第49話

 すると、周りにあった木が枝をムチのように伸ばし始め、信也の側の木は雪篤をめがけ、雪篤の側の木は信也をめがけ、枝が凄まじい速さで応酬し合う。

「うらあああああああ」

「うおおおおおおおお」

 雪篤が、左手を薙ぐようにすると、雪篤側の木が一氣に燃え上がって信也側の木を燃やし尽くす。 

 まわりは火の草原と化した。

 信也は右手を天に掲げる。

「集まれええええ」

 月が綺麗に見えていた夜空はすぐに暗雲が立ちこめ、ゴロゴロと音が鳴るほどに密集する。

 雪篤「雷か!」

 信也「違う!」

 上空に集まった黒い雲は、全てが一瞬で水と化し地面めがけて降りそそいだ。

 凄まじいまでの水の量が同時に降り、あたりは濁流に呑み込まれた。

 雨が降り続く。

雪篤とシロは宙に浮いている。

 体はずぶ濡れである。

 雪篤が口から水を吐き出す。

「どこにいった?」

 虎の雄叫びが聞こえたかと思った後、シロは落雷に打たれていた。

 あまりに早すぎて雪篤の目には見えなかったが、虎の姿をした稲妻が魔力喰いめがけて突進し、体をズタズタに引き裂き、熱で焼いた。

次が来ると雪篤は思った。

 雪篤は自分に加速の魔法をかける。

 稲妻に対応するためだ。

 暗雲が光り、竜の姿をした電撃がシロに向かって襲いかかる。

シロ!

 落雷が速すぎて雪篤は、魔力喰いの楯になることしかできなかった。

 少年の体は一瞬で上と下が二つに噛みちぎられる。

貫通した竜は地面にぶつかり、爆音と共に土をえぐり飛ばし黒い跡が無残にも広がった。

 ドサリと濡れた地面に上下がぶつかる。

「雪篤!」

信也は雪篤に駆け寄った。

「ごめん、ごめん……ごめん……ごめん、ごめん、ごめん、ごめん、ごめん、ごめん、ごめん、ごめん、ごめん、ごめん、ごめん、ごめん、ごめん、ごめん、ごめん、ごめん、ごめん、ごめん、ごめん、ごめん、ごめん、ごめん、ごめん、ごめん、ごめん、ごめん、ごめん、ごめん、ごめん、ごめん、ごめん、ごめん、ごめん、ごめん、ごめん、ごめん、ごめん、ごめん、ごめん」

「今なおしてやる……なおして……」

信也は癒やしの呪文を唱えるがもう意味をなしていなかった。

「信也……信也は悪くない……わるくないから……」

「けど……僕は、もし、生まれ変わっても、同じ、選択をするはずだよ……後悔なんてこれっぽっちもない」

「あ……、ああ……あ……あ………………」

 信也は力が抜けるのを感じた。

 後ろを見ると魔力喰いの尻尾が自分を噛んでいた。

意識が薄くなり、視界が暗くなる。

 雨粒が肌を叩く感触が最後の記憶だった。

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