第45話

男の目に雪篤が左手を支えに右手を伸ばしている姿が目に入る。

「坊…主…な……んで」

男はなにもできず、シロに魔力を喰い尽くされた。

 雪篤は動かなくなっている男を見ながら立ち尽くす。

 少年の悲痛な叫びは暗い森に溶けていった。




最近、魔力を持っている人が狙われている事件がつづいてて、最初の一人は死んでしまって、後からの被害者は、生きてはいるんだけど魔力がほとんどなくなって意識不明の状態になっているんだって。魔法使いたちの間で噂になっててさ。危ないからあんたら二人は常に一緒に行動するようにしてね。




夕日は一日のほんの数時間、世界をオレンジ色に染め上げている。

学校の帰り道。

 二人はとぼとぼと歩く。

「雪篤、最近顔色良いな。ぼーっとすることないし、あいつどうしたんだよ」

「ん、シロ? あー、良い解決方法見つかってさ、はは」

 雪篤は下を向いて石を蹴った。

 石は水が流れている横溝にポチャンと落ちた。

「そっか、ならいいけど、俺心配してたから良かったよ」

「なあ、信也、もし僕がどこかにいなくなったらどうする?」

「いなくなったらって、そんなことないだろ? 俺たち家族じゃん」

「いや……もしもの話だよ、突然消えたりさ」

「なんだそれ。まあそうだな、探すだろ、当たり前だけど」

「そっか、そうだよね……」

「ん? どうした、やっぱりあいつに餌やってるから疲れてんのか?」

「そうかも、はは、大丈夫」

 雪篤は突然走りだした。

「おい、まてよ!」

 信也は雪篤を追いかける。

 雪篤の目からこぼれていた涙は夕焼け色になっていた。

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