第51話

(諦めてはだめ)




 助けたサナギの声が聞こえた。




 どうすればいいの。




 わからない。




 あたしもわかんないよ!



 

 諦めたら誰も助からない。



 

 あなたに私の力を貸してあげましょう。

 パッと目が覚めた。

 そこは見知らぬ部屋だった。

 石のタイルが木目調になっている壁で、火はついていないが暖炉がある。

 暖炉の対面には巨大な本棚があって、本が敷き詰められていた。

 革張りのソファに寝かされている。

「ここは……」

「やっと目覚めたにゃ」

下に目をやると、あのシャム猫がちょこんと座っていた。

「倒れてたから私のご主人の部屋に運んできたにゃ。あんな所でどうしたんだにゃ」

「急に苦しくなって……それより猫さん……どうしよう」

 萌はこれまでのいきさつを話した。

「んー、まず工藤信也の呪いを解かないと厳しそうだにゃ、それさえできればどうにかなるはずなんだにゃあ」

「どうやって呪いを解くの?」

「わからんにゃ」

「そんなあ……」

萌は眉根をよせる。

 そのとき、上着のポケットが淡く光った。

 何かと思い手を入れて中身をつかみ取り、掴んでいる手からまばゆい光が漏れ出す。

 手を開くとそれは発光したサナギだった。

 光は部屋中を照らし、サナギの背が割れ翅が広がっていく。

 光が落ち着いて、その姿がハッキリとする。

 この世のモノとは思えない幻想的な翅を持っていた。

 そこにいた二人は息をのむ。

「萌、その呪いを解く役目私に任せて下さい」

 蝶の精霊は萌に話しかけてきた。

「解くことができるの?」

「あなたと力を合わせればできるはずです」

「でもあたしじゃ……」

萌は下を向いて言った。

「大丈夫、私とあなたならできます」

「あなたと一緒にいることで私は力を回復させることができました、いやむしろ前よりも強いくらいに。私の呼びかけを聞いてくれたのもあなたでしょ? あなたにはきっと特別な力があるはずなんです。大丈夫、私を信じて」


 信じる心が君の魔法だ。


 おじさんの声が聞こえたような氣がした。

「わかった、やってみる」

顔を上げた萌の瞳には強い光があった。

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