速さで投げたからか、投げる前にかけた【硬化】が弱かったのかわからないが、数メートルも進んだ辺りで破壊の痕も残さず消えていた。


「な、何その馬鹿げた力…ん?お兄さん【能力】を使ってるのに…目が茶色い…?」

 -こいつ、一番最初俺の顔覗き込んだ時に気付かなかったのか…?-


「…これは私じゃ手に負えない…あと、フードの私は女の子ですぅー嬢ちゃんですぅー」


「…今それ言う必要あったか?」


 男女平等、目には目を、一応信条でもある。物騒なもので攻撃された今、女の子だからって手加減する気もない。


 -でもなー…まだこの世界の【能力者】の立ち位置がしっかりとわかってないしなぁ…-


 本当に、しっかりと神託とも言えるあの便箋を全部熟読しなかったのが悔やまれる。


 

そして少女は深くため息をつき、再び瞬間移動かなにかで離れると、再度懐に手を入れる。そこから取り出したのは-

 

 そう、拳銃。


「これには【対特殊能力者用弾丸】が込められている。君のな能力でもひとたまりもないんじゃないかな?貴重な眼が赤くない能力者の君だ。できれば殺したくない。一歩でも動くと発砲する」


 彼女は顔こそ笑っているが目に一切の感情が見えず、本当に動くと撃つのがなんとなく伝わってくる。


「…俺は確かに【能力】を持っている。だが殺されるような事はしていないはずだ。」


 -…本当にそんな都合のいい弾があるわけないだろう-

 そう思うが、こんな世界だからこそあるのではないかとも考える俺がいる。


 ジャリっと、砂を噛む音を俺の足が立てた瞬間-


 -パァン!と、乾いた音が公園に響く-




「…ハハッハハハハハ!虚仮威しじゃないか!俺の身体には傷一つないぞクソガキがあああああああああああ!!」


 -なんだ、結局ただの弾だったじゃないか。-

 全力で少女へと駆けるが、少女は呆然としており、先程まで見せた瞬間移動めいた移動もしていない。


「歯ァ食いしばれオラァ!」


 必殺ボディーブロー!と頭の中で思いつつ、彼女の腹を殴りつける。

 さすがに自分に向かって銃を撃ってきたと言っても、人殺しにはまだなりたくない。


 フードつきパーカーの下には防弾チョッキか何かつけていたのだろう、鈍い手応えが返ってくる。


 まるで漫画の1コマのように、くの字になって彼女は吹き飛んでいく。

 そして遊具へとぶつかると、そのまま彼女はくたっと倒れるのであった。


 ******************************


 ねぇ繧ソ繝翫ヨ繧ケ、あなた私があげた能力以外に何も彼にあげてないわよね?

 

 失礼だなぁ繝倥せ繝?ぅ繧「、僕がそんな殊勝な真似すると思ってるのかい?君に手伝わされて送った以外何もしてないよ。…あの投げた空き缶以外はね…アレは危なかったよ。

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