なぜ生きている!

 -ふと、明かりが目に入ってくる。-

 僕なんぞが天国なんていけるわけがないのに、一体なぜ目に光が…


 目に入ってくる光に気を取られ、ボーっとしていたが、途中から無くなっていった腕や脚の感覚があるのに気がつく。



「…なぜ。…なんで、なんで生きている!僕は!!!」



 思わず八つ当たりに、音楽を聴いていたパソコンのディスプレイを思いっきり殴ってしまった。

 それだけならいい。プロゲーマー様たちも理不尽なやられ方した時にディスプレイやキーボードを叩いて破壊してしまうといったことを聞いたことがある


 ディスプレイをが異常なのだ。


「…は?」


 プスプス、バチィと、ディスプレイの中の電気部品が、行き場のなくなった電気が立てる音に我に返り、薄型ディスプレイを貫通している腕を引き抜く。

 その際にも…痛みは一切なかった。


 -…一軒家で今誰も居なくて助かった…じゃねぇ!え、僕こんなもん貫通するようなパンチ力してないぞ!?-


 急いでディスプレイの電源を引き抜く。バチバチプスプスと言っていた音は止んだ。

 …だが、ぼくの腕大ほどの大きさに空いた穴は埋まらない。


 ほっと一息ついて、改めて自分の腕を見る。

 -…やっぱり傷ひとつない。-


 そこには本来、引っ張り出した時に液晶のガラスやらが刺さったり引っかき傷があるとこだろうに。

 そう考えるが実際この目で見ても、傷はないのだ。


 -…今更皆にお別れのメールを撤回するのもなぁ…-


 苦笑し、携帯電話を探そうと辺りを見渡し気付く。

 …誰かが踏み入ったか、物でも取ろうとしたのか、部屋にある足跡に。


 そして子供の頃に親が買ってくれた、勉強机にその足跡は続いている。

 ODの後遺症もないようで、パソコンデスクに座っていた椅子から降り、すっかり物置になってしまっている勉強机へと足を運んだ。


 -電池切れになっている携帯の横にある、手のひらよりもう少し大きい黒い板。-

 そして、綺麗に畳まれた状態である手紙と思わしきもの。一丁前にハートのシールで封をされている。


 …足跡も消さずに、この黒い板と手紙を置いて帰ったのか?これ絶対やばいやつだろ…

 昔、靴箱に入っていた手紙を開けようとして、カミソリが出てきてあやうく切りかけたのを思い出す。


 さすがにそれはないだろう、綺麗に真ん中にハートだけで止めれくれているのだ。

 そのハートのシールを剥がし、中に入っている手紙を引き出す。


『パンパカパーン!開けてくれて嬉しいよお~あ、私は?。読めないだろうけど名前くらいは書いとかないとね!』


 …既にまだ一行も読んでいないのに頭が痛くなってくる。特に文字化けしている部分を意識すると余計に頭が痛くなるのだ。


は君たちに不干渉を貫いている。もっとも、科学やらでお父さん達の神秘のベールが剥がされて弱体化してきちゃったってのもあるんだけどねー…ただ、今回は特例中の特例、君を産まれた時から見守っていたの図らいで、君を死んでないパラレルワールドへとご招待しましたーわーパチパチー!』


 ここまで読んで、カッとなって手紙を破り捨てようとしたが異常なまでに手紙は硬く、引き裂こうとしても手紙には折りたたんだ後以外のシワは一切つかない。



 -なんだこの紙は!?薄い強化プラスチックででもできてるのか?-



『あー、今破り捨てようとしたでしょう!?は常に見てるしそういうのわかるんだからね!プンプン!まぁ君の気持ちもわかるし不問としましょう。』


『この世界は、あくまでパラレルワールド!前世で関わってた人間が君と接触してきてもそれは前世で知り合った同じ人間ではない。念頭に入れておくように。』


 いつの間にやら破こうとしていた紙が膨らみ、2枚目3枚目と手の内にある。


 -…パ、パラレルワールドって言われたって…俺は疲れて、ただ死のうとしただけなのに…-


 あの決死に飲んだドンブリ一杯ほどの覚悟を返して欲しい。ただ、今は不思議と死のうとしていた感情は落ち着いている。


『この世界では携帯電話は骨董品で動かないから、代わりにスマートフォンを用意してあげました☆いやー?ちゃんったら献身的だね☆あ、その代わり連絡先はすべて削除させてもらったよ。』


 読んでパッと机の上にある黒い板-スマートフォン-に目を向け、そのまま自分が使っていた携帯電話に目を移す。手に取り、電源ボタンを長押ししたが一行に電源は入らず、黒い画面を映したまま。


 -骨董品…充電器なんかもないわな…-


 コンセントから伸びた線はあるが、おそらく接続部分であろう部分はみたことがない端子だ。


「…あれ、スマートフォン?の充電器なんかねぇ…」


 恐る恐るスマートフォンを触る。そのまま手に取り、どういったボタンがついてるかとかを調べると無事端子を入れるような場所があることを確認。


 勉強机から離れ、ベッド近くにあるコンセントから伸びた充電ケーブルと思わしきものを手に取る。


 スッと、充電部分に差さる。そして黒い画面に表示される充電中ですよーと言わんばかりの、乾電池のマイナスから赤い液の様な物が徐々に溜まっていく表示。


「…あぁ、衝撃的なことがありすぎて…」


 口に出してないとやってらんねーと、自分はこんな独り言言うタイプではなかったはずなのに、そのままベッドへと倒れ込み、意識を手放すのだった。



 *****************************


 ふふふ…みた?あの子私からの手紙最後まで読まずに破こうとしたわよ…フフフ

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