第48話

雪篤は、寝そべっているシロの腹に頭をつけて火を眺めている。

(考えなきゃ、生きるために。シロと一緒にいるために考えないと)

 強い風がぶわっと吹き、たき火の炎がなびいて消えそうになる。

空を見上げると、近づいてくるものがいた。

 月の影になっていて、それはだんだんと大きくなる。

「あれは……」




「何しに来たんだ信也」

「お前を止めに来た」

「無理だよ、もう誰も止められないよ、これは僕の進むべき道なんだ」

「馬鹿野郎! まだ間に合うはずだ、お前一人で悩んでたろ。なんで相談してくれなかったんだよ。俺たち兄弟だろ、家族だろう、一人で苦しんでんじゃねえよ! 言ってくれなきゃわかんねえよ、ちゃんと伝えろよ! 一人じゃなく、二人で、母さんも入れたら三人で考えたらもっと違う道があったはずだろ。もっと頼れよ俺を母さんを! じゃないとお前いなくなっちゃうだろ、耐えられねえよ……」

信也は怒鳴り散らす。

 目の血管が赤く浮き出ていた

「それでも、これは僕の生きる道なんだ。誰でもない僕がそう決めたんだ、何を言われても曲げるつもりはないよ」

「このわからず屋があ!」

信也は一瞬で、雪篤の目の前に現れて拳をはなった。

 雪篤は紙一重で避けて、信也の顔面に拳をたたき込んで十メーターほど吹っ飛んで転がった。殴られた箇所を光る手で押さえる。

「やったなこのやろお!」

「おまえからきたんだろう!」

 お互いに右手を伸ばす。

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