やっぱりナニかが違う

 冷蔵庫からお茶を取り出し、一息つく。

…たしかに、あの混沌とした頭と、四肢から感覚がなくなっていく状況を覚えている。

どういう事かもう一度整理しようと、頭を動かそうとすると-


「幸輝?もう起きてきたの?」


-…あれ?母さんはこの時間いないはず…-


両親は共働き。たまたま両親共におらず、死ぬまで時間がかかるのもあって、時間も考慮して飲んだドンブリが頭に浮かぶ。

そして振り返ると-


そこには、両親の顔をしているががいた。


「…母さん…そんな髪の色、いい年して染めて恥ずかしくないの?」


芝生を、長く伸びた葉を思い浮かべるような鮮やかな緑色。

生まれつき緑色だって言われたって信じるような色。


「幸輝ったら何言ってんのよ。変な夢でもみた?私は生まれつきこうだよ!」


そのまま母と思わしき緑の髪の色をした女性は近づいてきて、僕の背中をバンバンと叩く。



-その原色緑がおかしいっつってんだろーが!-



そして思い出す””という単語。

…まだ一例しか見ていないが、恐らく皆髪の毛がカラフルなのだろう。


「あ、あぁ…ごめん母さん。夢でみた母さん茶色の髪しててさ、夢見て寝ぼけながら降りてきたから…目が醒めたよ」


咄嗟にだした口からでまかせだが、うまく言い訳できたと思う。


「嫌よー私、息子がこんな若いうちから。」


ハハッと笑い合って、俺は飲み物片手に自分の部屋へと戻る。


-…病気持ち?なんかの比喩だろうか。-


パソコンデスクの椅子に座り、綺麗に並べられた便箋を手に取ろうとし-

先に手に持っていた便箋が自己主張を始める。


頭に、私から読め、じゃないと地味に痛い紙で指を切るやつをやるぞと訴えかけてくる。

そんな目に合いたくない俺は素直に最初に手に収まった1枚目を読む。



『やっと読んでくれたね?いやーパワフルでカラフルだっただろう?君のお母さん☆』

一枚目からくしゃっとしそうになったが、破ろうとした時一切歯が立たなかったのを思い返し、続きを読む


『ここは君が居た世界を基準にした世界。特殊能力を得た人間を皆というのさ。』

『君の能力は…待って待ってソちゃん、痛い痛い!ネタバレは厳禁ってことね?』


-…手に持った便箋に現在進行系で書き込まれていることは現実逃避していいんだろうか。-


前と違う文字化けだから、違う人に対して言っているんだろう。それに、俺は既に素手でパソコンのディスプレイに穴を開け、貫通した腕を抜いても一切傷がなかったのだから何かしらの能力を持っているのだろう。


『ぐすん…ソちゃんに怒られちゃったから詳しく書けないけど、試しに君が持ってるカッターか彫刻刀で腕を思いっきり刺してみれくれない?』


-…この文字化けの主、怒られてぐすんって書くってかわいいのでは?-


実際いくつか持ってる、太いカッターをチキチキと刃を出し、腕の太い静脈が通っているところをみる。


-…大丈夫、これで騙されたって結局出血多量で死ぬだけだ。俺は一度自分で自分の人生に幕を下ろしている。-


一呼吸、二呼吸、そして深呼吸。


カッターの刃は折れやすい。短めに出したを勢いをつけて-



腕に達したところで、短めに出したはずのカッターの刃はパキっと小気味いい音をだし、欠けた。




「…は?…え、は?」



本来は柔肉をえぐり、その血管を突き破り、静脈でも噴水になるはずが、ただカッターの刃が欠けただけで終わった。


『それが君の能力【硬化】だよ。身体を硬化する、ただそれだけの力。』


…これは危険では?俺の自殺計画が大いに狂う。-


しかも自分で【硬化】を意識したわけじゃないのに、カッターを身体に立てようとして自動的に硬くなった。


『プークスクス。文章で伝えるしかできないのが残念だよ。君の【硬化】はほぼ自動発動なんだ。自分で発動することもできるけど、基本的には身の危険が迫った時は自動発動だよ。』


-…だからか。俺がモニター殴った時傷がつかなかったのは。-


【硬化】。どこまでその硬化が働くかわからないが、とりあえず腕に傷がつかなかったのだ。自分の身体には作用しているのだろう。

-…しかも自動で。-


あの時俺は一切そういうのに考慮せずに短慮に八つ当たりでディスプレイを殴り抜いたのだ。

それなのに無事ということは、【硬化】は自動的に発動しているのだろう。


「…はぁ、俺ただ死にたかっただけなんだけどなぁ…」


 死んだと思ったら、パラレルワールド。

おかんの髪は茶色から緑色。しかも元から緑色という始末。

さらに【硬化】という能力をもらった。自動発動っぽく、おそらく超高所から飛び降りても俺の身体は【硬化】に救われるだろう。


「…俺をパラレルワールドに引っ張ってきた神様は俺に何をさせたいんだろう…。」


一度寝て、スッキリしてたはずが、情報の詰め合わせで頭はこんがらがっている。

俺は再びベッドへとダイブし、まぶたを閉じるとすぐに意識は落ちていった-



****************************


あの子まだ難しく考えててまた寝たわよ?それでいいの?

いいよ~まだまだ猶予はあるから…ね?

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