アフターサービスサービス
…情報量が多すぎてこんがらがったままの頭で横になって目を閉じていたら、いつの間にか寝ていたようだ。
-…夢…じゃねぇな…-
パソコンデスクの方に目を向けると画面に拳大の穴が空いている。
さらにそこから目を移すと、見慣れた部屋にはなかった黒い板。
-何時間経ったかわからないけど、携帯と同じなら充電も終わってるだろ…
充電ケーブルをスマートフォンと呼ばれる板から抜く。黒い何も映してなかった画面には満タンを示すように乾電池マークの中に緑色がいっぱいになっていた。
-…周りにあるボタンのどれか長押ししたら、電源つくのかな?-
しばしスマートフォンと格闘することに。そしてディスプレイに光が映る。
使っていた携帯電話とは比べ物にならないほど鮮明な画像だ。
-はえー…綺麗に映るなぁ…って-
先程はスルーして、先に気になっていたスマートフォンを手にとってしまったが、もう一つ今は気にしなきゃいけない物がある。
そう、起きてすぐ見た拳大の穴があいたディスプレイだ。
そして再度自分の腕を見る。殴ったのは右腕、しかしそこには綺麗な、傷もなく毛も生えてない腕がある。
-いや、奇跡的に殴った時に傷つかなくても引き抜く時になんかしら刺さるだろ!?-
混乱していたら、ふと視線を感じ、そちらへ振り返ると勉強机の上に置きっぱなしのハートマーク封がされていた封筒が、何枚手紙入ってるんだとばかりに膨らんでいる。
-あれぇ?おかしいなぁ…僕が知ってる封筒は勝手に膨らんだりしないぞー?-
恐る恐る勉強机の方へ体をやり、封筒を手に取る。
…明らかに太い。現ナマ50は入ってるんじゃないか?そう思わせるくらいには封筒はパンパンだった。
「開けるかぁ…」
つい独り言をこぼしてしまう。謎に膨らんだ封筒。何より俺は一度自殺未遂しているのだ。これが爆発物だったとして、怖くはない。
手紙を取り出そうとする。すると封筒からバサバサと全部の紙が出てきて、空中を舞う。
空中に舞う手紙は読むのはこの順番だよ、と言わんばかりに綺麗に僕の机の上に並んだ。
「…はぁ?」
わけがわからないことが起こったが、あの文字化けで名前が読めない人が詰め込んだせいで読めないのをこの手紙が気を配ってくれたのだろう。
-我ながら気が狂ったことを。奇跡も魔法も魔術もあるわけないし…謎の超常現象だ、うん。-
気を取り直して、僕は机の上に並んだ手紙の一枚を手に取った。
『やー、いつも君を見守っている繝倥せ繝?ぅ繧「だよ!昨日はぐっすりだったね?起きてスッキリしただろうし、今日は君にこのパラレルワールドが元の世界とどう違うかの説明をしてあげようじゃないか!』
「この文字化けの人…アフターサービスよすぎない?」
『きっと君はアフターサービスがいい事に勘ぐっていることでしょう…フフフ…私は気に入った存在の為なら粉骨砕身働くのだ!あと、この封筒は捨てないよーに。まぁ捨てても返ってくるけどねー机の上に。』
一際気になる、気に入った存在の為なら、という文章はさておき、どうやら呪いの封筒の様だ…試しにゴミ箱に入れて、トイレへ行く。
戻ってくると、封筒はわかりやすく勉強机に立てかけられていた。ハートで止められていたシールが剥がれ、中から1枚便箋が飛び出ている。
気になったので、先にそちらを読むことにする。
『どうせ一度本当に捨てても戻ってくるか試したでしょ?もー照れやさんなんだからー☆ その封筒は私達逾槭?が君に送る便箋の受け取り口。膨らんじゃったりしても君以外にはただの綺麗なハートシール付きの封筒にしかみえないから安心してねー♪』
…なおさらめんどくさい事態になりかねない。後生大事にハートシールつき封筒なんざ持ってたら詮索されるだろうが…!
起きてトイレ行って現状確認しただけだが、ドッと疲れてきている。
…昨今web小説で流行ってる、異世界転生ならぬパラレルワールド転生ってやつか…
盛大に溜息を吐き、救われたが救われてない自分を恨み、俺はパラレルワールドの説明書?と呼ばれる物に手を伸ばそうと-
したところで、便箋が『違う、私から読め』と言わんばかりに、僕が手に取った便箋の真反対側から飛んできて手に収まった。
-…え、何、こいつら意識あんの?まぁいい、読むか-
俺の部屋は2階にある。便箋を手に持ったまま、飲み物を取りに下へと降りるのであった。
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フフ、ね、予想どおりね?即ゴミ箱行きだったわよ封筒。フフッアハハハハハ!
そんなに笑わなくていいじゃない~…まぁその通りだったんだけどね。
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